2022.11.24

3種のシューズの特性を持ち合わせたハイエンドモデル、「MERRELL(メレル)」の新作フットウェア「MTL MQM 1TRL」の真価を探る

肉厚なミッドソールによる独特な厚底デザインに、タウンユースでもいかんなく発揮される軽さや防水・透湿性による快適性など、ここ数年でファッションシーンにもすっかり浸透したトレイルランニングシューズ。今ではセレクトショップのフットウェアコーナーで目にする機会も増えたこのカテゴリーに、先日新たなニュースが舞い込んだ。
 
一石を投じたのは、アウトドア向けフットウェアブランドの雄「MERRELL(メレル)」。今回発表された「MTL MQM 1TRL」と呼ばれるこのモデルは、アウトドアシーンのみならずファッションシーンにおいても熱い視線を集めている。

画像: 「MTL MQM 1TRL」は、まるで3つの異なるタイプのシューズを融合したような機能を持ち合わせたマルチマウンテンシューズ。高度なグリップ力と高水準のフィット感による快適性を両立しており、街履きでもその機能をあますことなく発揮する。はじめて製品のサンプルが上がってきたとき、山岳ガイドに見てもらったところ「これは私たちのためのシューズだね」という感想をいただいたのが印象的だったと、田中氏
「MTL MQM 1TRL」は、まるで3つの異なるタイプのシューズを融合したような機能を持ち合わせたマルチマウンテンシューズ。高度なグリップ力と高水準のフィット感による快適性を両立しており、街履きでもその機能をあますことなく発揮する。はじめて製品のサンプルが上がってきたとき、山岳ガイドに見てもらったところ「これは私たちのためのシューズだね」という感想をいただいたのが印象的だったと、田中氏

この製品にはどのようなテクノロジーが採用され、私たちの足元にどのようなメリットをもたらすのか。そして、市場にはすでに多くのトレイルランニングシューズが展開されるなか、なぜこの「MTL MQM 1TRL」は多くの視線を集めることになったのか。国内で「メレル」を展開する丸紅フットウェアのマーケティング部・田中祐介さんに話を聞いた。

メレルの核となる組織「MTL」が、トレイルランニングに焦点を当てる理由

 「ご存知の通り、約3年に及ぶコロナ禍を経て、アウトドアアクティビティやハイキングの人口が世界的に増加しました。なかでも著しいのが、トレイルランニングのランナー人口の増加です。特にヨーロッパでのトレイルランニング関連製品の売り上げは目を見張るものがあり、毎年2ケタ成長で伸びているカテゴリーです。

そうしたことから、トレイルランニングはメレルにとって重要なファクターであると判断し、現在はこの競技を基軸にパフォーマンスのための技術開発を行いながら、そこから生まれるテクノロジーをハイキングやライフスタイルの快適性のためにも応用するといった製品開発を行なっています。その核となるのが、2019年に組織された『MTL/Merrell Test Lab』です」
 
「MTL」は製品開発の核となる組織であり、全世界160カ国以上で展開するメレルブランドのクオリティコントロールも担う重要なセクション。メレルは北米・南米においてはコアなアウトドアブランドとして成立する一方、これまでアジア圏ではライフスタイル寄りのイメージを強く持たれていたため、そのブランドイメージや“ありかた”を再構築するための組織でもあると田中氏は話す。

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「米国本社としては、メレルはあくまでアウトドアパフォーマンスシューズがベースに成り立っているブランドであるという考えがあります。ファッションのトレンドにのっとることも重要ですが、いちばん重視すべきは“本物のアウトドアパフォーマンスシューズブランドとしての革新性をどこで発信していくか、どのジャンルのアクティビティを通じて魅せていくのかということです。そうした戦略においても、『MTL』が大きく関わっています」
 
そうした事情から「MTL」は、発足後すぐにトレイルランニングの各シーンで活躍するチャンピオン勢をアンバサダーに迎え、製品開発へと着手。現在はスカイランニング(急峻な山岳などを駆け上がる、または駆け下る速度を競う競技)と呼ばれるカテゴリーを強化するなど、日本国内でもその名を徐々に浸透させつつある。

