2022.08.08

「雲の上の走り」を実現したOn(オン)の特許技術「CloudTec®」の真の実力

渋谷に旗艦店「On Tokyo」をオープンし、ランニングやトレイルランだけでなく、街履きとしても人気が浸透してきたOn(オン)。その人気の秘密は、ブランド独自で開発したクッション性に優れるソール形状「CloudTec®(クラウドテック®)」にあった。特許技術でもある「CloudTec®」の何がスゴいのか、その真の実力に迫るべくOn JapanのPR&Events Leadを担当する前原靖子さんにお話を聞いた。

元プロアスリートたち3人がカタチにした革新的なテクノロジー

後にOnを創業することになるオリヴィエ・ベルンハルドはデュアスロンで3度の世界チャンピオンに輝き、アイアンマンレースでも何度も勝利を収めたプロアスリートだ。怪我がちだった彼が、友人のデヴィット・アレマン、そしてキャスパー・コペッティとともに着地の衝撃を和らげるクッション性を重視するための試行錯誤から生まれたのが、Onのシューズだったという。

画像: 左からキャスパー・コペッティ、オリヴィエ・ベルンハルド、デヴィッド・アレマン。多くのメーカーやビッグブランドも存在するシューズ業界に進出するのは相当な覚悟が必要だ。まさに冷や水を被る覚悟で業界に参加した3人の意思が見え隠れする
左からキャスパー・コペッティ、オリヴィエ・ベルンハルド、デヴィッド・アレマン。多くのメーカーやビッグブランドも存在するシューズ業界に進出するのは相当な覚悟が必要だ。まさに冷や水を被る覚悟で業界に参加した3人の意思が見え隠れする

「Onは2010年に生まれたスポーツブランドとしてはまだ新しいブランドです。最初はランニングシューズを展開したのですが、その最初のランニングシューズにはすでに「CloudTec®」が搭載されていました。創業者のオリヴィエ・ベルンハルドは、慢性的なアキレス腱の痛みを抱えていて、着地の衝撃を和らげるためにいろいろ試したそうです。その中で生まれたのが、ランニングシューズのアウトソールにゴムのホースをシューズ幅に合わせ輪切りに切って、いくつかくっつけたものだったのです」

画像: これが特許技術を取得しているCloudパーツ。このパーツがつぶれることでクッション性を、その戻る反動で反発性を生み出す。「CloudTec®」を担うパーツだ
これが特許技術を取得しているCloudパーツ。このパーツがつぶれることでクッション性を、その戻る反動で反発性を生み出す。「CloudTec®」を担うパーツだ
画像: Cloudパーツを2層にしたことで、クッション性や反発性も2倍に。5kmからマラソンまでのロードランニングに最適な「クラウドストラトス」。¥18,480
Cloudパーツを2層にしたことで、クッション性や反発性も2倍に。5kmからマラソンまでのロードランニングに最適な「クラウドストラトス」。¥18,480

スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の協力を得て、共同開発で生み出されたのがOnのテクノロジーの根幹となる「CloudTec®」というわけだ。
「CloudTec®」とは、Onのシューズのアウトソールに搭載される空洞の形をした筒状のCloudパーツが垂直方向、水平方向に収縮することで柔らかな着地を生み出し、またそれが元に戻る反動で、強い推進力を生み出すテクノロジーのこと。もちろん技術特許も取得している。前原さん曰く、
「OnのシューズにはこのCloudパーツが搭載されることで、運動消費エネルギーを抑え、ランニング効率を引き上げてくれます。実際に履いてみると、そのクッション性はまるで雲の上を歩いているような感覚を味わえるはずです」。

「CloudTec®」とともに重要な「Speedboard®(スピードボード)」

ブランド創業から3年後の2013年には、スイス出身のトライアスリートで、オリンピックチャンピオンのニコラ・スピリグが、Onのシューズを着用し、大会で優秀な成績を収め、そのテクノロジーの高さを証明した。また同年11月にはベルギー出身のアスリート、フレデリック・ヴァン・リルデがアイアンマン世界選手権でOnのCloudracerを着用し、優勝。そこから一気にトライアスリートだけでなく、シューズ業界でも注目を浴びるようになるのだ。

画像: ベルギー出身のフレデリック・ヴァン・リルデがハワイ・コナのアイアンマン世界選手権で新作Cloudracerを着用し、優勝。Onの実力を証明した
ベルギー出身のフレデリック・ヴァン・リルデがハワイ・コナのアイアンマン世界選手権で新作Cloudracerを着用し、優勝。Onの実力を証明した

「『CloudTec®』の凄いところはクッション性と反発力だけではありません。このCloudパーツはどの角度で着地しようが同じようにパーツがつぶれるため、着地の角度によってクッション性や反発性が損なわれることがないのです。だからこそ、オーバープロネーション[1]やアンダープロネーションといった走り方の癖によってOnのシューズを選べなくなる心配がないのです」

前原さんはOnのシューズは常に進化を続けていて、「CloudTec®」だけでなく、ブランド独自のテクノロジーが搭載されていると語る。

画像: 「Speedboard®」は特許技術 「CloudTec® 」のアウトソールと連動して、ランナーが蹴り出す一歩一歩を捉える。着地と同時に「Speedboard®」がたわみ、弓を引く射手のように着地の衝撃を吸収、エネルギーとして溜め込み、推進力として跳ね返していくのだ
「Speedboard®」は特許技術 「CloudTec® 」のアウトソールと連動して、ランナーが蹴り出す一歩一歩を捉える。着地と同時に「Speedboard®」がたわみ、弓を引く射手のように着地の衝撃を吸収、エネルギーとして溜め込み、推進力として跳ね返していくのだ

