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2023.06.06

素材軸から考える新しいリサイクルのあり方:RePEaT

繊維業界では、「繊維to繊維」リサイクルへの取り組みが注目を集めている。限りある資源を有効活用し、いかに環境汚染を抑えるのかが、課題としてあるからだ。
だが繊維といっても、そこには天然繊維もあれば化学繊維もある。当然着色されており、複数の素材が混ざっていることも多い。リサイクルにおいては、染料も含む異素材を取り除く技術が必要になる。
たとえば、それはポリエステルひとつとっても同じだった。着色されていないポリエステル100%ならばリサイクルすることはできるが、着色されており、複数の素材が混ざっている場合は、熱利用する「サーマルリカバリー」や、別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」といった方法を取るのが一般的だ。
こうした中、廃棄された繊維製品を再び繊維原料へ化学分解することにより、「繊維to繊維」のリサイクルができる「ケミカルリサイクル」という画期的な方法を用いてその問題点を克服すべく、繊維、エンジニア、商社機能のスペシャリストが集結して新たに設立された会社がある。
それが、合弁会社として設立された株式会社RePEaT(リピート)だ。同社は、ポリエステル製品からポリエステルをケミカルリサイクルする独自の技術を有しており、この技術のライセンス提供や、リサイクル原料となる使用済みポリエステル製品回収に関するコンサルティング業務を通じ、いわゆる素材軸でのエコシステムを提案している。
今回、同社代表取締役であり帝人株式会社の宮坂信義さん、日揮ホールディングス株式会社の古川雅敏さん、伊藤忠商事株式会社の林進平さんに、同社設立の背景から循環型社会のあり方を伺った。
PROFILE|プロフィール
宮坂信義
宮坂信義

株式会社RePEaT 代表取締役社長、帝人株式会社。
1995年 帝人株式会社入社、繊維研究所にて新素材の研究・開発に従事。
2006年 経営戦略室。
2012年 ポリエステル繊維の循環型リサイクルシステムの構築を目指し、中国・精工控股集団との合弁で設立した浙江佳人新材料の帝人側代表 副董事長 兼 副社長。
2019年 グローバル戦略管掌補佐
2023年より、株式会社RePEaT代表取締役社長、グローバル管理管掌補佐、環境ソリューション部門を兼務。

PROFILE|プロフィール
古川雅敏
古川雅敏

株式会社RePEaT 技術統括CTO、日揮ホールディングス株式会社。
2010年 日揮株式会社入社。プロセスエンジニアとして海外のガス処理・LNGプラント等の設計に従事。
2016年 同テクニカルHSE部。プラントの高度安全設計に携わる。
2020年 日揮ホールディングス サステナビリティ協創部にて、繊維/ポリエステルの資源循環・事業化に従事。
2023年 プログラムマネージャーとして引き続き資源循環技術の事業化に従事すると同時に、株式会社RePEaT 技術統括CTOを兼務。

PROFILE|プロフィール
林進平

株式会社RePEaT 副社長兼営業統括(COO)、伊藤忠商事株式会社。
2005年 伊藤忠商事株式会社入社 繊維原料課に配属
2007年 香港・ITOCHU Textile Prominent (Asia) Ltd、
2012年 上海・伊藤忠繊維貿易(中国)有限公司にて、中国、アジアにおける繊維原料のトレードに従事。
2017年 ミラノ・ITOCHU Italiana SpAにて、General Managerとして欧州地域の繊維ビジネスを経験。
2020年 国内事業会社
2023年 ファッションアパレル第三部 繊維原料課 課長代行として引き続き繊維原料トレードビジネスに従事すると同時に、株式会社RePEaTの副社長兼営業統括(COO)を兼務。

ケミカルリサイクルの魅力を発信する

今回、帝人株式会社、日揮ホールディングス株式会社、伊藤忠商事株式会社、の3社で合弁会社RePEaTを立ち上げられました。この経緯を教えてください。
宮坂この背景には、これまでの帝人の活動が密接に関わっていますので、まずはそこからご説明します。
帝人は、1958年からポリエステル繊維の製造と販売を開始しました。当時は、工場で発生した糸くずやB品などをケミカルリサイクルによって再利用していました。
1995年に「容器包装リサイクル法」が制定され、当社はペットボトルから繊維を製造するマテリアルリサイクルに取り組みました。2000年には廃棄されたペットボトルからペットボトルを製造するケミカルリサイクルにも取り組み、キャップやラベルなどポリエステル以外の異素材を取り除く技術を開発しました。
一方、この技術は着色されており、複数の素材が混ざっている繊維製品を再び繊維原料に戻すことができること、また「容器包装リサイクル法」のような個別リサイクル法として、「繊維リサイクル法」の制定が準備されていたことから、「繊維to繊維」の実現に向けて本格的に事業を始めました。
しかし、結果的にこの「繊維リサイクル法」は制定されることはなく、「繊維to繊維」の国内事業は回収原料の枯渇が問題となっていました。そこで、2012年に中国国内の縫製工場から排出されるカットスクラップ(廃棄繊維)と、国内で回収した廃棄衣料をハイブリットした、国をまたいだリサイクル事業を展開するべく、中国の紹興市に現地企業との合弁会社である浙江佳人新材料(以下、佳人)を設立しました。
私は佳人の立ち上げメンバーで、初代の日本側の代表(佳人では副董事長兼副総経理)でした。
ところが、工場設立直後に中国は回収原料となる廃棄衣料の輸入を禁止してしまいました。そのため、日本で集めた廃棄衣料を中国に送ることができなくなり、2019年に当社はこの合弁から撤退しました。
しかし、ここ数年で世界的にも循環型経済を目指す動きが再燃してきたこともあり、私たちが持つケミカルリサイクル技術にあらためて注目が集まってきました。
これに応えるべく、私たちは、ケミカルリサイクルの技術をライセンス化しようと考えました。そこで石油化学プラントのエンジニアリングノウハウを持つ日揮さんと、世界中にコネクションを持つ伊藤忠さんにお声がけして、この技術をもう一度復活させようと、合同で会社を設立したのです。
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#Sustainability
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