「MTL」の名を冠した新作シューズに添えられた「MQM」「1TRL」の意味

「MTL」の名を冠した製品については前身のモデルが2019年にリリースされているものの、ブランドとしての本格的な展開は2021年の春夏から。日本国内で本格始動はこの2022年秋冬からという、まさに新進気鋭のラインだ。既にテクニカルトレイルを得意とするトレイルランニングシューズ「MTL LONG SKY2」が話題となり、2023年の春夏には驚くべき軽量感と堅牢性を兼ね備えた「MTL SKY FIRE」のリリースも予定されるなど、ランナーたちから多くの熱い視線を集めている。

画像: 「MTL LONG SKY」(左)と「MTL SKY FIRE」(右)
「MTL LONG SKY」(左)と「MTL SKY FIRE」(右)

メレルの先進のスポーツギアとして支持される「MTL」シリーズだが、2022年9月にリリースされた「MTL MQM 1TRL」は、単なるトレイルランニングギアとは異なる観点で作られたモデル。そのことを象徴するのが、モデル名に記された「MQM」の表記だ。『Move Quickly in the Mountain』の略で、トレイルランニングシューズ、クライミングシューズ、ハイキングシューズと、異なる3つのタイプのシューズが持つ機能性をひとつに融合した“山のオールラウンダーシューズ”であることを示していると田中氏は言う。
 
「『MQM』の原点は2016〜2017年頃に展開していたモデルで、元はファストハイク(スピードハイク)に適したシューズとして開発されました。この時代は『MOAB/モアブ』という本格的なトレッキングブーツを通じて長年培ってきた機能と快適性を、トレイルランニングシューズに融合したようなハイキングシューズを多数展開していた時期。本作は、その『MQM』をもとに現代の技術をもって再構築したモデルです。

日本国内にファストハイクという文化がそもそも浸透していないなか、ここ数年でファッションシーンを中心にトレイルランニングシューズが注目を集め、また、国内のアウトドアシーンの盛り上がりに伴いライトなトレッキングの機会も増え、ハイカットのハイキングシューズでなくても山を楽しめるという一般認知も浸透してきました。そうしたなか、メレルとしてあらためて『MQM』の存在感を見直したわけです。いわば時代にマッチしたんですね」

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フォルムやミッドソールにおいてはトレイルランニングシューズを基軸に設計されたという「MQM」だが、最大の特徴はクライミングシューズを彷彿とさせるソールの形状。「クライミングゾーン」と呼ばれる前足部の構造と適度な硬さが、岩をしっかりと捕捉。

また、その形状から「シェブロンラグ」とも呼ばれるアウトソールのラグパターンは、トレイルランニングシューズ由来の構造を採用。矢印状のブロックが特徴で、前足部は前に向かった矢印、カカト側は後ろに向かった矢印状にレイアウトされており、特に下りの際に足元が楽になるようサポートしてくれるという。
 
「パフォーマンスにおいて機能するのはトレイルランニングシューズとクライミングシューズの特性ですが、安定性と履き心地の要となるのはハイキングシューズの構造。『MQM』の安定性の裏側にはトレイルランニングシューズの機構だけでは実現できない、メレルならではの工夫が込められています。

手前味噌ではありますが、長時間履いていてとにかくラク。これはクッション性だけでは実現し得ないことで、足への負荷や筋肉の疲労・締め付けなど、生体力学の知見を積み上げてきたメレルだからできるポイントです」
 
そして、もうひとつのキーワードが「1TRL」。ファッション好きの方には知られた名だが、これはメレルUKが主体となって発信するファッションマインドを主軸としたプレミアムコレクションの名称。2020年頃にローンチされたプロジェクトで、日本国内でもまだ販売をはじめたばかり。グローバルで100アカウントしか販売することができない、特別なコレクションだ。

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「『1TRL』は販売数を念頭に作られたラインではなく、従来のメレルとは異なるファッションというアプローチでタッチポイントを増やし、新たにメレルのファンになっていただくための特別なコレクションです。日本国内の販路も自社のEC・直営店を含めて10弱。『MTL MQM 1TRL』をあえて『1TRL』のラインで展開したのも、アウトドアシューズを知っている、知らないに限らず「自分に対して質を求める方」に対して積極的な提案をしていきたいという考えからです。

