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「身にまとう日傘」という新発想:老舗ネクタイメーカーが挑んだ猛暑対策バックパック「airoff」

2026.07.17
老舗ネクタイメーカーである株式会社ホビーが、保冷剤ポケットと東レの遮熱素材「サマーシールド」を組み合わせた猛暑対策バックパック「airoff(アイロフ)」第2弾を開発した。
なぜ長年ネクタイを作り続けてきた企業が、分野の異なるバックパック、しかも「保冷剤を入れる」という極端な機構に踏み切ったのか。
今回、株式会社ホビーの代表取締役である高橋伸之さんと、営業本部の佐藤乾太郎さんに取材し、開発の裏側と製品に込めた思いを伺った。

PROFILE

高橋 伸之(たかはし のぶゆき)

株式会社ホビー
代表取締役

PROFILE

佐藤 乾太郎(さとう けんたろう)

株式会社ホビー
営業本部第五課

ネクタイの需要減を逆手にとった「身にまとう日傘」

株式会社ホビーは、ネクタイを作り続けてきた老舗メーカーである。しかし近年の猛暑やクールビズの普及により、ビジネスシーンにおけるネクタイの需要は大きく減少していた。それは企業としての存在意義を見失いかねない状況だった。
そこで同社は、ネクタイという枠組みに縛られるのではなく、ビジネスパーソンをサポートするという原点に立ち返ることを決断した。酷暑という問題に正面から立ち向かう、新たな企画を模索し始めたのだ。
そこで着目したのが、外出時に背中が汗でぬれてしまうという不快感の解消だった。バックパックを背負っているとどうしても背中に熱がこもり、汗だくになってしまう。この日常の不便さを解決することが、新たな製品開発の出発点となった。
「毎日ほんの少しでも、皆様が心地よく、快適に使っていただけるような商品を作りたいという思いがあります」と高橋さんは語る。
こうした思いを形にするなかで生まれたのが、バックパックそのものを「身にまとう日傘」に見立て、使用者の体を直接熱から守るという発想だった。
たった数分でも「airoff」の遮熱性の高さが見てとれる

保冷剤と東レの高機能素材によるマイナス9.9度の実証

ビジネスシーンで幅広く使用してもらうためには、汚れが目立たず、フォーマルな印象を与える黒色のバックパックをベースにすることが必須条件だった。しかし、黒は太陽光の熱を吸収しやすいため、暑さ対策の観点からは非常に不利である。 業界内でも「黒色で白色と同等の熱反射性能を持つ素材などない」と言われるなか、開発チームは遮熱機能を持つ素材を徹底的に探し求めた。
その結果、東レが開発した高機能素材「サマーシールド」に出会う。この素材は表面が黒色でありながら、中層に白色の反射機能を持つ3層構造となっており、蓄熱せずに高い遮熱効果を発揮する。
探し求めていた遮熱構造を持つ東レ「サマーシールド」
「ずっとアンテナを張って情報を集めるなかで、3層構造の生地を紹介した記事を見つけました。その記事で、中層に白色層を設けて熱を反射する仕組みを知り、『これこそ求めていた構造だ。この素材しかない』と感じたのを覚えています」と佐藤さんは当時を振り返る。
サマーシールドの採用に加え、背面に保冷剤を直接入れるヒートコントロールポケットを設けることで、外気を遮断しつつ内部から冷やす構造を確立した。大気から伝導してくる熱を完全に防ぐには、反射だけでなく保冷剤による直接的な冷却が不可欠だったのである。
背面には保冷剤を入れるスペースがあり、物理的に冷却効果を生み出せる
この機構により、バッグ内の温度上昇は劇的に抑えられた。35度の密室に置かれたバッグの中に水を入れたペットボトルを配置し、3時間にわたり観測する試験を行った結果、バッグ外のペットボトルと比較して最大マイナス9.9度の温度差が実証された。
バッグの中に入れたペットボトルも、冷却機能によって温度上昇の抑制が実証された
また、内部にEVA素材を使用することで、保冷剤が完全に溶け切るまでの時間を延ばし、屋外でも約3時間にわたって涼しい状態を維持できるようになった。さらに、背面に触れる部分には滑らかで通気性の高いメッシュ素材を採用し、汗によるムレを軽減すると同時に生地へのダメージを防ぐ工夫も施されている。
保冷剤に加えてメッシュ素材を採用することで、背中の汗の不快感を軽減できる

荷物の重さを30パーセント軽減するAGSの導入

第1弾の「airoff」をリリースした後、サポーターからは多くの反響と改善の要望が寄せられた。その中で特に浮き彫りになった課題が、荷物の「重さ」だった。保冷剤が溶けると下部に沈んでしまい、それによってユーザーが重さを強く感じるという問題が発生していた。
この課題を解決するため、第2弾の開発時は保冷剤ポケットの位置を見直し、重みが下にかかりすぎないよう上部で止まる構造へと改良を加えた。さらに根本的な重さの軽減を図るため、新たに「AGS」という機能を導入し、ショルダー部分が「動く」バックパックの開発に至った。
ショルダーパーツが上下に動くことで、肩への圧力を軽減する
「歩くと荷物は上下に揺れますが、その動きに合わせて内蔵された部分がしなやかに動き、荷物の揺れを和らげます。これによって首や肩、背中、腰への負担を30パーセント軽減することができました」(佐藤)
この30パーセントという数値は、ランニングマシーンを用いた疲労回復度の測定実験によって裏付けられている。AGSを搭載したバッグを使用した場合、搭載していないものと比べて疲労の回復が有意に早いことが実証されたのだ。開発段階で重い書籍などを詰めて半日歩き回るテストを行った際も、帰宅時の疲労感に明確な違いが表れたという。
重さの軽減に加え、出張に対応するスーツケース固定ベルトの追加や、ジム通いにも適した拡張機能も盛り込まれた。また、耐水圧2万mm相当の防水機能も備わっており、夏場のゲリラ豪雨にも耐えうる仕様となっている。暑さと重さという2大ストレスを解消することで、ビジネスからアウトドアまで、ユーザーの行動範囲を大きく広げることに成功した。
登山家が使うテントと同等の防水性能で、突然のゲリラ豪雨にも対応できる

新たなビジネスの相棒となるアイテムに

猛暑と荷物の重さという過酷な環境からユーザーを解放する「airoff」は、その実用性の高さからすでに多くの支持を集めている。
出社や出張などによる移動の負担を少しでも軽減する新たな相棒に
開発陣の視線は、夏の暑さ対策だけにとどまらず、年間を通じた快適性の追求へと向かっている。
冬場にはヒートコントロールポケットに保冷剤の代わりとして使い捨てカイロを入れることで、背中を温める用途にも対応できるという。今後は単に色やデザインを変更するだけでなく、ユーザーに「そう来たか」と驚きを与えるような新しい機能やテクノロジーを取り入れていく予定だ。
ネクタイメーカーとして培ってきた「身に着けるもの」の発想を、猛暑対策という新たな課題へ応用した「airoff」。異業種だからこそ生まれた視点は、ビジネスバッグの役割そのものをアップデートする可能性を秘めている。

※現在、クラウドファンディングサイトMakuakeにて、アンコールを開催中。期間は7月26日(日)まで。

また「airoff」はバックパックだけではなく、最新新素材やテクノロジーを取り入れ、人々の生活を少しでも豊かに、快適にできないか常に考え提案するブランドとして、新たな商品にもチャレンジしている。

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