PROFILE|プロフィール
中植 渚(なかうえ なぎさ)
1996年埼玉県生まれ。獨協大学外国語学部交流文化学科卒業。現在、立教大学大学院観光学研究科博士後期課程に所属する。専門は観光社会学。観光、移住、教育によるまちづくりについて研究している。
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脱ぐための旅
大学院生の私は今、高校の観光教育を研究している。先日5日間、島根県の津和野町にいた。しまね留学という国内留学制度を通して、他の地域に移住し高校生活を経験する人たちと、高校生たちをかこむ地域の大人によるまちづくりの研究のためだった。この国内留学制度は島根県海士町からはじまったが、現在ではしまね留学、地域みらい留学と全国に広がっている(地域・教育魅力化プラットフォーム編 2019)。たまたま知り合った島根県立和野高校のしまね留学卒業生の優しさに甘えて、津和野町で行われる5日間のツアーー・プログラムに参加させてもらったのだった。旅行に行くときいつもそうしているように、リュックのなかに洗濯しやすい必要最低限の服と、化粧品、パソコン、カメラを詰め込む。新幹線に乗って過ぎていく景色をみていると、私は普段の自分を脱いでいくような感覚をおぼえる。今の悩みや不安も全部家のなかに置いてきて、ここからはとりあえず別の場所で別の時間を過ごすことに集中する。寝る場所も食べるものも、全部自分以外の人がコーディネートしてくれる生活に身を任せる。その楽さに集中するためにも、装いはTシャツと短パンだけでいい。家をでてから7時間半、ようやく旅行先に到着したとき、重たいリュックを背負った私は一番身軽なわたしになった。