2022.07.12

「ゲーム業界が考えるメタバースとは全く異なる」日本でも話題の「AGLET」が描く戦略とビジョン

Fashion Tech Newsでは2020年よりONLIFE(オンライフ)社が提供するスニーカーアプリ「Aglet(アグレット)」のアップデートについて、2020年より「『AGLET』による、メタバースなコマース体験の実現へ」と「メタバースと実空間両方でスニーカーヘッズの交流が生まれる?『AGLET』」の記事をリリースしてきた。そして5月に、日本からのユーザーが急増、一時は日本のアップルストアでダウンロード数1位を記録した。さらに、Agletは最近フィジカルスニーカー「Aglet One」を世に送り出し、これは数秒で完売した。そこで今回、同社のCEOであるRyan Mullins(ライアン・ムリンズ)氏にユーザー急拡大の背景についてインタビューを行った。

NFTを日常に融合させる

5月初旬、ツイッターを中心にユーザーベースが急速に拡大したようですが、どのようにこの状況を見られていますか。

NFTを発表してから最初の2日間で25万人のプレイヤーが増え、その間に日本のApp Storeのゲームアプリランキングで1位を獲得するなど、かなりワイルドなことが起きたと思います。Agletのアクティブプレイヤーは350万人に達し、ローカライズと日本語への対応を進めており、より多くの人に私たちの体験を届けられるようにしたいと考えています。アプリのローンチ開始から常に日本にフォーカスしていましたが、NFTを発表するまで本格的にブレイクすることはありませんでした。NFTの立ち上げは、当初から行いたいと思っていたのです。

実は2018年、資金調達やアプリのローンチをする前は、Sneakercryptという会社名でした。最近の市場の伸びは、異常なほどです。当社のコアテーマのひとつに、「ゲームが世界を飲み込む」というのがあります。もちろん、ゲームはとてもポピュラーで、人々はゲーム内で遊び、大量のお金を使います。しかし、私たちが目指しているのは、そういうことではありません。私たちが言いたいのは、もっともっと壮大なことで、ゲームのメカニズムとデザインが、今やカルチャーに食い込んでいると考えています。カルチャーは、今やゲームのように構成され、デザインされているのです。スニーカー、ストリートウェア、バッグ、フィギュア、レコード、ワイン、NFT、アート、トレーディングカード、ゲーム内アセットなどなど。

私たちは、ブランドと取引するとき、人々はそのブランドのゲームに参加しているのだと考えました。希少価値のある資産を購入するために、他の消費者と競争しているのです。そして、その資産をさまざまな二次市場で裁定取引するとき、メタゲームが始まります。つまり、良くも悪くも文化の金融化、投機化です。最初はとてもエキサイティングなのですが、しばらくすると単なる取引になり、非常に退屈になります。NFTを立ち上げる前、私たちはデジタルアセット市場で同じような構造を目の当たりにし、それを繰り返したくないと思いました。

そこで、昔ながらのやり方で、楽しく、長くプレイしてもらえるようなゲームを作ろうと考えました。まず、ゲームとユーティリティの構築に注力し、プレイヤーの好みを学び、その後、プラットフォームにWeb3.0の機能を搭載することに移行したのです。

人々が世界中を動き回るようになると、NFTをオンラインで販売するだけでなく、日常生活の中でNFTとどのように融合できるかが分かってきます。そのため、私たちが望むのは、世界中の人々の生活にゲームを取り入れることです。だから、私たちがやっていることは、もっと大きなチャンスだと思うのです。アバター用のデジタルスニーカーやアパレルだけでなく、あらゆる種類の商取引にチャンスがあると信じています。地図を使って、小売店やコンサート会場、施設などにNFTを設置することができます。私たちは、このようなことを実現するために、今年中にいくつかの素晴らしいパートナーシップを結ぶ予定です。ご期待ください。

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前回のインタビューから一年、アプリはどのようなアップデートがあったのでしょうか?