「『CloudTec®』の機能性の高さが証明されてから、これまでゴムだったCloudパーツの素材がEVAに進化します。そこでより軽量化することに成功しました。例えば、当時の「Cloudsufer(クラウドサーファー)」というシューズが290g、EVAソールで最初に開発した「Cloud(クラウド)」が198gで高いクッション性と軽量性の両立を実現しました。「CloudTec®」と同じように重要なのが、「Speedboard®」の存在です。「Speedboard®」はOnのシューズに搭載される反発力の高いプレートのこと。Onでは2012年に誕生したレース用シューズ「Cloudracer(クラウドレーサー)」からこのプレートを取り入れています。この二つのテクノロジーが、クッション性と驚異的な反発力を生み出し、アスリートの期待に応えるシューズに成長していったのです」

いち早くプレートを搭載したシューズを世に輩出してきたOn。その進化はとどまるところを知らない。

Onが見据える未来へのヴィジョン

Onは元々、ロードレース用のシューズとして生まれたが、スイス生まれということもあり、トレイルランニングやハイキング用のシューズも開発。そして2017年にはブランド独自のフォーム(素材)も開発している。それが「Helion®(ヘリオン®)」だ。

「これまでゴムからEVAに進化を遂げてきましたが、2017年からOnのオリジナルフォームである「Helion®」を開発し、シューズに搭載しています。クッション性や軽量性はもちろん、温度による変化にも強くなりました。気温が高い時には柔らかくなり、気温が低い時には硬くなるというソールでは、ランニングのパフォーマンスに影響します。その気温による変化を最小限におさえてくれるのが「Helion®」なのです」。

画像: ブランド独自のフォーム「Helion®」を搭載した「クラウドスイフト」。シューズに使われるEVAフォームよりも、クッション性や軽量性、耐久性、そして温度変化にも強くなった
ブランド独自のフォーム「Helion®」を搭載した「クラウドスイフト」。シューズに使われるEVAフォームよりも、クッション性や軽量性、耐久性、そして温度変化にも強くなった

最近ではランニングだけでなく、街着でもファッションとして足元にOnのシューズを取り入れる人が増えている。その影響を前原さんはこう語る。

「経営者や投資家にトライアスロンが人気で、快適性も高いので普段の街着としても履かれることが多くなったのも、影響していると思います。あとは『ゼロ・グラビティ』の監督して名を馳せた、メキシコ人撮影監督エマニュエル・チヴォ・ルベツキが、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、『ゼロ・グラビティ』に続いて『レヴェナント 蘇えりし者』で3年連続アカデミー賞撮影賞を受賞し、その受賞を記念した米ヴァラエティ誌の写真撮影で、お気に入りのシューズOnのCloudを着用したという影響も大きいと思います。海外でも普段履きとしてOnのシューズを取り入れる人が増えてきているそうですよ」。

画像: エマニュエル・チヴォ・ルベツキ監督がアメリカのヴァラエティ誌でOnのCloudを履いた表紙。これにより、街着としての着用率も高くなったといえる
エマニュエル・チヴォ・ルベツキ監督がアメリカのヴァラエティ誌でOnのCloudを履いた表紙。これにより、街着としての着用率も高くなったといえる
画像: Onが体現した厚底シューズがこちらの「クラウドモンスター」。史上最大の「CloudTec®」を搭載することで超ド級のクッショニングとエネルギーリターンを実現した。現在、爆発的な人気を誇っている。¥18,480
Onが体現した厚底シューズがこちらの「クラウドモンスター」。史上最大の「CloudTec®」を搭載することで超ド級のクッショニングとエネルギーリターンを実現した。現在、爆発的な人気を誇っている。¥18,480

目覚ましい進化を遂げてきたOn。最後に未来へのヴィジョンをどう描こうとしてるのか前原さんに語ってもらった。

「現在では、テニス界の伝説的プレーヤー、ロジャー・フェデラーがOnに参画し、カジュアルスニーカー「THE ROGER」を生み出すなど、カジュアルシューズの分野でも挑戦を続けています。また、トライアスロンだけでなく、陸上競技の分野に進出し、ケニア代表のヘレン・オリビ選手が、オレゴンで行われた世界陸上でもOnが開発したスパイク(未発売)を履いてメダルを獲得しています。そういった分野にも力を入れていきたいですし、世界的に注目されているサスティナブルな分野にも貢献できればいいと考えています」。

画像: スイス出身のレジェンドテニスプレーヤーであるロジャー・フェデラー。Onに参画したことで、彼の名を冠したコートシューズなどが生まれる可能性も。
スイス出身のレジェンドテニスプレーヤーであるロジャー・フェデラー。Onに参画したことで、彼の名を冠したコートシューズなどが生まれる可能性も。

Onは時代を見据えながら、現状に満足することなく、常に未来を見続けている。今後もその動向に注目していきたい。

[1]オーバープロネーション
着地の際にかかとが大きく内側に倒れ込みすぎている状態。逆にアンダープロネーションは着地の際に、かかとが外側に倒れ込んでいる状態。どちらも着地の衝撃を緩衝する動きが小さいので、ヒザや足首など身体への負担が大きくなる。

PROFILE|プロフィール
前原 靖子(まえはら やすこ)
前原 靖子(まえはら やすこ)

神奈川県横浜市生まれ。On Japan立ち上げメンバーのひとりで、PRやイベントリーダーを担当。ロードランニングが中心だが、現在はウルトラマラソンやトレイルランなどを中心に参戦。

Text by Yasuyuki Ushijima

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