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これまでの機能性繊維とは違う、空気層に注目した「AIR✕AIR(エアバイエア)」の価値とは?

2025.09.22
株式会社MIRAISOZAIが開発した新素材「AIR✕AIR(エアバイエア)」。これまでの機能性繊維とは違い、「空気」に注目するという新しいアプローチによって誕生したものだ。実は、この「AIR✕AIR」は、高機能素材「SHELTECH®」と同じ開発者によって生み出されている。
前職で「SHELTECH®」を開発された同社代表の松井善孝さんに、「AIR✕AIR」の特許申請中の技術と、この素材のもたらす繊維業界の未来について語っていただいた。

PROFILE

松井 善孝(まつい よしたか)

1997〜2010年:名古屋の旭屋で製品部として商品開発、素材開発のイロハを学ぶ。

2010〜2022年:入社当時は縫製工場であった皿海衣料にて製品の縫製と素材調達の流れを学びながら、他社と差別化できる生地開発を推進。2012年より取締役として、同社の経営サポートを担当。

2022年4月〜現在:株式会社MIRAISOZAIを立ち上げ、遮熱性の高い、快適性を追求した新しい生地・糸の開発を行っている。

合成繊維の弱点を克服する斬新な発想

機能性を高めても、スポーツライクにならない素材感
松井さんが株式会社MIRAISOZAIを設立したのは、日本の優れた繊維工場の技術が失われつつあることへの強い危機感があったからだった。ファッション業界では、ポリエステルやナイロンといった合成繊維には特有の機能性が求められ、主にスポーツウエアで利用されてきた。しかし、機能性を付与すると独特の光沢感が生まれてしまう欠点があった。
「私たちが目指したのは、機能性を追求しつつも、まるで上質なコットンのような自然な風合いと肌触りを実現することでした。ファッションアイテムとして、違和感なく日常に溶け込める素材を追い求めてきたのです」
この高い目標を達成するために、既存の製法にとらわれない新しいアプローチが求められた。それは、合成繊維が持つ機能的なポテンシャルを最大限に引き出しつつ、同時にその弱点とされてきた風合いの課題を克服するという、非常に高度な技術を要するものだった。

「AIR✕AIR」誕生の鍵

「AIR✕AIR」の開発背景には、中空糸の可能性を模索してきた背景があった。だからこそ、「AIR✕AIR」でも、空気の通り道が鍵になる。
「“エアーブロック効果”というものがあります。繊維のなかに空気層を多く作り出すことによって、高い遮熱性やUVカット効果が得られるというものです。手のひら同士も極限まで近づけないと熱を感じないと思いますが、エアーブロックとセラミックの効果を合わせることで、より熱を防ぐ機能を持たせています」
このエアーブロック効果に着想を得たのが「AIR✕AIR」ということになる。だが、繊維のなかに空気が入っているとしても、その効果は実感できるものなのだろうか。
エアーブロック効果によって、素材に依存しない機能性を発揮

データが証明する圧倒的な機能性:UVカットと速乾性

「AIR✕AIR」は、第三者機関によってその性能の高さが認められている
「AIR✕AIR」の性能は、感覚的な評価だけでなく、客観的なデータに基づいて立証されており、第三者機関による厳格な試験によってその性能は裏付けられている。「AIR✕AIR」によって作られたTシャツは、どのような効果があるのだろうか。
「大きく4つの機能性があります。遮熱性、UVカット、速乾性、肌触りの良さですね。
遮熱性試験においては、S45という結果が得られており、こちらは45%以上55%未満の遮熱効果があるという意味です。
なかでも特筆すべきは、白Tシャツでも紫外線保護指数において最高ランクを示す「UPF50」という数値が得られたことです。こちらは、高い遮熱性も相まって、夏の強い日差しから肌を守る上で極めて高い性能を持つことを示しています。
さらに、吸水速乾性の試験では、空気層が多く糸の密度が低いので乾くスピードも早いことがわかりました。ぬれた状態から乾燥に至るまでの時間が短いことは、汗をかく季節でも快適な着心地を維持することに直結します。
その上、コットンに近い肌触りであるため、ドライ感の持続性を感じられます。気化熱の冷却効果も合わさり、より快適さを追求することができました」
これらの機能は生地表面への後加工によるものではなく、糸自体の構造に由来するため、繰り返しの洗濯でも性能が劣化しにくいのも特徴だ。

