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気温45度を想定した「XShelter暑熱αフーディー」 ワークマンはなぜ高い気化冷却性能を実現できたのか?
ワークマンが気温45度の酷暑を想定し、16の機能を搭載した2,900円の環境適応型ウエア「XShelter暑熱αフーディー」を開発した。
過酷な現場で働くプロに向けたシビアな衣服設計でありながら、水でぬらすとアイスネックガードになるなど、遊び心から生まれたギミックも備えている。
この記事では、株式会社ワークマン製品開発部第1部マネージャーの羽倉優太朗さんに、同製品の技術的アプローチ、そして低価格で高機能を実現する衣服設計の手法について伺った。
猛暑から酷暑へ──気温45度を想定した「着た方が涼しい」ウエアの原点
ワークマンが新たに展開する「XShelter暑熱αフーディー」ですが、どのような経緯で開発がスタートしたのでしょうか。
製品のコンセプトとしては、『着た方が涼しい』ことが最大のポイントです。近年日本で猛暑が続いているという背景もあり、気温が45度を超えるような酷暑環境にも対応できるウエアを作れないかという発想から、このXShelter暑熱シリーズの開発が始まりました。これまでの夏向け衣料に付与される機能といえば接触冷感や吸水速乾が中心でしたが、そこからさらに一歩踏み込んで、より過酷な環境下でも身体を守る機能が求められていると感じていました。
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XShelterシリーズの中で、今回の「暑熱α」はどのような位置づけになりますか。
XShelterシリーズにはいくつかラインナップがあります。「α」は基本的にアウターに使われるもので、気化冷却や速乾性、遮熱性に優れており、とにかく軽いのが特徴です。一方、「β」は主にインナーとして使うもので、ストレッチ性や接触冷感性、通気性などを備えています。さらに最上位モデルとして「Ω」があり、これは高遮熱と高通気という相反する機能を高いレベルで実現したワークウエア向けの製品になります。
一般向けのアウトドアシーンだけでなく、より過酷なワークウエア市場も当然視野に入れています。Ωは基本的にワークウエアとして作っているので、S45という一般的な日傘よりも高い遮熱率を誇ります。通気を考慮せずに生地を高密度で練る事で、遮熱性は上げられるのですが、相反する通気性も確保しながら遮熱する技術をミックスさせるのが非常に難しかったところです。
今回のαフーディーも、もともとワークウエアで培ってきた日差し対策の技術を、一般の方のガーデニングや川遊びといったアウトドアシーンに落とし込んで活用できないかという思いから生まれています。
気化冷却と遮熱のメカニズム──マイナス10度を生み出す糸の組み合わせ
今回のフーディーは試験データで「マイナス10度」という結果が出ています。これはどのようなメカニズムで実現しているのでしょうか。
日傘と同じように遮熱性が非常に高いという基本原理の中に、気化冷却という液体が気体に変化する際に必要な熱(気化熱)を周囲から奪う事で冷却効果を生み出すを利用しています。今回は2種類の糸を使っていて、内側にはまったく水を吸わないポリプロピレンの糸、外側にはより吸水して押し出してくれる拡散性の高い糸を配置しました。内側からしっかり外に押し出す力と外側から吸い上げる力、その相乗効果で水分をすばやく拡散させることで気化冷却性を高めています。水分を含ませたときにどれだけ早く拡散させるかがポイントで、拡散が早ければ早いほど熱を奪ってくれるため、マイナス10度まで下がるという試験結果が出ています。
糸自体にも工夫があるとお聞きしました。
はい、表側にはチタン鉱石を練り込んだ糸を使用しています。その糸自体が光を反射して遮熱するという原理です。ただ、鉱石の糸を多く使いすぎると生地が硬くなり、重みにもつながってしまいます。そこで、まったく水を吸わない軽くて浮く糸と、鉱石の糸の2つをミックスする構成にしました。縦糸と横糸で変えてみたり、裏面に持ってくることで吸水性を高めたりと、トライアンドエラーを繰り返して今の機能に行き着きました。
持続的な冷却を実現している理由も、その拡散性にあるのでしょうか。
そうですね。接触冷感はタッチしたときに熱を一気に奪ってくれるので冷たく感じるのですが、今回のαフーディーに関しては、水を吸って多方面に拡散してくれるので、点ではなく面で冷たくなるんです。面で拡散できることでより周りの温度を広範に奪えるため、持続性にもつながっています。約17分で完全に乾燥するとのことですが、乾いてきたら霧吹きなどで水分を含ませたり、また汗をかいたりすれば、同じような冷却効果を発揮するのでしょうか。
はい。速乾性が非常に高いので、乾いてきた際は水分を含ませることで、また同様に気化冷却効果を感じていただけるようになっています。視覚的な安全対策と実用機能への発展

