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レイヤリングの自由度を最大化: ナンガの「ナイロンタッサー トラックベスト」は 万能の中間着だ
アウトドアシーンにおいて、「どのウエアを着るか」と同じくらい重要なのが、「ウエアをどう重ねるか」という視点だ。気温や運動量、環境の変化に柔軟に対応するためには、アウターでもインナーでもない“中間着”の存在が欠かせない。
今シーズン、ナンガがリリースした「ナイロンタッサー トラックベスト」は、まさにその役割を担うために設計された一着だ。レイヤリングの自由度を最大化する新しい中間着は、どのようにして生まれたのか。ブランドのPRを担当する米澤 創さんへの取材を通して、その開発背景を明らかにしていく。
PROFILE
米澤 創(よねざわ そう)
ナンガ株式会社の創業地である滋賀県で生まれ育ち、2013年に新卒で入社。2018年より広報を担当し、2023年には販売部販売計画課の広報に。製品テストを兼ねたキャンプが趣味。

中間着としての理想的な要素を兼ね備えたベスト
アウトドアウエアのレイヤリングシステムは、ベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターという構造で語られることが多い。その中でベストは、体幹を保護しながら腕の可動域を確保できる合理的な選択肢のひとつだ。しかし近年は、フリースやインサレーションジャケットの進化によって、その存在意義はやや曖昧になりつつあった。そうした状況の中、ナンガはあらためて「ベスト」の価値を見直した。
「袖がないことで動きやすく、温度調節もしやすい。レイヤリングの自由度が高く、現代の気候やライフスタイルに適応する存在として、あらためて提案したいと考えました」
寒暖差の大きい現代の環境において、行動中の発熱や気温変化に柔軟に対応できる点は、ベストが持つ大きな利点といえる。
「アウターほど重くなく、インナーほど限定的でもない。レイヤリングの中で、足りない機能を補い、過剰な部分は排する存在。それがこのベストの役割です」
静止時ではなく、動的快適性を重視した設計に
「トラックベスト」というモデル名にも、ナンガの設計思想が反映されている。「イメージしたのはトレーニングウエアやトラックジャケットです。トラックとは、走る、移動する、行動するといった動的な行為と結びついた言葉。ハイクやキャンプ、旅先での移動といったアウトドアアクティビティもまた、常に動き続けることが前提となります。
そのためこのベストは、軽快さや動きを妨げない構造など、行動中の快適さを重視して設計しました」

機能性と都会的なルックスを両立させる素材選び
そんなベストを完成させるうえで、鍵を握ったのが素材選びだった。「動き続けることを前提とした中間着には、軽さ、防風性、そして快適な着心地のバランスが不可欠です。さらに、春先から初秋まで長い期間着用できる汎用性も譲れませんでした」
こうした要件を満たす素材を模索するなかで、候補として浮かび上がったのがナイロンタッサーだった。
ナイロンタッサーとは、ナイロン糸を高密度で織り上げた平織り生地の一種だ。タッサー(tussah)とは本来、野生の蚕から採れるタッサーシルクに由来する言葉で、その自然な風合いを再現するように、織りによって生まれる細やかな凹凸と適度なハリ感を備えているのが特徴だ。
こうした特性から、ナイロンタッサーはウィンドシェルやライトアウターなど、軽さと耐久性、携行性が求められるアウトドアウエアに採用されてきた。
「過度な光沢が抑えられた、コットンライクな風合いも魅力のひとつです。アウトドア基準の強度や耐久性を確保しながらも、都市生活にも馴染む落ち着いた表情になっています。求めていた条件を満たす理想的な素材でした」

ライニングとベンチレーションで体温調節機能をプラス
ナイロンタッサーという素材によって、軽さと耐久性、防風性は実現できた。しかし、中間着としての完成度を高めるうえで、もうひとつ重要な課題が残されていた。衣服内部の環境をどのように制御するか、という点である。「アウトドアウエアは、単に暖かければいいというものではありません。行動中に発生する熱や湿気を適切に逃がし、衣服内を過度に蒸らさない体温調節機能も求められます」
この課題をクリアするため、裏地にはメッシュ素材が採用された。
「メッシュ構造は、外気と衣服のあいだに空気の層を保持することで、適度な保温性を確保することができます。同時に蒸れを軽減し、衣服内を快適な状態に保つ役割も担っています」
さらに背面のバックヨーク部分にはベンチレーションを設けた。
「衣服内で発生した熱は背面上部に滞留しやすいため、この位置に熱を排出し、外気を取り込めるベンチレーションを配置しました。気温が高く、風のある環境、たとえば、春から初夏のトレッキングや、海や川辺のように風が抜ける場所で特に効果を発揮します」

レイヤリングを前提としたディテールワーク
ディテールの一つひとつにも、ナンガの合理的な設計思想が貫かれている。「フードを持たないシンプルなスタンドカラーは、フード付きのトップスやシェルとのレイヤリングを想定したものです。首元の干渉を防ぐことで、重ね着した際も快適な着用感を維持できるようにしています」
フロントに配置されたポケットもまた、レイヤリングを前提とした設計の一部である。
「同シリーズのジャケットと組み合わせた際に、ポケット同士が干渉しないよう配置を調整しています。また、単体で着用した場合でも、ギアやガジェットを十分に収納できる容量を確保しました」

目指したのは、立ち位置を限定されない万能の中間着
このベストは、アウトドアだけでなく、日常の延長線上で機能することを前提に設計されている。「ユーザーとしてイメージしたのは、自然と都市を行き来する人々です。週末はキャンプやハイキングに出かけ、平日は自転車で移動する。そうした日常の中で、特定の用途に限定されないウエアを目指しました」
アウトドアから都市の日常まで対応し、春や初夏、秋にはアウターとして、冬にはインナーとして機能する。ナンガのナイロンタッサー トラックベストは、現代のレイヤリング思想を体現する中間着の最適解である。
Text by Ryota Osujo

















