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ハンズフリーシューズ市場を牽引する、特許技術で差をつけるKizik(キジック)の正体
手を使わずに履ける「ハンズフリーシューズ」市場が、世界規模で年々拡大を続けている。なかでも日本は脱ぎ履きの頻度が高い生活様式を持つことから、とりわけ市場ポテンシャルが高いと位置付けられている。
そうした流れの中、昨年日本上陸を果たし、着実にユーザーを増やしているのが、アメリカ・ユタ州発のハンズフリーシューズブランド「キジック」だ。その思想とテクノロジーについて、日本での展開を担う丸紅コンシューマーブランズ代表取締役社長・髙原秀人さんに話を聞いた。
PROFILE
髙原 秀人(たかはら ひでと)
丸紅コンシューマーブランズ株式会社
代表取締役社長
日本のハンズフリーシューズ市場においては、後発ブランドの位置付けとなるキジックだが、その歴史は意外と古い。2009年、創業者のマイク・プラット氏及びデザイン工学専攻者や数学者にて、靴の脱ぎ履きという日常動作に向き合う研究開発がスタートした。
設立から8年後にあたる2017年、世界初のハンズフリーシューズに特化したブランドとしてキジックが創設され、2019年にはナイキから出資を受け、ライセンス契約も結んでいる。現在、同社が保有・管理する特許技術は200以上にのぼり、ハンズフリー分野における技術的基盤を確固たるものにしている。2019年にはナイキから出資を受け、ライセンス契約も結んだ。
「創業者のマイク・プラットは、もともとはOGIOというゴルフバッグのブランド事業を展開していたのですが、同時に発明家としての側面を持っていました。人間の生活の中に潜む、見過ごされがちな不便を解決することができないか。その問いから着目したのが、靴の脱ぎ履きだったのです」
テクノロジーの進化によって生活の利便性が大きく向上するなかで、なぜ靴だけは「屈んで履くもの」「靴紐を結ぶもの」というのが当たり前なのか……。そうした根源的な疑問こそが、ハンズフリーシューズ研究の出発点となった。
「靴業界出身ではない、いわば“門外漢”だったからこそ、固定観念を疑い、まったく新しい発想に辿り着けたのだと思います」
特許技術が生み出す、これまでにない「ハンズフリー」体験
多くの特許技術を有するキジックだが、ハンズフリーシューズの核となるのが「スプリングバック」と呼ばれる独自構造である。一般的なハンズフリーシューズの多くは、かかと部分を靴ベラのように固定した構造を採用している。足を滑り込ませやすい反面、フィット感が弱く、脱げやすさを指摘されるケースも少なくなかった。
一方、キジックのスプリングバックは、履くときにかかと部分を足で踏み込んで潰し、広がったスペースに足を入れると、ヒールカップがバネのように機能して、瞬時に元の状態に戻る。この機能によって、ハンズフリーと高いホールド感を同時に実現している。

現在、同社には、エンジニアや他の大手シューズメーカー出身のマーケターやデザイナーも多く在籍している。研究対象はハンズフリー機構だけにとどまらず、ミッドソールやアウトソールなど、靴の基礎構造にまで及ぶ。人間工学に基づいた歩行時の安定性や疲れにくさといった、靴としての本質的な機能も高いレベルで担保されている。

「単に『便利な靴』だけでなく、ギミックとしてスプリングバックを視覚的にも楽しめるモデルから、ファッション性を重視してスプリングバック ヒールを内側に収納したクラシカルなスニーカー、レザーシューズまで幅広いデザインを展開しています。来春には新たな機能に特化したハンズフリーシューズも発売予定です」
手を使わずに履けるブーツの革新。Junoシリーズが示す可能性
なかでも世界的に注目を集めたのが、ブーツでハンズフリーを実現した「Juno」シリーズだ。初代モデルは2024年のCESイノベーションアワードを受賞し、大きな話題を呼んだ。
「あらゆる靴の中でも、ブーツは脱ぎ履きの負担が大きい履物です。それを手を使わずに履けるという点は非常に斬新で、発売当初のインパクトは相当なものだったと聞いています」
先シーズン登場した「Juno 2」は、初代で高く評価されたハンズフリー構造をさらに進化させ、足を踏み入れた瞬間に自然にフィット感を生み出す最新テクノロジー「External Flex Arc™」を搭載。
軽量でクッション性に優れたEVAミッドソール、耐久性の高いリップストップナイロンアッパーなどを組み合わせている。ハイカットの「Juno 2 High」にはスプリングロックレースを採用し、足首のフィット感を自在に調整できる仕様となっている。さらに内側にはフェイクファーライニングを施し、防寒性にも配慮している。

現在、各社から多様なハンズフリーシューズが登場しているが、キジックを初めて体験した多くのユーザーは、その足入れの滑らかさに驚くという。

「我々は『アハ体験』と呼んでいます。半信半疑で試着された方でも『あら!?』と驚かれ、そのまま購入されるケースが本国でも日本でも非常に多い。本国では着用から購入に至る割合が約80%となっており、日本でも正確な数値は取れていませんが、体感としては試着した7割近くの方は購入されている印象です」
現在はメンズ、レディース、キッズを含めて約30型を展開している。今後はライフスタイルや用途に合わせ、さらなるラインナップ拡充を予定しているという。
靴の脱ぎ履きという日常の煩わしさを、特許技術によって根本から解消しようとするのが、キジックのハンズフリーシューズである。日本上陸からまだ日が浅いものの、今後はポップアップイベントなどを通じて、より多くの人に体験の場を提供していく予定だ。
この画期的な履き心地は、瞬く間に話題になるだろう。新感覚の“履く”という体験を、ぜひいち早く味わってほしい。
Text by Junko Hayashida















