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“涼しいのにきちんと見える”はどう実現したのか? 洋服の青山「半袖ジャケット」開発の裏側
猛暑が日常化する現代において、洋服の青山が展開するレディース向け「半袖ジャケット」が注目を集めている。昨年一部店舗で完売したこのアイテムは、接触冷感や吸汗速乾などの機能を加え、計8つの機能を搭載した2026年モデルへとアップデートされた。
かつてのレディースビジネスウエア市場ではデザイン性が重視され、「おしゃれは我慢」という風潮が強かった。しかし、近年長引く猛暑により、働く女性たちの間で快適に過ごせる機能性を求める声が急増している。なぜ洋服の青山は、スーツの常識である長袖をカットし、半袖という形に踏み込んだのだろうか。
この記事では、青山商事株式会社 商品第一部マネジャーの髙井さや氏に、半袖ジャケットが生まれた背景や、ビジネスシーンの「きちんと感」と快適性を両立させるための設計の裏側を聞く。
PROFILE
髙井 さや(たかい さや)
青山商事株式会社 商品第一部 マネジャー
2016年入社。2018年より現在の部署へ着任。主にレディースセットアップ、コートなどの商品企画を担当。
猛暑と多様化するニーズが後押しした半袖化への決断
近年の猛暑はビジネスウエア市場にも変化をもたらしている。男性向けではハーフパンツが登場するなど仕事服の多様化が進む一方、職種によっては依然ジャケットの着用が求められるシーンも少なくない。青山商事はこのジレンマに対し、猛暑下でも安心して着用できる新たなビジネスウエアの在り方を模索した。「ジャケットの着用にはかっちりとした印象や相手への敬意を示せる利点があるなかで、現代の気候変動を理由にその着用を否定的にとらえるのは性急だといえます。アイテムの持つ強みを生かしつつ、この猛暑化においてもいかに快適に過ごせる商品を提案できるかが、モノづくりにおいては重要だと考えています」
髙井さんはジャケットの意義を認めつつ、着用者の負担を軽減する使命感を語る。同社では気候変化に伴い、企画スケジュールを根本から見直していた。従来のレディーススーツは4月頃までに夏物を投入し、セールを挟みながら長期にわたって販売していた。しかし、消費者が「買ってすぐ着られるもの」を求める傾向へ変化し、その仕組みだけでは対応が難しくなりつつあった。
これに対応するため、シーズンを細かく分割し、4月から6月にかけて気温に合わせたアイテムを順次投入する戦略へと舵を切った。半袖ジャケットの企画もこの体制から生まれたものである。当初は長袖の展開を想定し約1年前から企画が進んでいたが、急激な暑さの到来を読み取り、発売の半年前に半袖へシフトすることを決断する。このスピード感ある対応が、昨年のヒットへとつながったのだ。
高機能素材の選定と「時短」ニーズに応える8つの機能
昨年の反響を受け、2026年モデルの開発にあたりチームが着手したのは、夏場に求められる機能のさらなる追求であった。従来モデルのUVカット、ストレッチ性、軽量、ウォッシャブル、通気性という5つの機能に加え、新たに「接触冷感」「吸汗速乾」「防シワ」を搭載し、計8つの機能を備えるアイテムへと進化させた。
「接触冷感は、羽織った瞬間に涼しさを感じられるため、お客様にもっとも体感していただきやすいポイントです。また、吸汗速乾機能は、汗染みを気にして着る服の色が制限されてしまう悩みを解消し、夏でもおしゃれを楽しんでいただくために採用しました」
追加された機能は心理的な負担を軽減する役割も担う。接触冷感機能は、生地が肌に触れた瞬間に体表の熱が生地へ移動する仕組みを利用し、着用時の不快感を瞬時に和らげる。また、防シワ機能は、冷房対策としてジャケットを鞄に入れて持ち運ぶといった、夏場特有の着脱の多さを想定したものだ。
裏地なしの設計とビジネスウエアに相応しい生地の追求
一方で、複数の機能を一つの衣服に盛り込むことは生地の質感に影響を及ぼす。高機能素材を追求するほど、生地がスポーティーな風合いになったり、加工によって硬くなったりするリスクが高まる。ビジネスウエアの品格を重んじる青山商事にとって、機能性と「きちんと感」の両立は譲れないラインであった。「機能性が重視されているとはいえ、毎日着るものだからこそ着心地のよさや見た目の美しさは欠かせません。高機能な生地と美しい意匠の両立は、もっともこだわったポイントです。ポリエステルを使用していますが、織り方や染め方の工夫によってウールらしく見える生地を選定しました」
髙井さんは生地選びの苦心を振り返る。後加工で機能を付与するのではなく、生地自体が機能素材であるものを厳選することで、後加工特有の生地の硬化を回避し、ビジネスウエアに求められる着心地と美しいデザイン性を保つことに成功している。

