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革靴のような内羽根でエレガントな 「WAKOUWA(ワクワ)」は ローテクスニーカーと呼べるのか?

2024.12.27
US NAVYに支給されたミリタリー仕様のデッキスニーカーをデザインソースに構想から3年、12回もの試作を重ねて完成したスニーカー「WAKOUWA(ワクワ)」。フィッティングにこだわった「ANATOMICA(アナトミカ)」肝いりのスニーカーが誕生するまでにはどんなストーリーがあったのか、そしてローテクスポーツブランドと標榜するプロダクトは果たして本当にローテクなのかを、サーティーファイブサマーズのPRである信岡淳さんに伺った。

巨匠2人の他愛もない会話がきっかけで誕生したスニーカー

「欣児の一番好きなスニーカーは?」
 
「一番美しいと思うのは、あのデッキシューズだね!」
 
という「ANATOMICA」のピエール・フルニエ氏とサーティーファイブサマーズの寺本欣児氏の他愛もない会話がきっかけで生まれた「WAKOUWA」。2人の意見が一致し意気投合したことで、まったく新しいローテクスポーツシューズの製作がスタートしたのだが、やはり一筋縄ではいかなかったようだ。信岡さんは当時の製作過程の様子をこう振り返る。
ピエール・フルニエ。1944年フランス生まれ。1994年に「ANATOMICA」の立ち上げ、世界のアパレル業界にもっとも大きな影響を与えた人物のひとり。サーティーファイブサマーズの寺本欣児氏と二人三脚で「WAKOUWA」を作り上げた
「左右非対称な甲の峰のライン、親指から小指にかけて弧を描く足本来のかたちに沿うようなシェイプ、そして土踏まず部分が盛り上がったアーチサポート……ラスト(木型)の修正だけで、じつに8回。話が持ち上がって完成するまでに30ヶ月もの期間を要しました。
 
ピエール自ら自身を“デビル・オブ・ディテール”というほどディテールにこだわり、細かい修正を繰り返していました。欣児さんも見るに見かねて最後はピエールを工場まで連れて行って、直接やり取りさせていましたよ(笑)」
 
ラストを作り直すこと8回。3年にもわたる期間を経て、完成した「WAKOUWA」。1938年製の海軍用のボートシューズがベースとなっている
完成したシューズのインソールにも刻まれる“SCIENTIFIC SHOE FITTING”を提唱する、ピエール氏が目指すアナトミカルな構造をかたちにしようと思えば、時間がかかるのも仕方がない。
 
そして完成したのが1938年製の海軍用のボートシューズを再現したブラウン×ブラックのカラーパレット、1960年代後半~70年代中盤のヴィンテージデッキシューズから取り込んだディテール、型から起こした波模様のソール、そしてヴァルカナイズド製法といわれる、あえてスニーカー最古の製法をつかった底付けだった。
ファーストサンプルから12回の試作を重ねて完成した「WAKOUWA」。オーソペディックシューズ特有の“インサイドストレート・アウトカーブ”の形状を採用。クッション性の高いソールを使用する。20,900円(税込)
「ゴム底の強度や弾性を引き出し、フットウエアとしての一体感を高め、型崩れがしにくいといわれるヴァルカナイズド製法を選んだところはもちろん、ラストから作るスニーカーなんて考えられなかったので、それも『WAKOUWA』ならではのこだわりですね」
 
“神は細部に宿る”という言葉どおりのシューズがここに誕生したのだ。

ブランド名の由来は欲しくてたまらなかった木製のおもちゃから

「WAKOUWA」というブランドネームにも強い思い入れがあったというピエール氏。ブランド名の由来についても信岡さんはこう語ってくれた。
 
「『WAKOUWA』というのはスイス製の木のおもちゃの名前だったそうです。ピエールが子どもの頃、パリにある老舗百貨店のショーウィンドウで見た『WAKOUWA』が忘れられず、買ってもらいたかったけれど当時は買ってもらえなかったそうで、いつか大人買いしてやろうと企んでいたそうです。
ピエール氏が子どもの頃、喉から手が出るほど欲しかったスイス製の木のおもちゃ「WAKOUWA」。シューズの販促のために限定で復刻させた。(信岡さん私物)
ただ大人になってみると、そのブランドは消滅していていました。その後、ピエールは『WAKOUWA』の商標登録に成功します。犬がメインキャラクターとされた『WAKOUWA』という玩具と、犬の肉球から発案したソールのストーリーが犬でつながり、ヒールパッチにもちゃんと犬のキャラクターがついているんですよ」
 