 糸と、その生地が補う構造で特許を申請

「AIR✕AIR」が持つ高い機能性は、その糸の構造にある。特許申請にまで至った理由は明快だった。
「『AIR✕AIR』の各機能から、夏場の快適さを実現するための素材だと感じられるかもしれません。実際に、繊維にはセラミックスやヒスイが練り込まれており、接触冷感や熱の放出性に優れています。ですが、これらはすでに一般的なものになりつつあります。
私たちの『AIR✕AIR』の優位性は、さまざまな異型断面の糸を組み合わせることで、空気層を作り出す構造にあります。構造に基軸があるため、素材の風合いを損なうことなく、半永久的な機能性を付与することを可能にしました」
「AIR✕AIR」の特許は、この異型断面の糸の組み合わせにある
これにより、スポーツウエアだけでなく、ファッション性の高いアイテムなどにまで広く展開でき、また顧客からの要望にも柔軟に対応できる仕組みが確立された。

単なる素材提供ではない、工場やブランドと共創する未来 

同社は、「AIR✕AIR」を単なる「素材」として販売するのではなく、それを用いるアパレルブランドとの共創を目指しているという。松井さんは、ブランドが抱える課題やビジョンを深く理解し、パートナーとして共に新しい価値を創造していくことが重要だと語る。
「私たちは、単なる素材メーカーではなく、高い技術力を培ってきた職人さんや工場と、若手のデザイナーやブランドとを結びつけるプラットフォームだと考えています。日本のものづくりが持つポテンシャルを最大限に引き出し、未来のファッション産業に貢献することが我々の重要な役割です。
そのためには、将来的には学校のような場所を作りたいと考えています。知の継承、そして素材開発の楽しみを共有していくことが、より良い製品の開発、そしてサステナブルな社会へと繋がっていく一歩だと考えています」
その一例が、ある中国のデニムメーカーとの協業である。従来のコットンデニムが持つ「重さ」や「乾きにくさ」といった課題に対し、「AIR✕AIR」を応用することで、軽量かつ速乾性に優れ、ストレッチ性も備えた新しいデニム生地を開発した。
この日本が持つ技術力をグローバル展開していくことが、「AIR✕AIR」に託されたミッションのひとつであろう。同社は2025年から中国に糸を販売する会社を設立し、アジアマーケットの拡大を視野に入れて活動を行っている。

サステナビリティとは「長く愛されること」

トレンドに左右されないベーシックなアイテムであることが重要
現代のファッション業界において、サステナビリティは避けて通れないテーマである。同社は、リサイクル素材の利用といった側面だけでなく、「より良い商品を開発し、ひとつの製品を長年愛用してもらうこと」こそが、本質的なサステナビリティに繋がるという考え方を持っている。
「AIR✕AIR」は、高い耐久性と洗濯による機能性の劣化が少ないという特性から、製品の長期利用に適している。その結果、頻繁な買い替えを抑制し、廃棄物の削減に繋がるというメリットがある。
もちろん、そこには魅力ある商品の開発が必要だが、そのためのプラットフォーム企業になることも、同社の目標として掲げられている。目先のトレンドを追うのではなく、長く使用できる価値を提供すること。その考えが、「AIR✕AIR」の設計に貫かれていた。
「一枚の布で世界を変える」という同社の理念の背後にある、伝統と革新、そして未来へのビジョン。空気層に注目するという斬新な発想から生まれた『AIR✕AIR』は、日本のものづくりが世界に示すひとつの答えである。その進化は、これからもファッションの可能性を確実に拡げていくだろう。

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