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映画スターの一言から生まれた伝説:Repetto(レペット)バレエシューズ78年の軌跡

2025.03.10
バレエシューズの代名詞「Repetto(レペット)」は、1947年にパリで創業したフランスの老舗ブランドだ。当初はプロのダンサー向けバレエシューズとして人気を博し、1959年にパリで初のブティックをオープン。その後、世界的なラグジュアリーブランドへと成長を遂げた。
現在では100店舗以上を展開し、シューズだけでなくウエアやバッグまで手がけるが、その生産には今なお伝統的な職人技術が息づいている。
バレエシューズをファッションアイテムとして確立した功績は大きく、今回はパリ本社で、プロダクト・マーケティング・ディレクターのアガト氏に、ブランドの歴史から製法まで詳しく話を伺った。

PROFILE

アガト・ブロンデル・ドゥ・ジョワニー(Agathe Blondel de Joigny)

Repetto プロダクト・マーケティング・ディレクター

伝説の女優が生んだ、街履きバレエシューズの誕生

創業78年を迎える「Repetto」の誕生秘話を教えていただけますか?
「Repetto」の物語は、一人の母親の愛から始まりました。設立者のローズ・レペット(Rose Repetto)は、主役を飾るプリマバレリーナであり振付師だった息子ローラン・プティ(Roland Petit)のために、特別な履き心地のダンスシューズを作っていました。
息子からの勧めを受け、彼女はパリ国立オペラ座近くに小さなアトリエを開設。そこで誕生した「Repetto」のシューズは、過酷な練習で足を痛めるダンサーたちの間で口コミが広がり、アトリエはたちまち活気に満ちあふれました。
ファッションブランドとしての転機はどのように訪れたのでしょうか?
創業から数年後、一人の若い女性ダンサーがアトリエを訪れます。「Repetto」のダンスシューズの愛用者だった彼女は、同じような快適さを持つ街履き用のシューズを作ってほしいと依頼したのです。
その人物こそ、後に世界的に有名な女優となるブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)でした。
ダンスシューズの専門家だったローズにとって、これは大きな挑戦でしたが、彼女はその依頼を快諾。官能的なカーマインレッドの、しなやかで履き心地のいいバレエシューズを作り上げました。
このシューズは、ブリジットが主演を務めた映画『素直な悪女』で使用され、センセーションを巻き起こします。世界初の街履き用バレエシューズとなったこの伝説的な一足は、現在も"サンドリオン"の名で「Repetto」のアイコンモデルとして愛され続けています。
Cendrillon Ballerinas
「Repetto」の原点には、身近な人々への想いがあったのですね。
ローズは多くのダンサーやアーティストと深い絆を築いていました。特に印象的なのは、息子ローランの妻で、"ショービジネス界の女王"と謳われたジジ・ジャンメール(Zizi Jeanmaire)との関係です。
一日中のリハーサルとキャバレーでの終夜のダンスをこなすジジは、ローズにジャズダンスに適したシューズを依頼。これが、現在も定番モデルとして愛される"ジジ"の誕生につながりました。
その影響力は今なお健在で、パリオリンピック2024の開会式では、レディー・ガガが"Mon Truc en Plumes"でジジへのオマージュを捧げたことも記憶に新しいですね。
"ジジ"は現在、ジェンダーレスなレースアップシューズとして展開されていますが、その変遷も興味深いものがあるのでしょうか?
Zizi Oxford Shoes
"ジジ"が誕生してから数年後の70年代に、男性の間でも人気を博しました。なぜなら、フランスの俳優兼歌手で、ファッションアイコンだったセルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)が"ジジ"を着用していたからです。
その出合いは意外なもので、シューズが嫌いでいつも裸足で生活をしていた彼に、当時の妻で女優のジェーン・バーキン(Jane Birkin)が、ヴィンテージショップで見つけた"ジジ"をプレゼントしたのだそう。
彼は快適なそのシューズを大変気に入り、30足以上もコレクションしていたほどです。美術館として開放されているセルジュのかつての自宅には、シューズクローゼットにたくさんの"ジジ"が並んでいるんですよ。