思い入れのあった商標をブランド名に冠したことからも、このシューズに対するピエール氏の本気度が伺える。
シューズのヒールパッチにも犬のキャラクターがプリントされている
そんな、ヴィンテージ好きが喜ぶディテールを極めた「WAKOUWA」は評判を呼び、ついには日本の巨匠まで動かした。その時のことを信岡さんはこう続ける。
 
「実はあの世界的デザイナーの三宅一生さんもわざわざ『ANATOMICA』のショップまで足を運んでくださり、『WAKOUWA』を買っていかれたそうです。後日、気に入ったからコラボしたいというお話までいただき、そのコラボシューズをISSEY MIYAKE 2020-21AWパリコレクション」のランウェイでも採用してくださったのです。
 
世界に冠たるブランドなので、報告したら俺よりもピエールが驚いていたと欣児さんが話していましたね」
 
その完成度の高さは、日本から世界に名を轟かすデザイナーさえも心酔させた。

「WAKOUWA」はローテクシューズなのか

ここでひとつの疑問が浮かんだ。
 
「WAKOUWA」はピエール・フルニエ氏と寺本欣児氏が意気投合し、「ローテクスポーツブランド」を作ろうとスタートしたブランドだが、シューズ自体は果たして本当にローテクなのだろうかということだ。その疑問に関しても信岡さんはこう答えてくれた。
インソールにはピエール氏の哲学である“SCIENTIFIC SHOE FITTING”が刻まれている
 「確かに『WAKOUWA』はフィッティングを追求するためにナローなラストを目指していました。ですが、それだけでなく“アーチサポート”という部分も重視しています。それはピエールも欣児さんも『オールデン』のモディファイドラストを経験しているからにほかなりません。
 
2人の中で最終的には“アーチサポートしてくれるスニーカーがあったらいいね”というところで落ち着いていると思うので、単純にローテクスポーツシューズではなくなっているのは事実です」
つま先が地面につかず反り返っているところも、革靴のようなラストを採用している証しでもある
もはやローテクではなく、アーチサポートをするハイテクな機能も備わっているのが、細部のこだわりだけではない「WAKOUWA」の魅力のひとつでもあるのだ。
 
実は来年に向け、大きなコラボの話も届いているという。
 
「まだ詳細はお話しできませんが、いくつかのコラボ企画も進んでいます。ただ、フィッティングの面では他のシューズと一線を画すので、まだ履いたことがない人は一度足を入れてもらいたいですね」
革靴ならオックスフォードといわれる内羽根デザインもエレガント。スニーカーらしからぬ端正な顔立ちだ
ファンが喜ぶスペックをてんこ盛りにしながらもローテクに見せかけて、しっかりと機能性を持たせたシューズの魅力はまだまだ語り尽くせない。実際に履いてみて、その魅力を確かめてほしい。
 

PROFILE

信岡 淳(のぶおか じゅん)

サーティーファイブサマーズ プレス
愛媛県松山市出身。高校卒業後は地元の古着屋でバイトし、買い付けなどにも携わる。服飾専門学校を卒業後、レディスのOEM会社に入社し、モノ作りのイロハを学ぶ。30歳のときにサーティーファイブサマーズに入社。現在は「アナトミカ」や「ロッキーマウンテン フェザーベッド」、「ワクワ」のPRをメインに幅広く活躍中。

Text by Yasuyuki Ushijima(NO-TECH)

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