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進化が止まらない「水沢ダウン」──最新モデルが追求するハイクオリティとは
当初は、バンクーバーオリンピックで日本代表選手に着用してもらうために製作された。雨や雪が多いバンクーバーという街では、防水性と高い機能性が求められていた。販売を目的としたものではなく、選手に最高の品質を提供したいという想いから誕生したのが、水沢ダウンである。
今回は、2025年最新アイテムを紹介しながら、素材テクノロジーやその仕様、そして搭載された機能について深掘りしていく。さらに、建て替えが済んだばかりの、水沢ダウンの拠点である岩手県奥州市の工場の内部も見ていこう。

水沢ダウンの最上位モデル「VERTEX(バーテックス)」
最初に、水沢ダウンの最上位モデルである「VERTEX(バーテックス)」を紹介したい。このモデルは2024年にアップデートされ、今年もリリースされている。1000フィルパワー[1]のダウンを使用した、ハイスペックなアイテムだ。水沢ダウンは着心地のよさに加えて、アイテムそのものの軽さが大きな特徴となっている。その“軽さ”をさらに追求したモデルが、このVERTEXだ。
定番モデル「MOUNTAINEER(マウンテニア)」の重量が約1,000gと、すでに非常に軽量である一方、VERTEXはそのさらに上をいく、約900gという驚きの軽さを実現している。もともと軽量な状態から、さらに100g削ぎ落とせたことに、技術力の高さがうかがい知れる。
この軽さの実現には、ほかにも理由がある。1000フィルパワーという、羽毛の中でも最高クラスのかさ高性を持つダウンを採用することで、少量でも多くの空気を含み、高い保温性を発揮できる構造となっている。さらに、暖かさの追求という点で注目したいのが、裏地に「HEAT NAVI(ヒート ナビ)」を使用し、そこにプリーツ加工を施した仕様である。
説明すると、「HEAT NAVI」という素材は「デサント」が開発した独自の繊維技術で、太陽光を吸収して生地自体が熱を生み出す仕組みになっている。
そのHEAT NAVIをプリーツ状にして生地量を増やし、背中に配置することで、背中から全身へと暖かさを効果的に伝える仕様になっている。こうした素材や仕様は、大阪にある自社研究拠点で実証実験を重ね、「暖かくなるスピード」や「暖かさの最高到達点」などを確認したうえで商品化されている。
暖かさと軽さにフォーカスしているため、デザインは極力ミニマルに仕上げている。これも、最上位モデルであるVERTEXの大きな特徴といえる。


写真 向かって右:HEAT NAVI素材のプリーツ加工

着用したまま衣服内の温度調節ができる「デュアルジップベンチレーション」
ここで、水沢ダウンの多くのモデルに搭載されている独自仕様についても触れていきたい。まず、ダウンを区切る「ダウンパック」を熱圧着で固定し、表生地にステッチを入れない仕様を採用している。これにより、雨風の浸入を防ぎ、高い防水性を実現している。また、ステッチを入れないことで熱が逃げにくい構造になり保温性も向上するこの技術は、水沢ダウンのどのモデルにも基本的に搭載されており、厳しい品質基準をクリアしている。
さらに、フロント部分には「デュアルジップベンチレーション」という機能が採用されている。ジッパーが2列に並んでおり、外側のジッパーを閉めると、防水性の高い構造になる。
一方、内側のジッパーを閉めると、メッシュ生地が露出し、衣服内に外気を取り込むことができる。この構造により、ジャケット内にこもりがちな不快な熱や湿気を効率的に逃がせる仕組みになっている。脇の下にはベンチレーションファスナーが備わっており、外から取り込んだ空気を脇下から排出できるため、着用したまま換気ができる。
街で着るには十分すぎるほどの保温性を持つアイテムだからこそ、こうした熱を適切に逃がす機能は、都市生活において非常に便利である。

