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小さいバッグに入る、遮光率100%生地を使用した日傘 Wpc.「遮光切り継ぎタイニー」ヒットの理由

2026.03.12
近年、猛暑の影響もあり、日傘は性別や年齢を問わず「持ち歩くことが当たり前」のアイテムとして定着した。そんな中、機能性とファッション性の両立で支持を集めているのが、株式会社ワールドパーティーが展開する傘ブランド「Wpc.」だ。特に、同ブランドの代名詞とも言える「遮光切り継ぎタイニー」は、2019年2月の発売以来、累計販売数130万本を突破するロングセラー製品となっている。
なぜ、この小さな四角い傘がこれほどまでに支持されるのか。その背景には、緻密な構造設計と素材へのこだわりがあった。今回はWpc.の広報担当・中村友香さんに、開発の裏側を聞いた。

PROFILE

中村 友香(なかむら ゆか)

株式会社ワールドパーティー Wpc.事業本部 セールスプロモーション部 広報

2018年に入社。EC部を経て、21年より現職。傘ブランド「Wpc.」「UVO」などの広報を務める。

「脱・甘さ」から始まった機能美への転換

2018年当時、「遮光切り継ぎタイニー」の開発が始まった頃、ファッションとして考えると日傘はまだ一部のスタイルに紐付いたアイテムという印象が強く、特定のスタイルのための装飾品という側面が強かった。
しかし、Wpc.の開発チームは、気候変動による暑さの激化に伴い、日傘はより広い層に必要とされる存在になると見ていた。
「当時は、フリルや刺繍といった可愛らしいデザインが主流でした。しかし、もっとシンプルに、マニッシュにかっこよく日傘を持ちたいという潜在的なニーズがあるのではないか、と私たちは考えました」
そうした発想から、機能とデザイン性、携帯性を追求した結果、たどり着いたのがあの特徴的なスクエアフォルムだった。
コンパクトな四角いフォルムが特徴的な晴雨兼用折り畳み傘。カラーバリエーションも豊富。遮光切り継ぎタイニー 3,850円(税込)~
日傘を「装飾品」から「必需品」へ。その転換が、「遮光切り継ぎタイニー」の出発点となったのだ。

スクエア型がもたらした携帯性の革新

「遮光切り継ぎタイニー」の最大の特徴は、四角い(スクエア)形状にある。一般的な折り畳み傘が円筒形であるのに対し、この製品はフラットな長方形に収まるよう設計されている。
手のひらサイズに収まるコンパクトサイズ
これは、単なるデザイン上の差別化ではない。現代人のライフスタイルに最適化された、機能的な必然性から生まれたものだ。
「開発当時、業界ではまだ珍しかったスクエアタイプの骨組みを採用しました。工場とやり取りをするなかで、このコンパクトな骨組みに出会ったことが大きな転機でした」
中村さんが語るように、この形状の最大のメリットは「収まりの良さ」にある。スクエア型の傘は、バッグの隙間やポケットに入れてもシルエットを崩さない。
「当初はそこまで詳細な使用シーンを完全に予測していたわけではありませんでしたが、結果的にこの形状が現代の持ち運びニーズに合致したのです」
近年、バッグの小型化が進み、荷物を最小限に抑えたいという志向が高まっている。その需要とも重なり、多くの支持を集める理由となった。
小さいカバンにも収納しやすいスクエア型コンパクトサイズ
構造的には特殊な骨の形状を採用しているものの、生地の張り方自体に特筆すべき点はないという。しかし、この「四角く畳める」という一点において、既存の傘とは一線を画す携帯性を実現した。

薄さと遮光率100%を両立させるコーティング技術

携帯性を追求する上で、避けて通れないのが「生地の厚み」の問題だ。遮光性や遮熱性を上げるには厚くする、あるいは多層にするのが定石だが、それでは折り畳み時のサイズや重量が増してしまう。
「遮光切り継ぎタイニー」は、手のひらに収まるサイズ感を実現しながら、UVカット率・遮光率ともに100%というスペックを誇る。その鍵となるのは、生地の裏面に施されたポリウレタンコーティングだ。
「ベースとなるポリエステル生地自体は、軽量化のために薄いものを選定しています。その上で、裏面にポリウレタンコーティングを施すことで、光を物理的に遮断し、100%の遮光率を実現しています」
品質を左右するのはこのコーティング工程にある。
厚く塗れば遮光性は確実に担保できるが、その分生地は重くなる。逆に薄くしすぎれば、ピンホール(微細な穴)が発生し、光が漏れるリスクが高まる。
「100%の遮光率を担保できるギリギリのラインを見極め、コーティングの回数や量を調整しています。これにより、巻いたときに太くならず、かつ必要な機能性を維持できるのです」
さらに、裏面は「黒」で統一。黒は光を吸収する特性があり、地面や壁からの照り返しをこの黒い裏地が吸収することで、顔への反射を防ぎ、体感温度を下げる効果が期待できる。
裏地には黒色のポリウレタンコーティングが施され、照り返しの光も吸収してくれる
薄い生地に精密なコーティングを施し、さらに色の特性を利用して遮熱性を高める。この素材へのアプローチが、コンパクトさと高機能を両立させる技術的な基盤となっている。