伝統と革新が織りなす、魅惑のバレエシューズ

象徴的な定番モデルは、誕生当初のデザインを継承しているのでしょうか?
基本的にはオリジナルデザインを守りながら、現代のニーズに応える進化を遂げています。
たとえば"サンドリオン"は、クラシックなラウンドトゥに加え、シャープなスクエアトゥや、ストラップ付きの"ジョージアナ"、3cmヒールの"カミーユ"など、バリエーションを広げてきました。都市生活に適応させるため、ラバーソールなどデイリーユースな機能性の高い素材なども展開しています。
さらに季節ごとに新しい色や素材を提案し、タイムレスな形状に現代的なエッセンスを加えています。最新作の"テニス シルク"は、バレエシューズとテニスシューズを融合させた斬新なデザイン。サテンのレースと薄手のソール、足にフィットするプリーツが特徴です。
また、“アトリエ レペット”というサービスでは、ブランドのノウハウを駆使した特別な体験を提供しています。250種類以上の素材から選ぶことができ、“サンドリオン”をはじめとした代表的なモデルが、あなただけのユニークなシューズへとカスタマイズを実現します。日本での次回の“アトリエ レペット”のサービスは、4月に新宿伊勢丹でご利用いただける予定です。
ブランドの拡大に伴い、生産体制にも変化があったのでしょうか?
1967年、ドルドーニュ地方サンメダール・デクシドゥイユに自社工場を設立。現在もここで、熟練職人による手作業での生産を続けています。工場近くには職人育成のためのトレーニングスクールも併設し、伝統的な技術の継承に力を入れています。
特に重要なのが、創業者ローズが考案した"スティッチ&リターン製法"です。靴底を表裏逆の状態で縫ってからひっくり返すこの独自の製法は、ダンスシューズの構造を応用したもの。高品質なレザーと組み合わさることで、比類のない柔軟性と快適さを実現しています。
「Repetto」は、バレエの世界と真摯に向き合い続けてきた唯一のブランド。その精神は、"スティッチ&リターン製法"と職人技術というかたちで、今もブランドのDNAとして受け継がれています。

ISSEY MIYAKEやYohji Yamamotoと育んだ、新たな可能性

ISSEY MIYAKEとのコラボシューズ
「Repetto」は多くのファッションブランドとのコラボレーションを通じて、ラグジュアリーブランドとしての地位を確立してきましたね。印象に残るプロジェクトを教えていただけますか?
「Repetto」の歴史の中で特に印象深いのは、2000年に実現した「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)」とのプロジェクトです。当時、ブランド間のコラボレーションはまだ珍しく、これが「Repetto」にとって記念すべき第一歩となりました。
その後、「Yohji Yamamoto(ヨウジ ヤマモト)」や「COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)」など、日本の名だたるブランドとの協業が続き、日本との深い縁を感じています。
最近では、2024年にパリ発ブランド「Jacquemus(ジャックムス)」、2025年に「Marine Serre(マリーン セル)」とのコラボレーションを行いました。
Marine SerreとコラボしたRepetto
ジャックムス × レペットのコラボレーションでは、レペットのタイムレスなリシュリューシューズ“Zizi”を再解釈しました。スクエアトゥと円形のヒールを加えることで、幾何学的な遊び心を取り入れつつ、メゾンのバレエの伝統に深く根ざしたオリジナルのポワントシューズを想起させるデザインに仕上げています。
『Repetto x Jacquemus』Zizi Jacquemus。この新たなデザインは、フランス・ドルドーニュにあるレペットの工房で、独自のステッチ・アンド・リターン技法を用いて製造され、アンドロジナスなラインが特徴。卓越した職人技とビジョナリーな精神を称える一足
マリーン セル × レペットのコラボレーションは、両者の世界が調和したダンスのような作品です。このカプセルコレクションでは、レペットの魅力的な2つのシューズスタイルが展開されています。エッジの効いた"Lilouh"(ブラック、シルバー、ファイアレッド)と、マリーン セルの象徴的な"All Over the Moon"プリントを施したタイムレスな"Camille"(デニム、ブラック、ホワイト、ファイアレッド)が登場します。
『Repetto x Marine Serre』Camille Ballerinas
このコラボレーションの中心には、両ブランドが共有する「サステナビリティ」という価値観があります。マリーン セルの革新的なアップサイクル素材の活用は、フランス製にこだわるレペットの職人技、そして創業者ローズ・レペットによって開発された唯一無二の「ステッチ・アンド・リターン」製法と完璧に調和し、比類なき柔軟性を生み出しています。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
「Repetto」は、ダンサーの要望を叶えるため進化を続けてきたように、世界中のお客様の現代のニーズやライフスタイルに応じて、快適で機能性が高く、時代を超えて愛される高品質の製品を届けていきます。
まだ発表できなくてもどかしいですが、みなさんに喜んでもらえるコラボレーションや新作発表が控えているので、楽しみに待っていてください。

Text by ELIE INOUE

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