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2024.05.28

モデルの岡田章吾が手がけるワークウエア「KEIMEN(カイメン)」に見る「畑オタク」の世界

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現役モデルにして、モデルエージェンシー「VELBED.(ベルベッド.)」の代表を務め、農業ではなく“農”に勤しむ岡田章吾。
山梨県の道志村にある畑で作物を育て、農作業のためのワークウエア「KEIMEN(カイメン)」のDirectorとして日々多岐にわたる活動をしている。
今回は岡田さんの人物像に迫りながら、KEIMEN Directorとしての活動を紹介していきたい。
「21歳のときからモデルをはじめて、いま38歳になるのですが、6年前にモデル事務所とその翌年にKEIMENを立ち上げました。
農に関しては、もともとは横浜に貸し農園を借りたところからスタートしたのですが趣味が行き過ぎまして、農業の学校に1年通い、縁あっていまは山梨県道志村というところに畑を1.5反ほど借りて活動をしています」

畑をやりながら、不便に思った部分をデザインでカバーしていく

岡田さんが「畑オタク」になっていった経緯がわかったところで、どうやって農作業のためのワークウエアKEIMENが誕生したのかを引き続きお話しいただこう。
「東京から道志村へ通う際に、汚れてもいい服を着ていったり、現地で着替えたりということをしていたのですが、着たまま向かえて、着たまま帰りたいなと思うようになりました。また膝をついて作業したときに膝が痛いと感じたり、足が広げづらいと感じたり、いろいろと気づきがあったんです。そんなとき、知り合いのアパレル会社の人に声をかけてもらったのがきっかけでKEIMENをはじめることになりました。
ブランド名のKEIMENはドイツ語で『発芽』を意味します。畑をやっていると気づくことや、ひらめきがあるのですが、そのニュアンスが発芽のイメージとリンクする部分があると感じてこのネーミングにしました」

ファーストシーズンの10アイテム

ここからは岡田さんが農作業からインスピレーションを受け、KEIMENとして最初に作ったアイテムやブランドのルーツとなるファーストコレクションのアイテムを紹介してもらおう。
「最初はオーバーオールを作りました。膝が痛くならないよう、膝の部分の生地を3重に補強していたり、可動域を大きくするためのシルエットになっている仕様です。
あとは長靴の中に裾をしまえるようにボタンで絞れるようなギミックがついています」
「その他、袖をまくっても落ちづらいようにリブを長く作り、腕の可動域を妨げないように広めのラグランスリーブに仕上げたロングリーブTシャツや、サーマルTシャツなど、ファーストコレクションはその後のKEIMENのルーツとなったアイテムが詰まった内容でした。
小物も人気でいまでも定番的に作り続けています。ロゴと滑り止めがついたカラー軍手、農作業でよく汚れる部分に黒を使いで2トーンに仕上げた靴下や、首の日焼け対策仕様のハットなども、KEIMENでは重要なアイテムとなっています」
KEIMENファーストコレクションアイテム
KEIMENファーストコレクションアイテム

畑に関する思いと知識が詰まったTシャツたち

こうして農にまつわるアイテムを見てきたが、KEIMENは商品リリースのタイミングが普通のアパレルブランドとは少し異なっているようだ。その辺りのお話を新作アイテムの紹介を交えながら聞いていこう。
「アパレルのコレクションといえば、春夏と秋冬の年2回、アイテムを発表するのが基本だと思うのですが、KEIMENは畑の作業が比較的落ち着く冬から春のはじめぐらいの時期、年1回の展示会のみでいまは展開しています。いろいろと試行錯誤していまの形に辿り着きました。
一般的に9月は春夏の展示会シーズンだと思うのですが、9月は畑も忙しいので、すべてに集中できなくなってしまうなと感じてこのペースになりました。
今年のアイテムを紹介させていただきたいのですが、農家の間で“雷の多い年は豊作”という言い伝えのようなものがあります。その科学的なメカニズムを九州大学の林教授に聞いたところ、雷の放電によって空気中の窒素分が大地に入り窒素固定され、稲がその窒素をおかずにしてよく育つということで、それを図解した『NF T-shirts(Nitrogen fixation窒素固定Tシャツ)』を作りました」
「それともうひとつ、雷が落ちたときは空気中にプラズマが走っているらしく、それが稲に当たると大きく育つというお話を聞き、『PLASMA T-shirts(プラズマ Tシャツ)』も作りました」
「さらに民俗写真家『芳賀 日出男(はが ひでお)』さんとのコラボレーションアイテムがあります。『農家の手』という有名な写真を使わせてもらい、『日本の民俗 ~暮らしと生業~ 芳賀日出夫 著(角川ソフィア文庫)』という本とセットで販売しています。
角川ソフィア文庫からは芳賀さんの本がたくさん出ていまして、その中でも芳賀さんの半生がわかるような作品を選びました」
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