以前取材した帝人フロンティア株式会社の開発した素材「オクタ」からも、同社が有する技術力の高さを窺うことができるだろう。そして今回、同社がまた新たな素材を開発したと耳にした。 リリースを見ると、「ミクセルNP」というポリエステルとナイロンのいいとこ取りをした素材らしい。これまで繊維メーカー各社はポリエステルやナイロンを扱い、さまざまな機能性を持たせるために開発を続けてきたと思われるが、ここに来て第3の勢力となる素材が誕生したのだろうか。
さっそく開発担当の尾形暢亮さんから「ミクセルNP」の開発秘話、そして将来的な展開についてお聞きした。
PROFILE|プロフィール
尾形 暢亮(おがた のぶあき)
技術開発部 衣料テキスタイル・製品開発課 課長
1993年帝人株式会社入社。繊維研究所に配属。その後、帝人加工糸株式会社(現帝人フロンティアニッティング株式会社)や帝人株式会社加工技術部機能衣料開発グループに所属。2014年からは現職である帝人フロンティア株式会社の技術開発部機能テキスタイル開発課(現 技術開発部衣料テキスタイル・製品開発課)課長として、一貫して高機能素材の開発を担当している。
ポリエステルとナイロンのいいとこ取り
「ミクセルNP」の開発背景を教えてください。
一番の理由として、スポーツ市場の拡大が挙げられます。これまでのスポーツ衣料では、化学繊維の生地がたくさん使われてきました。主にポリエステルとナイロンですね。それぞれ特性が異なるので、両者が対立することはありませんでした。ダウンジャケットを例に出すと、ナイロンを使ったものは軽く、耐摩耗性に優れているという特徴があります。それに対して、ポリエステルは多様な糸種を利用して伸縮性を持たせたり、柔らかい風合いの商品に使われたりします。