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なぜ、STAIN NOTE(ステインノート)は 存在しなかった音楽マーチャンダイズを創るのか?
ここ数年、バンドTシャツをはじめとする音楽マーチャンダイズの価値が高まっている。とりわけ1980〜90年代に制作されたツアーTシャツやプロモーション用のアイテムは、絶大な人気を誇り、ヴィンテージ市場において高値で取引されている。
そんなブームの中で、ひときわ異彩を放つブランドが、2025年に日本で始動したSTAIN NOTE(ステインノート)である。同ブランドは、実在するバンドやミュージシャンをモチーフとせず、当時、存在していてもおかしくなかった、「架空のマーチャンダイズ」としてのTシャツを制作している。本記事では、STAIN NOTEのチームへのインタビューを通して、その思想と表現の背景を紐解く。

現代のバンドTシャツブームへ問いを投げかける
ステインノートは、2024年に構想され、2025年8月にローンチした。「近年、ヴィンテージのバンドTシャツはファッションアイテムとしてだけでなく、その資産的価値にも注目が集まっています。その一方で、『価値がある=カッコいい』という空気が強くなっていて、その点に違和感がありました。本来は、着る人それぞれの感覚やアイデンティティと結びついた存在だったはずですから」
コンセプトはSpeculative merchandise(架空のマーチャンダイズ)
そこでステインノートは、架空の音楽マーチャンダイズという発想へと舵を切った。「1970〜90年代のソウルやディスコ、R&B、ヒップホップといった音楽をメインにしたインスピレーション源に、『実際のヴィンテージには存在しないけれど、あったらいいな』と思えるTシャツをプロデュースしています」

ブランド名の由来にも、音楽の文脈が色濃く反映されている。
「ジャズやブルースの文脈において、感情の揺らぎや緊張感を表すブルー・ノート(Blue Note)に由来したブランド名になります。STAIN(シミ)というワードは、一見ネガティブに捉えられがちですが、私たちはそれを、時間や経験を通して刻まれたカルチャーとしての功績や、表現の“痕跡”として捉えています」
ステインノートにとってのヴィンテージとは?
このブランドの表現を理解するうえで欠かせないのが、ヴィンテージの音楽マーチャンダイズに対する独自の視点だ。「ライセンスを取得して再現すれば、オリジナルへの正当な還元が生まれるのは事実です。ただ、私たちは当時の背景や文脈を読み取ったうえで、『今あったらいい』と感じる余白や、まだそれほど注目されていないジャンルに光を当てていきたいんです」
実際にラインナップを見ていこう。とりわけ支持を集めているのが「Pop Jody Rap」だ。
「シカゴ出身の女性シンガーが1989年にリリースしたシングルのジャケットをモチーフに制作したものです。ポップスとラップを融合させた“Pop Rap”という、音楽シーンにおける当時の新たな潮流を表現しました」

「BAUHAUS」は、音楽ファンの間で知られるフレーズである “XXXX is a group!” を元ネタにした一枚だ。
「有名なフレーズを “Bauhaus is a group!” に置き換え、『バウハウスは建築学校ではなく、バンドの方だよ』という、かつてありえたかもしれない架空の台詞を創作し、グラフィックにしました」
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「LISTEN TO」はデザイナーとしての思い入れが特に強い一枚だという。
「モチーフは、世界でもっとも有名なバンドが1970年代に発表したアルバムの公式Tシャツです。そのTシャツを見た瞬間、彼の音楽が脳内で再生されるような強烈な存在感を覚えました。そのデザインと、同年代に活躍したあるバンドの女性ボーカルのまなざしを掛け合わせました」

往年のバンドTシャツを参考にしたボディ設計
こだわりはグラフィックだけでなく、ボディそのものにも及ぶ。既存のボディを使うブランドが多いなか、ステインノートはいちから制作したオリジナルを使用する。「あくまでカルチャーを題材にしたファッションブランドなので、日常使いしやすい着心地や現代のスタイリングにとり入れやすいシルエットにする必要があったからです」
ボディの質感は1980~90年代のバンドTでよく使われたONEITA(オニータ)を参考にしたという。
「同年代の他社の既製品ボディと比べても、オンスがあって地厚でありながらも、質感はなめらかでしっとりしているんです。これなら、プリントをしっかり受け止めて、日常的に着続けられるTシャツを作ることができると思いました」
シルエットの基準としたのは、ヨーロッパ企画のSCREEN STARS(スクリーン・スターズ)だった。
「ヨーロッパ企画のボディは、US企画に比べて肩幅や身幅が広めで、今の気分にマッチします。また、ネック部分のリブに関しても、太めであるのにかかわらず、縮率が強すぎないため、首元に圧迫感がありません。袖口や裾のステッチ幅が広めにとられている点も、こなれて見えるんです。経年変化によって裾がやや短くなって、自然なボックスシルエットに近づいた個体をサンプルにしました」

着続けるほどに雰囲気を増すプリントのこだわり
経年変化もステインノートのTシャツの魅力のひとつだ。「新品の状態では生地のハリやプリントの発色がはっきりしていますが、洗濯を繰り返すことで生地は少しずつ薄くなり、色褪せていきます」
プリントにも徹底的にこだわり、シルクスクリーンを採用した。
「デジタルプリントよりも手間はかかりますが、デザインが持つ重みや深みまで感じてほしいと思い、表面にざらつきが出て雰囲気のあるシルクスクリーンを選びました。着続けるにつれて徐々にクラックが入り、発色のトーンも落ち着いていきます」

音楽やカルチャーと出会うための入り口
ステインノートのTシャツは、決して安価ではない。だがその分だけ、デザインやグラフィック、細部に至るまで、長く着続けたいと思わせる価値が付与されている。「レコードをジャケットのデザインに惹かれて手に取るように、直感で選び、着ているうちに、そのテーマとなったバンドやミュージシャンの存在を知り、さらに好きになっていく。そんなTシャツが理想です」
存在しなかった音楽マーチャンダイズは、着る人の日常の中で新たなカルチャーと結びつき、やがて未来のヴィンテージへと変わっていく可能性を秘めている。ステインノートはTシャツという媒体を通して、音楽との出会いそのものを創り出している。
Text by Ryota Osujo















