2022.10.19

「ファッションサブスクはECの次にくる消費変革」 大丸松坂屋百貨店が展開する「アナザーアドレス」の可能性

近年注目を集めるファッション分野のサブスクリプションサービスに、百貨店として初めて参入した株式会社 大丸松坂屋百貨店。同社は2021年3月、女性向けファッションレンタルサービス「AnotherADdress(アナザーアドレス)」を開始した。
 
会員数は元々の想定であった初年度1,000人を大幅に超え、新規入会の制限を行うまでとなった。現在、会員数は約10,000人、累計レンタル数は約50,000着となっている(2022年9月時点)。
 
サービス開始から1年半以上が経過し、取扱ブランドや商品の拡充を行うとともに、今年10月からは新規入会制限を解除。さらに、新たなサービスプランも発表するなど、再び注目を集めている。
 
そこで今回、同社のDX推進部 事業責任者 田端竜也さんに、アナザーアドレスの今後の展開や、ファッションサブスクの可能性などについて聞いた。

「百貨店初」の取り組みを始めた背景

そもそも、同社が百貨店初となるファッションサブスク「アナザーアドレス」を開始したのは、「20年前のEC拡大」に対する経営判断の失敗にあったという。
 
「ECで高級服は買うものではないという当時の判断のもと、残念ながら弊社グループは乗り遅れてしまったのが大きな痛手でした。そのなかで、今回は時代の変化に乗り遅れないように黎明期からリスクをとって参入するという判断をしました」
 
そして、サブスクサービスを事業として展開するにあたり、ファッション産業の中心にいる百貨店として、実現すべき「2つの世界」が背景にあったと語る。
 
「まず、一つ目がサスティナブルなビジネスモデルへの転換です。大量消費・大量生産の中で成長してきた弊社は、責任を持って、お客様、洋服、環境の三方にとって持続可能なビジネスモデルを想像しなければいけないと考えています。
 
二つ目がファッションのもつ、人を楽しく元気にする、エンパワーする力を改めて日本のマーケットに伝えたいと考えました。バブル以前、大丸松坂屋は欧米の最先端のファッションを日本に紹介し、PARCOは日本の才能あふれるデザイナーを発掘・応援することで成長してきました。
 
しかし、バブル以降日本の景気が低迷するなかで、その力が失われ、今多くの日本人がデザイナーのファッションに触れる機会が減り、その力を感じられなくなっています。その課題に対して、改めて多くの人にデザイナーが想いを込めて作った洋服を纏う機会を創出し、楽しんでもらいたいと考えています」

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アナザーアドレスの利用状況

そうしたなかで、アナザーアドレスは「月額11,880円で3着レンタルができるスタンダードプラン」のみで開始。今年10月にはユーザーからの「月額1万円を超えると利用を躊躇してしまう」「月に3着は多い」といった声を反映して、「月額5,500円で1着レンタルができるライトプラン」を導入した。ユーザーは20~80代の女性と幅広いが、40代の都市圏で働く層が中心となっている。
 
「最も動きのよいカテゴリーはワンピースとなっています。また、仕入自体の割合は低いですが、バッグの動きも非常に好調です。ブランドで見ると、ADORE(アドーア)、CERFORD(セルフォード)、WEEKEND MaxMara(ウィークエンドマックスマーラ)などが多く借りられています。回転のよさでみると、Maison Margiela(メゾンマルジェラ)、MARNI(マルニ)、MM6(エムエムシックス)などのインポートブランドが人気です。
 
シーンは、結婚式や卒入園式などもありますが、それよりも女子会や商談、デート、旅行などで使っていただいているようです」
 
この1年間で、アナザーアドレスの利用者と、同社の既存の百貨店顧客で洋服を購入した会員との被りは「8%」だったことから、新規顧客の獲得に繋がった。そのため、当初は「買う」と「借りる」の関係性を「ディスラブティブな関係」と捉える社員もいたが、そうした声は聞こえなくなったという。
 
今後は、ブランドやアイテムの拡大を引き続き強化するとともに。中期的には「カテゴリーに参画していきたい」と語る。
 
「例えば、ファッションでいえばメンズ、キッズ、スポーツ/アウトドアウェア、さらにはアートやスポーツギアなど他のモノ領域です。最終的に『モノのサブスクのプラットフォーマー』を目指しています」

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百貨店にしかない2つの強み

現在、ファッションサブスクは新たなビジネスとして、ベンチャー企業などでも展開されている。そのなかで、老舗百貨店がファッションサブスクに参入する強みはどこにあるのだろうか。
 
「大きく二つあると考えています。一つ目が、ブランド交渉の観点です。ブランドビジネスは名前の通り、非常にブランディングに気を遣っています。そのなかでまだまだ黎明期のサブスクビジネスの参画をブランドさん側が意思決定するのは簡単ではありません。その状況下で弊社の今まで培った信頼やネットワークはベンチャーにはない強さを発揮しています。
 
アナザーアドレスでは、いわゆる交渉が難しいブランドから時間をかけて交渉してきました。もし、スタートにあたって交渉しやすいブランドから始めるとブランドの格を非常に気にする業界ですので、今の圧倒的に差別化できているブランドラインナップができなかったと思います。
 
もう一つが資金力です。どうしても服というモノを扱う以上、寿命は来ますし、また業界は店頭に出る1年も前に買付を完了させる商流です。そうなると、将来の会員数の成長を見越して非常に多くの服を先行して買い付ける必要があります。
 
1,000人程度の会員数なら、ベンチャーでも買付は可能ですが、数万人を見越して買い付けると、数十億の買付量となります。その資金を調達するのは簡単ではないと思いますが、弊社の場合だとそこに対するリスクテイクをする体力があり、その点は非常に大きいと思います」

 ファッションサブスクのこれから

今後、国内外を問わず、さらなる広がりが予想されるファッションサブスク。同社はこの領域についてどのように認識し、取り組もうと考えているのだろうか。
 
「我々はサブスクリプション/シェアリングといった領域はECの次にくる大きなファッション消費変革になると考えています。ただし、決して買うことをディスラプトするわけではなく、その手前、メディアとコマースの間の位置になっていくべきであると考えています。
 
『買ったけどほとんど着なかった』『着てみたかったがお財布事情/クローゼットの大きさ等で手が出ない』といった洋服にまつわる悩みを解決し、本当に長く大事に着られる洋服/ブランドをみつけてもらうツールとして、消費の一部に組み込まれて行ってほしいと思います。
 
そうすることで、たくさんの洋服をすぐに捨てたり、セールで無理やり売り切ったりする今の持続可能性に課題のある商習慣を少しでも変える力になれたらと思います。
 
今後も他社で複数のサービスが立ち上がってくると思いますが、黎明期のビジネスですので、あまり競合ととらえず市場を盛り上げるパートナーとして連携していければと思います。その上で、しっかりとマーケットが確立した先では、できればNo.1の企業・サービスとして存在感を発揮できればと思います」
 
また同社は、三菱ケミカル株式会社、株式会社BOTANIC、株式会社マイトデザインワークスの3社と協働し、新たな洋服づくりへの挑戦をスタートすると発表。
 
サスティナブルなオリジナル生地を開発し、アナザーアドレスの取り扱いブランドが、その生地を使用した洋服を展開するとのことだ(2023年3月頃を予定)。
 
サスティナビリティと新規事業の両立を目指す、アナザーアドレスのこれからに注目したい。

#Sustainability
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