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三陽商会の人気アウターが集結:特別コレクション「BLACK OF BLACKs」が辿り着いた究極の黒とは?

2025.01.12
「鉄黒(てつぐろ)」「黒橡(くろつるばみ)」「呂色(ろいろ)」ーーひと口に「黒」といってもじつにさまざまな種類の黒が存在し、一説にはおよそ300にも及ぶという。
そんな深淵なる黒の世界で三陽商会が目指したのは黒の中の黒だ。
2024年秋冬シーズンに発表された「BLACK OF BLACKs(ブラック オブ ブラック)」は、特殊な糸や染色・加工技術を駆使することで深みのある黒を実現し、主要10ブランドのアウターに落とし込んだ渾身のコレクションである。
三陽商会が探し求めた“真の黒”はどのようにして実現したのか? 今回の企画を先導した嶋﨑浩二さんがその全容を語る。

PROFILE

嶋﨑 浩二(しまさき こうじ)

株式会社三陽商会 執行役員 事業統轄本部 事業本部 企画担当

商品開発委員会から生まれたアイデア

黒は現代ファッションにおける定番カラーのひとつです。この色に注目した理由を教えてください。
三陽商会には、市場に支持される価値のある商品を開発することを目的とした商品開発委員会という全社横断プロジェクトがあります。
定期的に各ブランドの責任者たちが生地や商品のサンプルを持ち寄って企画会議を行っているのですが、どのブランドも黒を取り上げた回があったんです。
ただ、黒とはいっても、白っぽいものから赤っぽいものなど、さまざまな種類があります。「本当の黒は一体どんなものか?」という疑問から検討を重ね、黒の中の真の黒を目指す、という意味を込めて、「BLACK OF BLACKs」のコレクションが始動しました。
黒の種類とは、色の濃さでしょうか?
国際照明委員会が定めたLabという規格に、明るさを表す「L値」という数値があります。これはミルで引いた粉の明度を色差計という機器で測定したもので、黒のL値は0、白のL値は100となります。
一般的に18〜20くらいが黒、17以下が濃い黒といわれているんですが、我々はさらに低い14.5~16.1という値を達成しました。
理想の黒を実現するうえで、どんな点がハードルになりましたか?
近年のファッションシーンでは、ナイロンやポリエステルなどの機能的な合成素材のアウターが注目を浴びています。ところが、コットンやウールといった天然の繊維と違って、合成繊維は素材の特性上、濃い黒に染めることが難しいんです。
今までにない真の黒を実現するには、糸の選定から、染色・加工技術まで見直す必要があり、専門的な技術を持つ繊維メーカーの協力が不可欠でした。
そこで、お付き合いのあった数社にご協力いただいたんですが、いずれも「難しい」という回答でした。そんななか、唯一、「できるかもしれない」というお返事をいただいたのが、セーレン株式会社だったんです。
セーレンはどんな企業なんですか?
福井県に本社を置く研究開発型のグローバル企業です。世界トップシェアを誇るカーシート用の生地の生産をはじめ、エレクトロニクスや医療分野での資材開発、超小型人工衛星の開発・製造など幅広い事業を行っています。
ファッション関連の事業にも力を入れていて、機能性インナーなども開発しています。

真の黒を生み出す3つの原理

どのようにして濃密な黒を実現したんですか?
BLACK OF BLACKsの開発にあたり、心がけたのは以下の3つの原理でした。

(1)より黒く染まる糸の選定

(2)より黒く染めること

(3)より黒く見せること

糸の選定、染色、加工という3段階で工夫を重ね、通常の黒よりもさらに深みのある真の黒を目指しました。
糸からこだわったんですね。
染色が難しいナイロンやポリエステルといった合成繊維の中でも、できるだけ染まりやすい性質を持つ糸を厳選しました。同時に、より黒く染めるには、染色や加工と相性のいい糸であることも欠かせません。
糸の染色にはどのような工夫が?
黒を濃くするには、繊維の内部まで入り込む染料を使う必要があります。ただ、繊維に入り込みやすいということは、繊維から染料が出やすいということでもあり、色落ちや色移りの心配が出てきます。
そこでBLACK OF BLACKsでは、繊維内部に入りにくい染料を使用しつつ、独自の染色技術で濃度を上げることにしました。結果、色を濃くすると同時に、色落ちや色移りがしにくい堅牢度を両立することができたんです。
染料や薬剤の種類だけでなく、量のバランス、加工温度によっても微差が出てしまうため、何度も調整を繰り返しました。
「より黒く見せる」にはどうするのでしょうか?
決め手になったのが、濃染化加工という特殊加工です。
人間は反射してくる光を目の中の神経細胞で検出し、色を認識しています。そのため、生地から反射する光の量を減らすことができれば、より黒が濃く見えるんです。生地の表面が水で濡れていると、色が濃く見える理由もそこにあります。
そこで染色後、樹脂による仕上げ加工を施し、糸の繊維の表面に樹脂の被膜を形成しました。こうすることで反射が少なくなり、かつ繊維への光の透過率も上がるため、高い濃色効果を得ることができるのです。
人間の目の性質も利用するとは驚きです。
そして、アウターのコレクションということもあって、モデルによっては、水への強さは妥協できない要素でもありました。工場とも試作を重ねた結果、生地の裏面にフィルムを貼り合わせるラミネート加工を施すことにより、透湿防水性などの機能性を付加して、特別なコート・アウターをつくりました。

主要10ブランドが10型のアウターをラインナップ

LOVELESS(メンズ)「MA-1」55,000円(税込)
まさに渾身の生地ですね。展開について詳しく教えてください。
ブランドの垣根を越えて展開することにしたのは、他社にはない特別な黒であることを強調するためです。
展開するブランドは、MACKINTOSH LONDONやPaul Stuart、SANYOCOAT、LOVELESSをはじめとした10ブランド。それぞれのブランドが1型ずつのアウターをラインナップします。
素材は5種類あります。大きく分けると、表側がナイロンのタスランとポリエステルタフタの2種類があって、それぞれに3層、2層、1層構造の仕様があります。
MACKINTOSH LONDON(メンズ)「ダンフォード シンセティックステンカラーコート」137,500円(税込)
SANYOCOAT(メンズ)「青森ダウン」209,000円(税込)
三陽商会の根幹をなすブランドばかりです。集まるといっそう存在感が増しますね。
黒いアウターだけを集積することで、店頭にディスプレイした際もインパクトが強まります。
昨年の10月末には、約2週間にわたって、「ラブレス青山」、「ラブレス ニュウマン横浜」「ラブレス天神」の3店舗で、コレクションすべてをディスプレイしました。そのかいあって多くのお客様の目に留まり、商品をしっかりご覧いただくことができました。また、百貨店のプレゼンテーションエリアなどでも複数のブランドを展示して訴求しました。
どの生地も黒が濃いだけでなく、上質さを感じます。
光の反射を抑えた黒は独特の深みがあり、合成繊維とは思えない高級感を漂わせます。構想から完成までおよそ2年もの時間がかかりましたが、その分、他社の黒とはひと味違う色合いに仕上がったと思います。

三陽商会の美意識とセーレンのノウハウが凝縮されたBLACK OF BLACKs。興味をそそられたら、ぜひ店頭に足を運び自分の目で実物をチェックしてほしい。吸い込まれるような濃密な黒に心惹かれるはずだ。

Text by Ryota Osujo

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