オフィス兼アトリエがあるのは、パリ市とヌイィ・シュル・セーヌ市の境にある建物ヴィラ・ラブルースト。晩秋の小雨の降るなか、黄金色に色づいたマロニエの街路樹を抜けて、その新古典主義建築の屋敷に到着すると、マリアケント社の社長でアーティスティック・ディレクターでもあるイヴ・コリガンさんが笑顔で出迎えてくれた。
マリアケントは、1987年にミシェル・ケントという女性が創業したフランスの生地メーカー。鮮やかなツイードは、シャネルをはじめ多くの高級メゾンで使われている。そのアトリエを、現在はイヴさんが引き継いでいる。マリアケントの歴史とイヴさん自身について、話を聞いた。
シャネルを惹きつけたマリアケントの始まり
マリアケントというメゾンの始まりは、法律を学んでいた手芸を愛する学生、ミシェル・ソラノという女性によって始まった。「マリア(Malhia)」とはミシェルのあだ名で、「ケント(Kent)」はソラノの結婚後の姓。その2つを合わせてマリアケントと名付けられている。ミシェルの経歴を語る上で、切り離せないのがココ・シャネルとの関係。ミシェルが自ら制作したいくつかの作品を、晩年のシャネルに見せに行ったことが、今のマリアケントにつながっている。