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2024.04.16

パリオリンピックイヤーを飾る「speedo(スピード)」の最新スイムウェアとは?

1928年にオーストラリアで誕生し、その名を世界に轟かす水着メーカー「speedo(スピード)」。とくに競泳用水着が有名で、世界の多くのトップスイマーが着用している。そんな同ブランドがパリオリンピックイヤーの今年、新たな競泳水着を発表した。その全貌をゴールドウインのスピード事業部部長の西川英志さんに伺った。

オーストラリア生まれの最古の水着ブランド

現在、イギリスに本拠地を置く国際的水着メーカーの「スピード」。1928年に創業者のアレクサンダー・マックレイが、身体にぴったりしたクラシックタイプのスイムスーツ「レーサーバック」を発表したことで、ブランドがスタートした。ブランドの歴史について西川さんはこう語る。
「『スピード』は競泳水着メーカーの中でも最古の歴史を誇り、次のオリンピックイヤーである2028年には創業から100周年を迎えます。ブランドの根幹には“もっとも速く泳ぐことができる水着を創り出す”という信念があり、記憶に新しいのは80周年を見据えて2007年に登場した『LZR Racer®(レーザーレーサー®)』でしょう」
「レーザーレーサー®」以前に発売された「FASTSKIN®(ファストスキン®)」の当時の資料。サメ肌にちなんで、サメのイメージが採用された。当時はウエットスーツのように手や足を覆うことで、水の抵抗をできるだけ少なくし、水中姿勢を真っ直ぐに保つようにしたところが画期的だった
「レーザーレーサー®」以前に発売された「FASTSKIN®(ファストスキン®)」の当時の資料。サメ肌にちなんで、サメのイメージが採用された。当時はウエットスーツのように手や足を覆うことで、水の抵抗をできるだけ少なくし、水中姿勢を真っ直ぐに保つようにしたところが画期的だった
2008年の北京オリンピックシーズンに向けて投入された新水着「レーザーレーサー®」を着用した選手が次々と世界記録を更新し、世間の注目を浴びたのだ。
「スポーツの歴史上、選手が着用するウェアがこれほど記録に大きく影響したことはなかったと思います。『レーザーレーサー®』があまりにも記録に影響するということから、身体を覆う面積や水着の厚みなどのルールが規定に入るなど、なるべくギアでタイムに差が出ないようなルール改正が行われたほどです」
実際に「レーザーレーサー®」の何がすごかったのだろうか。西川さんはこう続ける。
「個人的な意見ですが、ひとつは流水抵抗を抑えるために水の中での体積を減らすのが一番大きかったと思います。体積を減らすために、必要な筋肉の動きへの影響を最小限に抑えつつ水着の中に身体を押し込むことで、水の抵抗を低減することに成功したと考えています。だからこそ着用するのに男子選手でも30分、女子選手では1時間もかかるなど着用の大変さも話題となりました。
流水抵抗を少なくする表面の素材が、サメ肌のようになっていることから、他のメーカーもこれに追従した
流水抵抗を少なくする表面の素材が、サメ肌のようになっていることから、他のメーカーもこれに追従した
また当時では水着にウエットスーツのような浮く素材を使ってもOKだったので、水中での姿勢が水面と平行に保てるのです。レースの後半には下肢(下半身)が沈んでくるので、水の抵抗が大きくなります。それを防ぐために浮く素材を使って、水中の姿勢を真っ直ぐ維持できるようになったことが、速く泳げる結果につながったと思います。
もちろん、流水抵抗の少ないサメ肌の素材や生地のつなぎ目をレーザーで圧着して、縫い目の凹凸を極限まで少なくしたことも技術的にはありますが、前述した身体の体積を少なくする、水中での姿勢を整えることが、大事だったと考えています」
世界の頂点に昇りつめた実力から「水の怪物」の異名を持つマイケル・フェルプス。オリンピック金メダルを23個獲得したフェルプスを採用した「レーザーレーサー®」の当時の広告
世界の頂点に昇りつめた実力から「水の怪物」の異名を持つマイケル・フェルプス。オリンピック金メダルを23個獲得したフェルプスを採用した「レーザーレーサー®」の当時の広告
紆余曲折あり、2010年には「レーザーレーサー®」は着用禁止となる。高速水着時代に培ったノウハウをリセットするのにも近いルール変更により、そこからの水着開発は選手に寄り添いながらの道を求めていくことになった。
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