製品に搭載されたゴアテックステクノロジーやビブラムソールが、アウトドアフィールドのみならず、普段使いでも足元を快適に支えるというメレル製品の魅力・安心感をより多くの方にご体感頂きたいという考えから『MTL MQM 1TRL』を世に送り出しました」

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変わらない高度な製品クオリティー。その魅力を次世代へと繋ぐために

これまでにも名作と称される製品を世に送り出してきた「メレル」。なかでも「ジャングルモック」や「モアブ」は、アウトドアはもとよりファッションシーンにおいても定番モデルとして名を広め、幾度となくリバイバルを繰り返してきた。その秘訣は、先進のスポーツテクノロジーをもってアップデートされ続ける高水準の製品クオリティーと、独自の足入れ感にあると田中氏は言う。
 
「歴代の『ジャングルモック』や『モアブ』を手掛けてきた頃から心がけてきたことではありますが、メレルは“1に快適性、2に追従性(フィット感)”を追求してきました。プロユースのスポーツギアとして他社製品と張り合っていくのに、メレルは足を入れたときの満足感を重視してきたわけですね。商品開発における基本的な部分は変わっていないものの、トレイルランニングシューズを通じて得た知見や技術などを取り入れながら、快適性を現代化しつつ今も進化しています。

また、メレルは万人の足にフィットするといわれるラスト(木型)そのものが世界的にも評価の高いブランドです。私自身、靴業界に20年以上身を置いていますが、履いた瞬間から包まれるような足入れ感のあるメレルのアウトドアシューズは非常に稀有に感じられるほどです」

画像: ブランドを代表する2足「ジャングルモック」(左)と「モアブ」(右)。もはや定番と言っても過言ではない名作シューズだが、このところY2Kファッションのトレンドなども手伝い、再び若者たちから支持されているそう
ブランドを代表する2足「ジャングルモック」(左)と「モアブ」(右)。もはや定番と言っても過言ではない名作シューズだが、このところY2Kファッションのトレンドなども手伝い、再び若者たちから支持されているそう

包まれるような足入れ感と快適性。そして、ハイキングシューズと向き合ってきたからこそ実現できる安定感。それこそ、「モアブ」が世界で2,800万人以上に愛されている所以であり、決して他社には真似できない、メレルの特徴なのだろう。

そしてそれは「MTL MQM 1TRL」においても然り。「1TRL」というファッションのチャンネルを通じて展開された「メレル」の“姿勢”は、国内のセレクトショップ各社からも多くの共感が得られていると田中氏。
 
「これまで『メレル』のプロダクトは、日本国内ではFUNアウトドア向けのフットウェアとして見られることも多く、我々のアイデンティティでもあるハイキングカテゴリーのシェアも他社に広がりつつあるのが実情でしたが、『MTL』の本格始動を筆頭に“『メレル』=本格的な競技用シューズ”というイメージを構築するための転換期を迎えたと思っています。

そうした意味でも、2023年は日本の『メレル』にとって大きな勝負の年。受注ベースでビジネスの大幅な成長も実現していますし、これまで個々の商品をベースに発信していた『MTL』や『1TRL』のようなラインも、ブランドを象徴する”コンセプト”として発信していくことになります。今後は皆さんがスポーツショップ以外の場所で『メレル』製品を目にする機会も、徐々に増えてくることでしょう」
 
1981年の創立以来、変わらぬ高度な製品クオリティーでアウトドアシーンを支えてきた「メレル」は、来年新たなフェーズへと突入。アクティビティとライフスタイルの双方において、私たちをワクワクさせるニュースが発信される日は、まさに目の前に迫っている。

PROFILE|プロフィール
田中 祐介(たなか ゆうすけ)
田中 祐介(たなか ゆうすけ)

丸紅フットウェアのマーケティング部・メレル マーケティングマネージャー。約3年間 PR担当として経験を積み、現在はブランドの戦略立案から企画・販促・PRまで、マーケティング全体のコントロールを執り仕切る。
https://merrell.jp/products/mens_mtl-mqm-1trl

Text by Noritatsu Nakazawa(ALTANA inc.)

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