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2024.09.09

老舗帽子メーカーが、がん患者向けの帽子を開発した理由:CHANVRE MAKI(シャンヴル マキ)

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東京都台東区に、100年以上にわたり帽子の製造を続けている企業がある。「株式会社サトー」だ。
同社の4代目 代表取締役を務める佐藤さんは、これまでの歴史を受け継ぎながらも、がん患者向けの帽子ブランド「CHANVRE MAKI(シャンヴル マキ)」の展開にも力を入れている。
同社が自社ブランドを展開するのは、今回が初めてのこと。また、ブランドの立ち上げを決意した直後、佐藤さん自身も舌がんを患った。その経験が、本ブランドづくりに大きな影響を与えたそうだ。
今回は、同社のあゆみをはじめ、「CHANVRE MAKI」の立ち上げの背景や帽子のこだわりについて話を聞いた。
PROFILE|プロフィール
佐藤 麻季子(さとう まきこ)
佐藤 麻季子(さとう まきこ)

1983年生まれ。2013年、株式会社サトーに入社。2014年、同社 代表取締役に就任。
2023年に医療用帽子の自社ブランド「CHANVRE MAKI」を立ち上げる。

家業も自社ブランドも、きっかけは「誰かのために」

まず、御社の創業の経緯を教えてください。
弊社は、私の曽祖父が1912年に創業しました。曽祖父は山梨の出身で、もともとは銀行に勤めたり、いろいろな物の取り引きを行っている方のもとで働いたりしていたそうですが、「自分で何か事業をしたい」と考えたのをきっかけに、東京に出て帽子製造の修行を始めたそうです。
明治の頃の写真を見ると、みなさん着物を着て帽子をかぶっていますよね。曽祖父はそれを見て、「これからはこういった服装がもっと流行るだろう」と目を付けて。「これなら輸入・輸出といろいろな可能性があるんじゃないか」と、メンズ帽子の製造をスタートしました。
2代目が祖父、3代目が父なのですが、その2人が一緒に仕事をしていた頃からレディースの需要がどんどん増えていきました。現在製造している帽子は、レディースが9割、メンズが1割ほどです。
どのような商品を作っているのでしょうか?
OEM・ODM(委託者のブランドで製品を設計・生産すること)を中心とし、主に帽子専門店やアパレルブランド、百貨店などで販売する帽子の企画・製造をしています。一般的な帽子の他、がん患者の方向けのニット帽子などを製造することもあります。
佐藤様が入社されたのは2013年。もともと、家業を継ごうと思われていたのですか?
いえ、私はもともと別の会社に勤めていましたし、両親も継いでもらおうという気持ちはなかったそうです。入社するまで、家でも帽子の話は一切していませんでした。
継ぐことを決めたきっかけは、父の体調不良と、東日本大震災の影響で弊社の福島県飯館工場がなくなったことです。“工場がなくなる=生産拠点がなくなる”ということで、「会社が危ないんじゃないか」と噂が立って。
また、取引先に「後継ぎがいないから何年続くか分からない」と思われてしまうと、弊社との商売を広げていこうと思ってもらえなくなってしまいますよね。
父の体調不良や工場がなくなったことで、取引先がどのように感じているのかを母から聞いたとき、「私しかやる人がいないんじゃないか」と思ったんです。
それまで勤めていた会社では、自分が行きたい部署に所属させてもらい、やりたい仕事をさせてもらっていたので、充実した日々を過ごしていました。でもそう思ってから、半年経たずに会社に辞表を出していました。
入社されてから気付いた、御社のよさは何かありますか?
取引先との信頼関係ですね。弊社は100年以上にわたって帽子の製造を続けていますが、取り引きが長く続いているお客様が多く、2代目、3代目と関係を続けてくださっている企業もあります。
創業当初から、“取引先と共に成長できるように、信用を失うことがないように経営すること”を心に留めているので、“自分たちがよければいい”という経営はしていません。だからこそ、取引先から信頼を得ているし、ここまで長く続いているのだなと入社してから感じました。
OEM・ODMが中心とのことですが、昨年、がん患者の方用帽子の自社ブランド「CHANVRE MAKI」を立ち上げられていますね。きっかけを教えてください。
パタンナーの母も同じことを言っているので、おそらく職業柄だと思うのですが、帽子をかぶっている人を見ると、ファッションとしてかぶっているのか、仕方なくかぶっているのかが分かってしまうんです。
がん患者の方のなかには、髪の毛がないことを隠すようにかぶっている人もいます。やはり普通のニット帽では頭のシルエットがあらわになるので、分かりやすいのかなと。
違和感なくかぶることができる帽子がないのかなと思い調べてみると、あまり製造されていないことに気付きました。そこで、「苦労されているがん患者さんのために何かできれば」と、自社ブランドを立ち上げることにしました。
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