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2023.03.24

落花生もレザー製品に?千葉発のビーガンレザー

昨今では、さまざまな配慮を背景としてビーガンレザーの製造・販売へ注目が集まっている。しかしながら、その製造は国外に限られており、日本では未発達のジャンルである。そんななか、日本で珍しい素材のビーガンレザーの製造がローンチされた。
柏レザー株式会社からローンチされたそのレザーは落花生を素材として製造されたビーガンレザーだった。そこで柏レザー株式会社代表の飯島暁史さんに、落花生に注目した背景やその製造についてお話を伺った。

本格レザー製造からビーガンレザーへ

柏レザー株式会社は2016年に千葉県柏市にて設立され、OEMだけでなく、工房併設の革製品の製造販売店NUIZA縫EMON柏を運営し、オリジナル商品を開発・販売まで手がけている。
2017年にはオリジナルピッグレザー(柏レザー)を開発し、日本では珍しいキョン革(千葉県内で捕獲された動物)を使用したバッグ、財布、革小物も販売している。
そのなかで、今回ビーガンレザー、そして落花生に注目したのは、以下のような背景があったと飯島さんは語る。2021年頃から世界的にビーガンレザーが注目されていたが、それらは海外で製造されたもので、それが日本で加工・販売されていた。
オリジナルピッグレザー(柏レザー)を用いた口折れショルダーバッグ
オリジナルピッグレザー(柏レザー)を用いた口折れショルダーバッグ

千葉名産品の活用

そこで日本発、そして「せっかくならならまだ誰もやっていない素材(地元の素材)で生地を作ろう」と飯島さんは考えたのだという。そこで素材を調べていたなかで、落花生農家に話を聞いたところ(千葉県は日本有数の落花生生産地)、落花生の加工品を製造する過程で薄皮がほとんど廃棄されていることを知った。そこでこの素材に着目し、ビーガンレザーの製造に取り組んだのだと飯島さんは語ってくれた。落花生は、千葉県でその栽培から加工、販売までを一貫して行っている木村ピーナッツの協力を得て、ビーガンレザーの製造に至った。
ビーガンレザーは、落花生とPVC(ポリ塩化ビニル)で製造されており、PVCをレザーに加工する過程で落花生の薄皮を10%混ぜることが適量であるという。飯島さんは、薄皮の割合や温度調節などが開発のなかで苦労した点だったと振り返る。出来上がったレザーは、本革の製造に携わってきた飯島さんから見てもしっかりとした風合いで、出来上がりすぐにはほのかに落花生の匂いが漂うのだという。本革以上に腐食や虫害、水に強いのもその特徴だ。すでに製品を手に取った顧客からは、取り組み自体に対する肯定的な感想をいくつか受けているという。
ビーガンレザーで作られた製品
ビーガンレザーで作られた製品

日本発のビーガンレザーを

飯島さんにとっては、取り組みとしては課題もいくつか残っているのだという。「取り組みそのものの認知が低いため、多くの人に知っていただき、この生地を使った商品を手に取ってもらいたい」と飯島さんはコメントしてくれた。
また企画自体が走り出し段階のため、通常の合皮(PVCレザー)よりもコストがかかってしまう点も改良したいのだという。ただ、現時点でも海外のビーガンレザーよりは安価で提供できるため、日本発のビーガンレザーには可能性を感じているとのことだ。
最後に飯島さんは、「今後、ただ物を作って並べて販売する革製品だけではなかなか難しくなっていくなかで、落花生を取り上げることで取り組み、素材、製造のストーリーの見える生地で唯一無二を表現していきたい」と語ってくれた。本格レザー会社が取り組むビーガンレザーをぜひ手に取ってみてほしい。
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