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2024.04.02

テクノロジーを使って日本文化を表現 最先端アート「Sound of Ikebana」のメカニズムに迫る

昨年9月に行われたニューヨーク・ファッション・ウィーク(以下、NYFW)でコレクションデビューをしたブランドがある。「Sound of Ikebana(サウンドオブいけばな)」は京都大学教授/アーティストの土佐尚子氏が手がけるブランドだ。最先端のテクノロジーと日本文化を融合させ、エプソンの高度なプリント技術によってデザインを洋服に落とし込んでいる。
生花や能、歌舞伎など、日本文化を題材にテクノロジーを掛け合わせることによってアートとして日本の伝統芸能が進化を遂げるという面白い試みだ。今年2月に行われたNYFWでも2シーズン目となるコレクションを発表した同氏に「Sound of Ikebana」の成り立ちやメカニズム、テクノロジーと日本文化の融合によって生まれるアートについて話を伺った。
世阿弥に�よる能プロジェクションマッピング
世阿弥による能プロジェクションマッピング
PROFILE|プロフィール
土佐 尚子(とさ なおこ)

京都大学教授/アーティスト
1961年生まれ、福岡県出身。1985年に発表したビデオアート作品がMOMAにコレクションされる。その後、最新テクノロジーとアート、日本文化を融合させた作品を次々と発表していく。2013年に「Sound of Ikebana」を発表。2023年9月にニューヨーク・ファッション・ウィークにて「Sound of Ikebana」のコレクションを披露。

振動は生命の鼓動、サイエンスの力でいけばなをアートに昇華

「Sound of Ikebana」と名付けられたプロジェクトを引っ提げ、NYFWでのデビューとなったファッションショーでは24ルックの発表を行った。色鮮やかな塗料がさまざまな形に変化していく様子はまさにアートだ。
「Sound of Ikebana」とは、絵の具などの塗料に、赤ちゃんの産声など音の振動を与えることによって、塗料が飛び散る様子をハイスピードカメラで1秒間に2,000コマ撮影したもの。スローモーションで変化する液体の様子がまるでいけばなのように見えることから「Sound of Ikebana」と命名された。
音の振動や塗料の色合い、粘性によって出来上がる形は毎回違い、一期一会の世界だ。
「日本文化には“型”というものがあるということを発見して、この型をデジタルを使って表現できると思ったんです。いけばなの型とはアシンメトリーな三角のようなもので、人・天・地の考えが息づいています。
赤ちゃんの産声など音による振動を与えられた絵具の造形が、人・天・地と同じ形状のものを表現することができました。
振動は生命の鼓動、生き物の根源的なものです。音から生まれたいけばななので“Sound of Ikebana”と名付け、文化の型をデジタル表現を通して新しい創造物ができるということを提唱しました」
京都在住の土佐氏は日頃から日本の伝統文化に触れる機会も多い。「京都に住んでいると自然を摘み取ってアートにするものが結構あるんです。『Sound of Ikebana』も同様で、四季があります」。ハイスピードカメラによって一期一会の音によるいけばなをアートとして切り取っていく。
「私がMIT(マサチューセッツ工科大学)で学んでいたときの恩師がハロルド・エジャートンというハイスピードカメラの生みの親の教え子の先生だったのです。
毎秒2,000コマで撮影する被写体の一瞬一瞬の姿は私たちの肉眼では見ることができないけれど、現実の世界。私たちが見えないものはたくさんあって、最先端の技術から美を見つける。これがとても面白いんです!」

デジタル捺染技術を用いてアートとファッションが融合

NYFWで発表されたコレクションはほとんどのルックにエプソンのデジタル捺染機(SureColor F6350とZEUS)を使用し、「Sound of Ikebana」を土佐氏がデザインした服にプリントしている。
2月にNYFWにて発表された「Sound of Ikebana」のコレクション
2月にNYFWにて発表された「Sound of Ikebana」のコレクション
2月にNYFWにて発表された「Sound of Ikebana」のコレクション
2月にNYFWにて発表された「Sound of Ikebana」のコレクション
その技術は高度で、生地の上に非常に鮮明にプリントされている。「最初は圧着時間や洋服に映える絵柄が分からず苦労しましたが、最近では3次元ファッションシミュレーターのソフトを使って経験値が増え、これらの問題は解消されてきました」
今後は「Sound of Ikebana」のコレクションをアートとしても販売していきたいという。「アートとファッションを繋げて、もっと近しいものにしていくことに貢献できたらと思っています」
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