今回の製品には、UV量や気温の変化を視覚的に知らせる「UVサーモアラートチェッカー」が搭載されています。どのような狙いがあるのでしょうか。
2025年の6月に熱中症対策の法令が施行されたこともあり、ワーク現場に向けて第三者が見たときに、「今30度超えてるよ」「日差し強いから水飲もうよ」などと休憩を促す目的で作りました。気温センサーは30度を超えると下線が赤くなり、紫外線センサーは日差しが強いとロゴが青く光るようになっています。これを一般向けに落とし込んだときに、お子さんなど自分で暑さを感じにくい方に対しても、周りが見て「30度超えてるから水を飲ませないと危ない」と気づけるように活躍してくれればと思っています。


フードを収納してスタンドカラーにし、水でぬらしてアイスネックガードとして使える機能もユニークですね。
実はこれ、開発段階の遊び心といいますか、偶然生まれたようなものなんです。生地にちょんちょんと水をつけて冷たさを実感していたときに、「これロールアップしたらもっと冷たいんじゃない?」という発想になりました。この生地を少し厚くしてあげた方がもっと冷たくなるんじゃないかというアイディアから、アイスネックガードとして使える仕様になりました。他にも、日差しの角度を計算して衣服内に直射日光が入らないように設計したフードや、暑いときに腕をまくれる袖口のロールアップ機能など、使い心地もアップデートしています。
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シルエットについては、ワークウエア寄りのタイトな作りになっていると聞きました。
動きやすさを重視しているワークウエアから来ているので、ゆったりというよりは少しフィット感がありながら動きの邪魔はしないのが特徴です。一般的な服のトレンドに比べると若干タイト気味かもしれませんが、作業着に比べたら少しゆるく作ってあります。また、背中と脇下にあるベンチレーションを開けることで一気に蒸れを解放し、衣服内を換気させることもできます。.jpg?w=902&fm=webp)
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2,900円で高機能を実現する独自の製品哲学
これだけの機能を盛り込みながら、2,900円という価格を実現できた理由を教えてください。
開発には3年くらいかかっています。最初はこれほど多機能ではなかったのですが、「遮熱するフーディーを作りたい」「通気するフーディーを作りたい」というところからスタートしました。どうやって安く作ったかというよりは、うまく組み合わせたことで安くできたという感じです。あとはやはり、プロ向けに量をしっかり作ることでできるだけコストを下げているというのがあります。このフーディーを着用する際、より効果を高める組み合わせはありますか。
アウターである「α」の中に、インナーである「β」を組み合わせて着ていただくことで、体感ベースで最大マイナス6.8度ほどの効果が得られます。市販のTシャツなどを合わせるよりも、「β」の製品を選び、かつぬらして使うのが涼しさを体感するうえでもっとも効果的ということですね。
そうですね。拡散性が高いので、そのように組み合わせて水分をうまく利用していただくのが効果的です。最後に、開発者として実際に着用してみて感じた良さを教えてください。
海に行ったときにこのフーディーを着ていたのですが、妻が私が脱いだものを着て「これ全然違う」と言ってくれたときは、すごく良かったなと思いました。通気性もあるので、他の生地に比べて暑さや蒸れに非常に強いと感じられます。海や川に入っても、約17分で生地が乾燥するため、ラッシュガードのように使っていただくこともできるかと思います。ただ、海水による影響などの耐久性はまだライフテストできていないため、そこは少し懸念点ではあります。洗濯機で洗っていただく分には機能は落ちませんが、裏面はアイロンの熱に弱く糸が劣化してしまうので、そこだけは注意していただきたいです。
衣服が単なるファッション性や快適性の追求から、過酷な気候変動下で「身体を守る装備」へと変貌しつつある。ワークマンがプロフェッショナルな現場で培ってきた機能性が、日常のレジャーや生活の安全を守るために解放され始めている。「着た方が涼しい」という逆転の発想から生まれた「XShelter暑熱αフーディー」は、酷暑時代における“環境適応型ウエア”の可能性を示している。
PROFILE

羽倉 優太朗(はぐら ゆうたろう)
株式会社ワークマン
製品開発部第1部 マネージャー











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