5段構造の骨組みと耐久性のバランス

日傘としての性能に注目が集まりがちだが、この製品は「晴雨兼用」。折り畳み傘の設計において、常に課題となるのが「携帯性」と「耐久性」のトレードオフだ。小さく軽くすれば強度が落ち、強度を求めれば、大きく重くなる。
「遮光切り継ぎタイニー」はこのジレンマに対し、「日常使いの携帯性」により重きをおき明確な回答を出している。
採用されているのは、親骨47cmの5段式の骨組みだ。一般的な3段式よりも収納時の全長を圧倒的に短くすることができる。
もちろん、ただ小さいだけではない。中村さんは、軽量化と耐久性のバランスについて次のように説明する。
「軽くするために骨の本数を減らせば、確かに数値上の重量は減ります。しかし、それでは風に対する強度が落ちてしまう。私たちは、日常的な風雨に耐えうる最低限の耐久性を確保しつつ、可能な限りコンパクトにすることを重視しました」
親骨47cmというサイズは日傘としては小ぶりだが、その分受ける風の抵抗が少なくなるというメリットもある。
「大きい傘は体を広く覆えますが、その分風の影響を受けやすく、強風時には煽られるリスクがあります。このサイズ感は、携帯性の良さはもちろん、風を受け流しやすいという点でも理にかなっているのです」
毎日持ち歩くバッグに常備し、必要なときにさっと取り出せる「都市生活者のためのギア」。その思い切りのいい設計思想が、製品のキャラクターを明確にしている。

ユーザー体験を向上させる、細部のデザイン

機能的なスペックだけでなく、実際に使う際のストレスを軽減するための工夫も随所に施されている。その一つが、持ち手に付けられたシリコン製のストラップだ。
通常、ゴム紐や共布が使われることが多いが、この製品では伸縮性のあるシリコンリングを採用している。
ロゴ入りのシリコン製のストラップ
「シリコンストラップは、この商品で初めて採用しました。指にかけやすく、滑りにくいのが特徴です。また、店頭の什器に陳列した際にも、ゴムのように伸び切ってしまうことがなく、美しい形状を維持できます」
水ぬれや汚れに強く、手入れが容易である点もシリコン素材のメリットだ。
また、傘をまとめるネームバンド(ベルト)にも工夫がある。一般的なものよりも太めに設計されており、面ファスナーの面積も広い。
太く巻きやすくなっている留め具
「コンパクトな傘は生地が薄く骨が多いため、どうしても畳むのが難しくなりがちです。そこでベルトを太くすることで、ざっくりと巻いても留めやすくしました。これにより、収納時のストレスを軽減しています」
そして、デザインのアイデンティティとも言えるのが、「切り継ぎ」という手法だ。これは2種類の生地を縫い合わせる技法で、単調になりがちな日傘のデザインに視覚的なアクセントを加えている。
同じカラーでも必ず「切り継ぎ」のひと手間が施されている
「1枚の生地で作る方が、製造工程としては遥かに簡単です。しかし、ただの無地の傘では面白みがない。あえて手間のかかる切り継ぎを採用し、バイカラーにすることでファッションアイテムとしての存在感を持たせました」
たとえブラック1色のモデルであっても、黒い生地同士を切り継いでデザインにアクセントを加えているという。この細部へのこだわりが、製品に奥行きを与えている。

進化し続ける日傘「タイニー」の未来

発売から数年が経過し、市場環境も大きく変化した。男性の日傘利用が一般的になり、低年齢層への普及も進んでいる。Wpc.は、この変化に合わせて「タイニー」シリーズのアップデートを続けている。
その一つが、さらなる軽量化を追求した「エアリアルタイニー」だ。
「遮光切り継ぎタイニーも約210gと十分に軽量ですが、さらに軽さを求める声に応えて開発しました。最軽量モデルでは約147gを実現しており、持っていることを忘れるほどの軽さです」
また、バッグの外に取り付けられるカラビナ付きのモデルなど、持ち運びのスタイルに合わせたバリエーションも拡充している。最後に中村さんは、今後の展望について次のように語ってくれた。
「これからは、中高生などより若い世代にも日傘の文化を広げていきたいと考えています。そのためには、機能性はもちろん、手に取りたくなるようなデザインや、新しい持ち方の提案が必要だと考えています」
かつて「日用品」だった日傘を、毎日持ち歩ける“ギア”へ。Wpc.の「遮光切り継ぎタイニー」は、スクエアに畳める骨組みという発想で携帯性を底上げし、薄手生地と精密なコーティングで遮光率100%を成立させた。さらに、太めのネームバンドやシリコンストラップといった細部の設計が、使うたびに生まれる小さなストレスを減らしていく。
バッグの片隅に収まる四角い一本は、猛暑の時代の“当たり前”を更新したプロダクトだ。タイニーはこれからも、日傘を「必要なときだけ使うもの」から「常に持っていたいもの」へと押し上げていくだろう。

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