機能面で変更が数多くありました。以前はアプリを開くとスニーカーが表示される仕組みでしたが、今はマップが表示されるようになりました。ユーザーが移動をすることを中心に考え、アプリを開いたときに「あ、自分は今ここにいるんだ」とわかるように、自分の居場所が表示され、駅など周囲に目を向けることができるようにしました。

そして次のリリースでは、ゲーム内で他の人をフォローできる仕組みを取り入れる予定です。これによってフォローした人がどこにいるのか知ることができるようになります。マップ上で近くにいるアバターをクリックすることで、その人のプロフィールが表示され、そのアバターや、そのアバターの棚に何が置いてあるのか、さらにスコアなどを見ることができるようになります。チャット機能も搭載予定なので、棚を見て「このAglet One OGs買い取りたいんだけど!」と話し始めることもできます。このようにアバターを地図上で表示することで、ソーシャル機能が充実していく予定です。

2つ目の大きな変更点は、マップをアプリのインターフェースのコアに取り入れたことに伴い、位置情報のアルゴリズムの更新を行いました。毎日マップ上で「スキャン」ボタンを押すと、周囲に6〜10個の新しいロケーションが生成されます。つまり、マップ上にある場所や駅は固定されているのではなく毎日変化しているのです。これは私たちのような小さなチームにとって非常に大きなアップデートで、時間がかかりましたが、この機能を取り入れたことでユーザーのアプリの利用時間が伸び、私たちの成長の大きな後押しになったと考えています。

3つ目の変化は、クリエイターやデザイナーと協働し始めたことです。これまでにもさまざまなデザインコンテストやクリエイター月間を開催し、新進気鋭のデザイナーを紹介してきました。さらに発展させるために、3〜4人の独立系デザイナーとパートナーシップを組み、「Aglet」のデジタル版スニーカーのデザインを進めていくことになりました。

今後彼らはデジタルスニーカーをゲーム内でNFTとして発表していきますが、このコラボレーションではさらに実際のスニーカーを作ることも構想しています。
ご存知の通り、私たちの会社の名前は「Aglet」ではなく、ONLIFE(オンライフ)であり、オンラインとオフラインを融合させるというアイデアに由来しています。つまり、私たちが取り扱うのはデジタル・コレクションと、物理的な製品の両方です。これまでに、スニーカーショップで物理的な商品を販売してきました。そして、アバターと物理的なアパレルがあれば、AmazonがNianticとコラボレーションしたような、コマースとゲームの融合した全く新しい体験が可能になっていくのではないかと考えています。

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コレクションが集まったバックパック 

AgletのNFTの構想について教えてください。

Agletはカルチャーでプレイするゲームです。カルチャーの大部分は、思い出、経験、アセット、友人といったコレクションです。これらはすべて、自分の世界を構築するための一部です。私たちはこれらのコレクションを自宅や脳内に保存し、今日では価値のほとんどを携帯電話に保存しています。そこで私たちは、暗号資産のウォレットの代わりに、「バックパック」とすることにしました。ウォレットよりも、もっと社会的なものです。

Agletで世界中を移動していると、さまざまなコレクションが生まれます。空間NFTもそのひとつです。現在は月に2ー3回、NFTをリリースしています。需要は非常に高いです。これまで12回ほどリリースしましたが、いずれも即座に完売してしまいました。

このように今後のAgletは、世界中を移動し、文化圏を移動しながらアセットを集め、バックパックに収納することがメインとなります。そして、今年の後半には、「Agletギャラリースペース」を立ち上げる予定です。つまり、バックパックから特定のアセットを取り出して入れることができ、スペースでライブストリーミングイベントを開催することもできるようになります。そこでは、あなたが作った新しいアセット、あるいはバックパックに入っているものすべて、あるいは財布の中にある売りたいもの、見せたいものを見てもらうことができるんです。

現在ゲームには、歩いて集める「Aglet」コインと、購入する「Gold Aglet」という二つの通貨があります。例えば、私たちのゲームの中に一つしかない$10,000のスニーカーがありますが、この購入者はドルで購入しています。つまりクレジットカードがデバイスに接続され、フィアット通貨(不換通貨)で購入しているということです。このように現状のゲームでは、通常の他のゲームのようにゲームで稼げるコインと、アプリ内課金の二つのコインがあるのです。

その上で、私たちは今年の後半に独自の「Agletトークン」をリリースしようと思っています。つまり、集合的な暗号通貨でゲーム内で使用ができるトークンを想定しています。ゲーム内のアセットはこれまで通りフィアット通貨で購入いただけますが、トークンはビットコインやETH、SolanaなどMultichainでありかつ多数の支払い方法に対応する予定です。何か買いたいものがあるときに、PayPalで支払うこともできるし、銀行の口座振替で支払うことも、クレジットカードで払うことができるように、通貨や支払い方法で制限されない、オープンな決済システムにしていきたいと思っています。

商業レイヤーとNFTはどのように繋がっていくのでしょうか?

