SUQQUやRMKなどのブランドを擁する、株式会社エキップが展開するスキンケア&ライフスタイルブランド「athletia(アスレティア)」。同社において約17年ぶりに新たにデビューしたブランドで、2020年にスタートした。
athletiaの最大の特徴は、製品だけでなくブランド活動全体が環境に配慮している点だろう。美容部員が着用するユニフォームもその1つ。2022年12月にデザインや素材が一新され、環境配慮型素材を使ったよりサステナブルなユニフォームとなった。今回は同社のathletia コミュニケーション マネジャーである衣川沙織さんに話を聞いていく。
株式会社エキップ
athletia コミュニケーション マネジャー
外資系化粧品会社でさまざまなラグジュアリーブランドのPRを経験。16年の株式会社エキップ入社後、社内他ブランドでのPRマネージャーを経て21年4月より現職。
athletiaは、ブランドコンセプト「Strengthen yourself. (美しさは鍛えられる。)」のもと、スキンケアやライフスタイルに関連したプロダクトを展開しております。“100年時代”と言われる長い人生のなかで、ONとOFF、静と動のバランスをとりながらアクティブなライフスタイルを送る方のセルフコンディショニングをサポートしていきます。
athletiaでは自然原料から容器などの素材に至るまですべて、人と社会、自然への影響を配慮した「clean beauty(クリーンビューティ)」の考え方を取り入れています。
自然への配慮では、ブランドの共通成分であるビオ エナジェティック コンプレックスに含まれるアシタバとシソは、独自の循環型農園「athletia garden(アスレティア ガーデン)」で栽培され、農薬や化学肥料を使わずに有機栽培しています。土壌づくり、栽培、収穫、成分抽出までをコントロールすることで、トレーサビリティーを明確化しております。
環境への配慮では、パッケージには可能な限りリサイクル素材を使用することを方針としています。特にathletiaで使用する容器は工場内で出る端材を使った工場内ガラスカレットを9割以上使用することで、環境への負荷を軽減しています。また、グリーンのガラスボトルは色むらになりにくいという特徴があり、化粧品業界ではタブーな再生カラーガラスも積極的に採用しているのです。
athletiaのVMDの仕事は、他の化粧品会社とは大きく異なると思っています。化粧品業界ではシーズナルなプロモーションを内照式のビジュアルパネル(コルトン)を用いて行うことが多いですが、athletiaでは廃棄物削減のため、モニターでビジュアルを掲示するなどの工夫を行っております。さらに店舗装飾においても、まずグループ内で廃棄されるマテリアルを探すところから始め、アップサイクルさせながらクリエイティブなプロモーション展開をしております。
athletia 表参道店では、製品のガラスボトルを作る際に出るガラス屑を美しく再生した、athletiaオリジナルの人造石のテーブルでお客さまをお出迎えします。さらに、床材は亜麻仁油や木粉などを含む94~98%の天然素材でできており、使用後そのまま廃棄しても成分分解され自然に返る素材です。これらはすべて、廃棄されるはずだったものを再利用しており、デザインも細部にわたりこだわりがある店舗となっています。
そして、社会への配慮としては、athletiaはすべての性別、年齢、国籍のお客さまに対応しています。化粧品マーケットにおける男性のお客様の割合は10%未満だと言われていますが、athletiaをご利用いただいているお客さまの全体の30%以上が男性となっております。
また、動物実験を行わないという姿勢を貫いており、社会課題に取り組んでいる団体の支援も行っています。たとえば、空き容器の回収活動をテラサイクル社と協業して行っており、空き容器1個につき10円を日本自然保護協会に寄付するなどの活動をしています。また、SDGsの目標17のうち、12「つくる責任、つかう責任」、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸地の豊かさも守ろう」をブランドの目標として掲げて活動しています。
先ほどお伝えした通り、athletiaはブランドデビュー当初よりESGフレームとしてブランドが取り組むSDGsの項目を目標に掲げています。この考え方をブランド活動の細部にいたるまで浸透させており、店頭で働く美容部員のユニフォームの素材にもこだわってまいりました。
また、私たちは環境配慮型の素材を使用するだけでなく、廃棄を最小限にすることも重視しました。その結果新しいユニフォームは、美容部員たちが快適に着用できるマルチデザインのワンピー スタイプを採用しました。このユニフォームは、産休に入る前の妊婦さんでも着用しやすいデザインになっています。
最終的なデザインはシンプルでスタイリッシュな、程よい厚みと光沢を有するプレステージブランドに合ったユニフォームに仕上がりました。接客に必要なツールを装備したポーチも作られましたが、デザインは現行品を踏襲しつつ、環境配慮型素材に切り替えられています。
また、このユニフォームは株式会社ゴールドウインが展開するブランド「NEUTRALWORKS.(ニュートラルワークス.)」が取り組むユニフォームプロジェクトで制作しました。ここではリサイクル素材などの地球環境に配慮したグリーンマテリアル[1]を積極的に採用しており、できる限り無駄の少ない製造工程の推進、長く愛用できる耐久性とミニマルなデザインを追求していることから、athletiaと理念が一致し、今回の取り組みが実現したのです。
私たち化粧品業界も、美容部員の制服という観点において、衣服廃棄の問題に関連していると考えています。そのため、今回のリニューアルに伴い、旧型のユニフォームはリサイクルに回さずに、一部は店頭での接客ではなく作業の時に継続して着用することを選択しました。これにより制服の寿命を延ばし、廃棄を避けることにつながっています。
ブランドとしてのサステナブルな観点から、このような取り組みを行っております。ただ、環境配慮やクリーンビューティーなど、環境問題に対して啓蒙することは重要ですが、お客様に押し付けるようなことは目指しておりません。
それよりも、プロダクトとしてシンプルに「香りに惹かれた」「使用感がいい」「効果がある」と思っていただいて、結果的に製品の背景として環境配慮型のものだと知ったときに、ご自身の選択を心地よいと思っていただきたいなと。背景を知ることで、「このプロダクトを使うことで環境配慮にも貢献している」と安心していただけるような、また、それがきっかけでリピートしていただけるようなブランドでありたいと思っております。
[1]リサイクル可能な繊維、成長が早い植物を原料とした繊維など環境への負荷をできる限り抑えたこれらの素材を、株式会社ゴールドウインでは「GREENMATERIAL(グリーンマテリアル)」と呼んでいる。