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2023.06.02

体操選手・杉原愛子さんとPlaySが手を組み、ハイレグタイプを開発:azuki代表が目指す吸水ショーツ普及の舞台裏

株式会社azukiは、スポーツ・アスリート向けの吸水ショーツブランド「PlayS(プレイショーツ)」を展開している。同社は、アスリートから子どもたちまで使用できる高性能な吸水ショーツの開発に取り組むとともに、女性アスリートの生理に関する課題解決にも注力している。
商品開発に留まらず、吸水ショーツに関するセミナーなど積極的な活動を行っている同社。今回は吸水ショーツの普及を目指す活動について、代表の坂上大介さんに話を伺った。
PROFILE|プロフィール
坂上 大介
坂上 大介

株式会社azuki ​代表取締役社長
1976年、大阪府堺市生まれ。
大阪芸術大学卒業後、テレビ番組制作会社に入社。25歳で独立、フリーのディレクター・放送作家に。筆文字などテレビ以外での活動も多数。2013年、株式会社azuki設立。

TV現場から生まれた吸水ショーツ

まず、御社が吸水ショーツに着目した背景について教えてください。
弊社は2013年に設立し、当初からテレビ番組や動画制作事業をメインで行っていましたが、2年前の2021年からは吸水ショーツ事業にも取り組んでいます。分野はまったく異なりますが、基本的にはこの2つの事業を展開しております。
吸水ショーツ事業に着目したきっかけは、スポーツ選手への取材にありました。取材したオリンピックアスリート選手から、オリンピック期間中に生理が重なって大変だという話を聞いたんです。
オリンピック選手には、生理が試合と重なった場合に、生理痛や出血の心配に加え、ナプキンの不快感や違和感がストレスになることがあるそうで、競技するうえでネックとなっていました。
スポーツ選手がシューズやウエア、スパイクやプロテインなど、いろいろなアイテムにこだわる一方、生理用品にはあまり選択肢がなく、生理が重なった場合、絶望感を覚えることもあるといいます。日本ではオリンピック選手のピルの使用率は3割程度で、残りの選手はナプキン派かタンポン派などに分かれます。
ただ、タンポンには抵抗がある方も多く、7割以上のトップアスリートがナプキンを使用しているという現状です。多くの女性を悩ませる生理は、女性アスリートたちにとっても大変な課題になっていると感じました。
実際にPlaySのサポートアスリートであるトップアスリート(オリンピック、日本選手権、トップリーグ経験者など)27人を対象に「アスリートと生理」に関するアンケートを実施したところ、9割近くが「大きな試合と生理が重なった」と回答、また約85%が「競技中に生理用品で困った・不快・大変」を経験していたことがわかりました。
このような課題はスポーツ選手だけではありません。テレビ業界で働く女性スタッフやアナウンサー、記者の方々から、仕事中にナプキンを購入する・替えるタイミングが取りづらいという悩み相談を受けたこともありました。
テレビ業界の女性スタッフは長時間拘束されているため、トイレに行く時間がなかなか取れないことがあります。休憩時間も自分のタイミングで行くことができず、たとえば山奥からの中継などでは、ADバッグに使用済みのナプキンを入れて持ち帰らなければならないこともあるんです。
そんななか、母が婦人科系の病気に罹ってしまったことをきっかけに、フェムテックや吸水ショーツというものを知りました。これがあれば、スポーツ選手やテレビ業界の女性スタッフたちの課題を解決できるのではないかと考え、吸水ショーツの開発に着手することになりました。
武庫川女子大学で生理に関するセミナーを開催したり、校内の売店で吸水ショーツを販売したりするなど、新たな選択肢を広げる活動に力を入れています。
吸水ショーツはセンシティブな商品であるからこそ、単に販売するだけでは終わらないと考えています。特にアスリートや部活生といったコアな層には、製品について丁寧に説明し、どのような問題に直面しているのか、どのような商品が求められているのかを聞き取ることが重要だと考えています。
ユーザーとのコミュニケーションを大切にし、フィードバックをもとに製品の改善に取り組んでいます。私自身、男性であることもあり、最初はユーザーが自分の話をしてくれるか不安でしたが、意外にも皆さんは自分たちが抱える問題を率直に話してくれるので、その貴重な情報を次の段階につなげるためにも、積極的にコミュニケーションを取るよう心がけています。
たとえば、女性同士で話している場合、痛みについて話している人が痛みに強い人なのか弱い人なのかで、相手に共感してもらいづらいことがあったり、痛みに強い人が痛みに弱い人に対して「そんな痛みも我慢できないのか」と思ってしまうことって少なからずあったりしますよね。
しかし、私の場合は生理の痛みを経験できない分、相手が話していることはすべて真実であると思うので、逆に話しやすいと感じていただいているのかもしれません。
生理を経験したことがないので「それぐらい我慢できるよ」とか、「それは女性特有の問題だから、婦人科に行った方がいいよ」といったアドバイスはしないため、「こうして困っているんです」ということを私には自由に話してもらえていると感じますね。
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