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【リレーコラム】セクシーな自己啓発──男性はいかにして身体に出会うのか? 投影手段としての美少女について(難波優輝)

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PROFILE|プロフィール
難波優輝(なんばゆうき)
難波優輝(なんばゆうき)

1994年生まれ。美学者、SF研究者、会社員。修士(文学、神戸大学)専門は、分析美学とポピュラーカルチャーの哲学(バーチャルYouTuberとSF/ファンタジー)。最近の著作に『SFプロトタイピング』(共編著、早川書房、2021年)、『ポルノグラフィの何がわるいのか』(修士論文)、「メタバースは「いき」か?」(『現代思想』)など。短編に『異常論文』収録「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延」(早川書房)。『ユリイカ』『フィルカル』などに寄稿。

人に勧められてネイルを始めたことがある。自分の爪に、冷ややかなベースコートが塗られ、奇妙に温度が奪われ、爪が息苦しいような感覚になる。光を反射させる。てらっと光る爪を見ていると、胸の高鳴りを感じる。ラメ入りのネイルラッカーが重ねられ、少し待ってトップコートが爪に載る。乾いてから、爪を眺める。「爪があったんだ」と初めて気づく。自分には爪があったこと、こんなかたちをしていること、こんな大きさであることを初めて知る。いままで、自分が自分の爪を知らなかったことを知る。人工物を塗り重ねられた爪は、自分の身体の一部のようには思えなかった。それはよそよそしく、どこかエロティックだった。
髪にメッシュを入れたいと思っていた。予約して、ゴールドアッシュに一部を染めた。嬉しくて初めて自撮りをする。とても可愛く色が入っていた。その日から、アイロンを使って、艶を出していく習慣ができた。オイルを塗って鏡の前で髪をなでていると、とても気持ちがいい。リップも新しく色つきのものに変えて、血色のよくなった自分の唇を眺める。指輪をいくつか買って嵌めてみる。好きな香水に出会う。風呂上がりに、青臭さを感じる植物の香りを2プッシュする。自分の周りに、生気を帯びて熱帯めいた雰囲気が広がって、追随して香る。自分という存在がセクシーだと感じる。
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