2023年2月に“再上陸”を発表して注目を集めている「FOREVER 21(フォーエバートゥエンティワン)」は4月17日、第1号店となる大阪・ららぽーと門真店をオープンした。 同店には約1050点(カラー/サイズバリエーションを含む)の商品がラインアップされ、新生FOREVER 21を体感できる店舗となっている。
かつては、ファストファッションの代名詞的な存在であったFOREVER 21。しかし、今回の再上陸にあたり、そうしたイメージを払拭するためのサステナブルな取り組みはもちろん、日本マーケットに向けた「ローカライズ」が大きな特徴となっている。
そこで今回、FOREVER 21の日本展開を担うアダストリアグループのライセンス事業子会社、株式会社Gate Win(ゲートウィン)にてFOREVER 21の営業部 部長を務める栄木雅人さんに、ローカライズの目的、店舗やECの役割、今後の展開まで話を聞いた。
新生FOREVER 21の目玉は何か。この疑問に対して、栄木さんは第一に「ローカライズ」を挙げる。本国アメリカのFOREVER 21とコミュニケーションを取った結果、ローカライズに対する「前向きな返答」を受けて、推進することになったという。
「2023年春夏は、ジャパンモデル(ローカライズした商品)が8割、本国アイテムが2割という商品構成になっています。
ローカルライズというと『日本では過去にビジネスモデルが失敗して撤退したから、マーケットに合わせるのですよね』といった反応をされます。
もちろん再上陸にあたって、日本のマーケットに合わせることは必須です。しかし、それ以上に大事なことは、『日本のFOREVER 21がグローバルブランドとして、海外からも魅力的だと思われるような取り組みをしていくこと』だと思っています。インバウンドで海外から来たお客さまにも、日本でしか手に入らないジャパンモデルを購入したいと思ってもらいたい。
そこで僕たちが考えたローカライズは、ファストファッションという言葉がプラスに捉えられない時代背景を踏まえて、クオリティを追求していくことでした。
ファストファッションには、使い捨てのイメージがあります。しかし、今のファッションは1つの服を長く着る方がかっこいい。そこを大事にして、ものを作りたいと思いました。
具体的に言うと、日本のトレンドを押さえ、良い素材を使って着心地やサイズ感を追求するだけでなく、何度も着られるタフな商品を心がけました」
そのため、FOREVER 21が目指しているブランド戦略も、あくまで「大量生産・大量消費」から距離を取ることだという。
「『安くて着られればいい』というブランド戦略に巻き込まれるつもりはありません。僕たちは、爆買いではなく『納得買い』をしてもらいたいと考えています。
みなさんのクローゼットの中には、特に高いアイテムではないのに『毎回この服を着ちゃうな』という、ずっとお気に入りの1着があると思います。そんな誰のクローゼットにも存在するような一着を、買いやすい価格で提供したい。
それができれば、ブランドの1つの個性として、この価格帯の中でも差別化ができると思います」
さらに、日本を代表するアニメ作品「うる星やつら」とのコラボアイテムや、カルチャーから生まれたストリートアイテムを中心に展開する「WIND AND SEA」との日本オリジナルコラボアイテムを展開。こうした日本独自の取り組みは、本国からも評価されているという。
「コラボに関しても、本国と密接にコミュニケー ションし、ブランディングも大事にしながら実施していきます。
アダストリアグループはおもに国内のドメスティックブランドを開発していますので、海外で生まれ育っているブランドを日本で展開するノウハウが必ずしも十分ではありません。本国からパッケージをそのまま持ってくる方法もあったからこそ、ローカライズはチャレンジ精神を掻き立てられますね」
また、サステナブルな観点からは、長く愛される商品を作ることと合わせて、環境に配慮した素材を積極的に取り入れたり、製造工程の工夫を行ったりしている。
具体的には、オーガニックコットンを活用したインナーシリーズや、2次加工における水の使用量を9割削減したデニムシリーズなどを販売している。また、店頭に衣装回収BOXを設置して、不要な衣料品の回収にも努めていく。
FOREVER 21は、5年後には15店舗を展開するとともに、EC化率は6割、売上高は100億円を目指すとしており、EC化率を高めることにも注目が集まっている。
「アダストリアのブランドを見ても6割までEC化率を上げたビジネスモデルはないので、だからこそFOREVER 21はそれを目指したいという思いがありました。
ただ、販売チャネルをむやみに増やすのではなく、ブランディングをしながら展開する意味で、今のところは自社サイトとZOZOTOWNの2つを中心に運営していくことにしています」
そのなかで、リアル店舗の役割や、ECとの住み分けについてはどのように考えているのだろうか。
「基本的に、住み分けはしない方が時代に合っていると思います。今は店舗で買うことも、ECで買うことも、すべて相互関係になっています。店舗では見るだけで、後からECで購入する場合もあるわけです。
そして、ECの環境がこれほど整ってきたことで、今まではものを売ることが中心だった店舗が、お客さまとコミュニケーションを取る場所になってきていると思います。
つまり、店舗にとって重要なことは、コミュニケーションツールになれるかどうかです。
たとえば、店舗イベントも、新しい考え方でもっと活発にやっていけると思うんですね。店舗イベントというと、最終的には『ものを買ってください』というオチが多いと思うんです。
しかし、コミュニケーションの場であると考えれば、FOREVER 21好きな人が集まってパーティーをしてもいいですし、占いイベントがあってもいい。店舗で売らなきゃいけないという概念を変えていく必要があると思います。
その意味でも、商品だけでなく内装のローカライズにも力を入れていきます。たとえば門真店に関して言うと、商人の街、大阪という意味で内装にのれんを入れたり、その土地ならではのイメージやエッセンスを取り込んだりした内装にしています。これもお客さまとの一つのコミュニケーションだと思います」
最後に、アダストリアグループとして、今後のFOREVER 21をどのように展開していきたいのかについて聞いた。
「アダストリアグループ全体で考えると、若いブランドもたくさん保有していますけれど、いわゆるZ世代にフィーチャーした展開はそれほどできていません。その意味で、FOREVER 21のマーケットの軸として、Z世代に届けることは大きいと思います。
また、引き続きローカライズを進めていきたいと思います。本国からも評価されて『アメリカでも展開させたい』と思ってもらえるほどの商品を作りたいですね。
そして、ファッションはビジネスとしてもチャレンジングであるべきだと思いますので、僕たちの挑戦が、市場に対するメッセージになればいいなと思います」
株式会社Gate Win
FOREVER 21 営業部 部長