トップアスリートが薄底で軽量のランニングシューズを履くという常識は5年前に覆され、現在はカーボンプレートを搭載した厚底シューズがエリートランナーに選ばれている。メーカー間の開発競争も激化する中、ミズノが打ち出した新作は“踵がないランニングシューズ”。フォアフット走法にフォーカスしたという大胆かつ斬新なニューモデルはどのようにして誕生したのか。そしてランナーはどんな恩恵が得られるのか。
既存のランニングシューズと全く異なることは一目瞭然。ハイヒールのようなシルエットでありながら、ヒール部分がなく、踵が宙に浮いている。ウエーブデュエルプロは、ランナーでなくとも履いてみたくなる大胆なデザインだ。
「既成概念に縛られることなく、人類をいかに速く走らせるかをテーマにし、ゼロベースでランニングシューズ作りを考え直しました」とミズノで陸上シューズの企画を担当している松木直人さんは言う。
スピードを追求し、フォアフットランニングにフォーカス
人が速く走るために、シューズに求められる機能 とは一体どんなものだろうか。軽量であること、足にフィットすること、大きなエネルギーリターンが得られること。この3つは一般的にランニングシューズに求められるもので、既存のシューズも追求している要素だ。これらに加えてミズノが着目したのがフォアフットランニング。フォアフットランニングとは、前足部から中足部で着地する走法のこと。踵から着地し前足部へと抜けていくヒールストライク走法と比較して、より速く走ることができると言われ、トップランナーの多くはマラソンのような長い距離でもフォアフットランニングで走っている。