さらに構造面でも大胆な引き算が行われた。それが裏地を完全になくす決断である。一般的なジャケットには表地の保護や滑りを良くする目的で裏地が付けられているが、夏場の通気性と軽量化を最優先するためこの構造を採用した。裏地がないことで衣服内に熱がこもりにくくなり、軽快さも向上する。ただし、裏地を省くと内側の縫製が露わになるため、脱いだ際にも美しく見えるよう縫い代の始末には緻密な技術が注ぎ込まれている。見えない部分の丁寧な仕立てが、ビジネスシーンに相応しい上質さを担保しているのだ。

二の腕を隠す5分袖と美しさを保つシルエット設計
機能と素材の基盤が整ったうえで、最終的な印象を決定づけるのはやはりデザインとシルエットだ。半袖ジャケットをビジネスシーンでも安心して着てもらうためには、カジュアル見えを防ぐ絶妙なバランス感が求められた。鍵となったのが、袖の長さとウエストの絞り具合だ。チームは「二の腕を出したくない」という声に応え、袖丈を肘のあたりまで覆う5分袖に設定した。「袖が長すぎると、手を前に出す動作の際に引っかかりが生じてしまいます。仕事中の動きやすさを損なわず、ビジネスウエアとして最適なバランスを追求しました。また、アームホールをあえて広めに作ることで、袖にボリュームのあるトップスの上からでも、ごわつくことなく羽織れるように設計しています」
多様化するトップスとのコーディネートまでを見据えた、実用的な設計思想がここでもうかがえる。ビジネスシーンにおいて、着こなしの乱れや着心地の悪さは集中力を削ぎ、相手への印象にも影響を及ぼしかねない。アームホールに施された余裕は、そうした細かなストレスを未然に防ぐ工夫である。

さらに、ジャケット全体のシルエットにおいては、フロントボタンを開けて着た際も閉めて着た際も、ウエストラインが美しく見えるよう、数ミリ単位で絞り具合を詰める入念な調整が施されている。ボックスシルエットのようにゆったりさせすぎるとメンズライクになり、着丈が長すぎると古着のようなルーズさが出てしまう。そのため、着丈はヒップトップ程度の長さに留め、適度なシェイプを利かせている。また、ダブルブレストを採用しており、手持ちのボトムスとも合わせやすいよう単品使いの汎用性も計算されている。機能性と精緻なデザインが結実した形である。

現在、ビジネスウエア市場においてストレッチ性やウォッシャブル仕様はもはや標準的な機能となりつつあり、消費者の要求水準は年々高まっている。青山商事はこれに対し、過酷な環境に特化したプラスアルファの価値を提供し続ける構えだ。半袖ジャケットの需要は猛暑の長期化に伴いさらに拡大すると予想されており、来季に向けては、より長く涼しさを保つ「持続冷感」や、通気性を極限まで高めた「高通気」商品の開発も視野に入れている。
「相手から信頼される装い」というビジネスウエアの本質的な価値はそのままに、衣服の機能性を向上させていく。働く女性たちが環境の変化に直面しながらも、自信を持って社会で活躍できるよう、青山商事はこれからも現場の生きた声をすくい上げ、快適さと品格を両立させた次世代のウエアを追求していく。













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