私たちの将来のもうひとつの展望は、人々や企業のためのランドプレイと土地所有権であり、これはAgletトークンで地図上の土地を購入できるようになることです。例えば米国で開催される大規模フェス「コーチェラ」と連携したとしましょう。コーチェラは実際にフェスが開催される土地を購入できます。そして、フェスのファンもその土地の一部所有権を持つことができます。

このアイデアは、「Decentraland」や「The Sandbox」のような仮想世界での所有権ではなく、現実世界を表す点にあります。例えば、あなたと友人がポスト・マローンやケンドリック・ラマーといった有名アーティストを見るためにコーチェラに行ったとします。すると、そのアーティストやイベントが、ゲーム内でNFTアセットをリリースすることができ、現実の体験の上に別のレイヤーのコマースを追加できるということです。

さらにゲーム内でコーチェラの土地を所有したとして、現実世界で多くの経済活動が行われていれば、その土地の所有権も価値も上がっていきます。このようなファンと企業が交流し、繋がるための新しい方法はとてもエキサイティング。そしてこれは新しい種類のDAO(分散型自立組織)や株式市場を形成する方法なのかもしれません。

アップル社の株を所有しているのは大きな機関かもしれませんが、一方で、一般の個人投資家が所有することも可能です。ですから、この土地機能をゲーム内で提供し始め、その土地で現実世界のために資金を調達できるようになれば、とても魅力的です。

私たちが目指しているのは、実際に住んでいる街のカルチャーと人々を再び結びつけていくことです。ゲーム業界が考えるメタバース、つまり仮想世界にみんなでたむろするのとは全く異なり、私たちが住んでいる本当に素晴らしい都市を探索するため、どのような新しいプロダクトを作るかということです。

マップ機能を使うことで、実際の世界の上に新しい商業レイヤーを敷くことができます。ですからユーザーが世界中を移動して、いろいろなものを集め、バックパックに入れることができます。そして集めたものを、誰かと共有したり見せびらかしたり、ソーシャルギャラリーとして見せることができます。

ゲームの筋としては、土地の所有権と世界を情報のブラウザとすることにあります。それができれば、私たちのプラットフォームを通じて多面的なマーケットプレイスが実現するのではないかと思っています。Amazonが本からスタートして「エヴリシング・ストア」となったように、私たちもスニーカーからはじめていきたいと思っているのです。

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ビジョンと今後のロードマップについて教えてください。
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私たちの製品は、世界、アイデンティティ、ソーシャルという3つの主要なカテゴリーに焦点を当てています。そして私たちのビジョンとロードマップでは、これらのカテゴリーを増幅させる機能を開発・導入していきます。お気に入りのブランドのスニーカーやアパレル、アクセサリーを集めるクエストやチャレンジがあるマッププレイを強化します。

マップは、今いる街の探検や発見を手助けしてくれるはずです。アイデンティティはあなたのバックパックであり、ソーシャルの基盤となる価値や経験を保管するものです。ソーシャルは、ゲーム内の仲間とのつながりです。集めたものをトレードしたり、買ったり、売ったり、仲間に見せびらかしたり、マップ上で見たり、クエストに挑戦したりするものです。

言い換えればAgletのビジョンはオンライフなのです。私たちはもうオンラインでもオフラインでもないんです。私たちはオンライフなのです。この2つの次元の狭間に存在するもの。私たちは、現実がすでに一人称視点のMMOであると信じています。そして、ロケーションベースのマッププレイを使って、現実の上にデジタルゲーム盤を置き、商業、文化、創造のための新しい種類のリアルなメタバースを実現することができるのです。

私たちはまだ始まったばかりなのです。

Text by Hanako Hirata

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