写真 向かって右:脇の下のベンチレーション
毎年リリースされるGORE-TEX Fabricを使ったダウンジャケット
水沢ダウンは、GORE-TEX Fabricを採用したアイテムもリリースしている。2025年の新モデル「GORE-TEX ENDEVOR(ゴアテックス エンデバー)」を紹介したい。アメリカのゴア社が開発した、高度な防水性と耐久性を備えたGORE-TEX Fabricを採用したこのモデルは、コットンライクなリサイクルナイロンによるナチュラルな風合いと、無骨なテイストをイメージしている。
袖先にはスナップボタンによるアジャスターシステムを備えており、フィット感の調節が可能になっている。この仕様をあえて外側に見せるデザインも、本アイテムならではの魅力といえる。
採用されているのは「GORE-TEX 60d NATURAL PLAIN WEAVE(ゴアテックス 60デニール ナチュラルプレーンウィーヴ)」という素材で、フッ素を使用しない撥水加工とメンブレン[2]を採用していることが大きな特徴である。北米では「PFAS(ピーファス)フリー」というフッ素規制が進んでおり、それに対応したサステナブルな素材となっている。


水沢ダウンの印象的なポケット
水沢ダウンのデザインで印象的なのが、“八の字型のジッパーポケット”だ。この独特のデザインには、採用に至った理由がある。先ほど紹介したGORE-TEX ENDEVORにも、定番モデルの「MOUNTAINEER」にも用いられている。MOUNTAINEERには“登山家”という意味があり、登山用ザックを背負った際、腰部分に回すベルトがダウンジャケットの裾にあるポケットと干渉し、使えなくなる場合がある。そこで、ポケットの位置を上げ、八の字型に配置するデザインが採用されたという。
このデザインは、その後も水沢ダウンやDESCENTE ALLTERRAINのシェルに受け継がれ、ブランドを象徴するアイコンとして定着している。

定番のその先へ、「OVERSIZED JACKET "MOUNTAINEER"(オーバーサイズ“マウンテニア”)」
水沢ダウンの定番アイテムとして長年展開されてきた「MOUNTAINEER」を、オーバーサイズ仕様にアップデートしたモデルが「OVERSIZED JACKET "MOUNTAINEER"」だ。通常は細身のシルエットが特徴だが、今作では胸まわりと裾まわりを2サイズほど大きくした設計となっている。熱圧着のダウンパックやデュアルジップベンチレーションなどの主要スペックはもちろん継承。さらに、「Dermizax™(ダーミザクス)」という防水・透湿技術を元に開発された、日本生まれのマイクロストレッチファブリックをレギュラーモデル同様に使用している。


次の時代を担う新工場が完成
今年の大きなトピックスとして、水沢ダウンの生産拠点である水沢工場が新設された。水沢工場は約半世紀の歴史を持つが、建物の老朽化が進んでいたこともあり、およそ30億円を投じて建て替えが行われた。新工場内は、無機質なインダストリアル感はなく、ウッディな内装で温かみのある空間となっている。その一方で、水沢ダウンを生み出す最新鋭のハイテク機器が並び、ほかでは見ることのできない独自の工場風景が広がっている。今後は、この新工場からハイクオリティなアイテムが生み出されていく予定だ。



多くの優れた機能が、ミニマルで洗練されたデザインに落とし込まれている。これこそが、水沢ダウンの本質といえる。毎シーズン、機能をアップデートし続ける探究心と、ほかにはない唯一無二の開発技術によって、今年も圧巻のラインナップが揃った。
水沢ダウンが日本、そして世界で愛され続ける理由が、まさにここにある。
[1]フィルパワー:ダウンの品質を表す指標。数値が大きいほど空気を多く含むため、保温性に優れた良質なダウンといえる。フィルパワーが大きいと、少ない量のダウンでかさ高いダウンを作ることができるため、軽いウエアとなる。
[2]メンブレン:2層もしくは3層構造など、機能ナイロン素材の生地と生地の間に入る膜状の素材。水滴の浸入を防ぎつつ、水蒸気は外に排出してくれる性能を持つ。
画像提供:株式会社デサント














