PROFILE|プロフィール
梅本 佑利(うめもと ゆうり)
作曲家。2002年東京生まれ。伝統的な楽譜と現代のデジタル表現の間で、日本のアニメにおける音声表現、インターネット文化におけるMAD的なサンプリング技法を吸収したマキシマリスティックな音楽性を探求している。作品は、国内外の演奏家、アンサンブル、オーケストラによって演奏され、欧州の音楽祭などで紹介されている。ファッションショーやテレビ番組などへの楽曲提供、ヴィジュアル・アーティストとのコラボレーションも行う。
私は良いものをみると、それを自分の中に取り込み、自分自身にしたいという強い支配の願望に駆られる。香るものは体内に吸い込まれる。響きには耳が傾けられ、美しいものは側に置かれる。ある人々にとって、愛は身体との一体化で区切りを迎える。私にとってファッションは、そんな一体化の欲望を可能にする手段として、あまりに強引で魅力的だ。一体化には力が要る。それはときに愛にも暴力にもなり得る。
芸術家がなにかに出会い、それを自分のものとして扱ったとき、そこにはどのような力が働いているだろう。他者や異文化の意匠を装うこと、人やいきもの、モノを支配するということ。ゆらゆらと掴みどころのない善悪の中、自問自答はおわらない。
私は作曲家として、音楽や芸術作品を制作するにあたって、常にその問題に頭を悩ませている。創作において、なにかが「素材」として「取り込まれる」。ヨーロッパの伝統的な芸術の文脈で活動する私は、ときに非ヨーロッパの者として、なにかを外部の世界から持ち込み得る。ある国の、ある文化の、あるコミュニティの表象を、自分たちの芸術に取り込むとき── 声はつまみとられ、なぞられ、異なる世界に持ち込まれる。声はサンプリングされ、楽譜として記され、ある特定の世界のために奏でられる。