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【リレーコラム】バレエにおける身体と装い――J.ノイマイヤーの作品世界を中心に(源川まり子)

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PROFILE|プロフィール
源川まり子
源川まり子

1999年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程2年。専門は西洋政治思想史とフェミニズム・ジェンダー論。現在は18世紀の思想家・J.J.ルソーの著作を中心に、フェミニズムの観点から行う正典再読の展開可能性について研究を進めている。他の関心分野としては、バレエを中心とする舞踊、現代詩など。

舞台の端に据えられた的に向かって、身体にぴたりと沿った革のジレに身を包んだ女性ダンサーが弓を射る。その中心に矢が刺さった瞬間、オーケストラは最初の一音を奏ではじめる——。
この動的かつ厳かな場面は、バレエ『シルヴィア』(ジョン・ノイマイヤー振付)のオープニングシーンである。今回はこの場をお借りして、バレエをテーマとした簡単な論考(というよりもエッセイ)をしたためてみたい。とはいえ、西洋政治思想史とフェミニズム/ジェンダー論を専門とする筆者にとって、バレエに関する体系的な研究に触れる機会は多くない。長らく趣味の範囲でバレエを続けていた身だが、バレエにまつわる事柄を言葉にしようと意識しはじめたのは最近のことである。そもそもダンサーは自らの身体を通じて言葉を用いる以上に多くのことを語り得るわけで、それを言葉で描写するには限界がある。しかし、どうしても言葉にして残しておかなければならない、と思わせられる舞台に出会ってしまうことがあるのも事実であり、この機会に不十分ではあるが書き綴っておきたい。冒頭に記したノイマイヤーの作品における女性像と身体、そして作品中で描かれる愛の形態が主題である。
2023年3月に行われたハンブルク・バレエ団の来日公演において上演されたのは、『ジョン・ノイマイヤーの世界』と題されたガラ形式の作品抜粋と、神話をモチーフに現代的な再解釈を加えた作品『シルヴィア』であった。ドイツ・ハンブルク州立歌劇場に拠点を置くハンブルク・バレエ団は、そのレパートリーにクラシックバレエの作品だけでなくコンテンポラリー(現代舞踊)を多く有することが特徴のカンパニーである。1973年の創立以来、芸術監督と首席振付家を兼任するジョン・ノイマイヤー(John・Neumeier, 1939-)は20世紀後半を代表する振付家である。現在も旺盛な創作活動を続けており、コンテンポラリー作品や古典作品の改訂はもちろん、シェイクスピアの喜劇をもとにした作品、あるいは『椿姫』(1978)、『ヴェニスに死す』(2003)、『人魚姫』(2005)、『アンナ・カレーニナ』(2017)など文学作品のバレエ化も多く手掛け、絶大な評価と人気を獲得している。今回の来日公演は、2023/24シーズンを最後に退任することが決定しているノイマイヤーを記念し、バレエ団の創立50周年を祝うものであった[1]
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