日常からの逸脱による出会いの中で、自分の輪郭をしなやかに、軽やかに変幻させていくこと。“旅する服”をコンセプトにする、パリ拠点のユニセックスブランド「
CLOUD LOBBY(クラウドロビー)」のデザイナー、⼤浦雲平さんの話を聞いていると、旅の意義について考えずにはいられなかった。
「機能性の高さを謳う意味での“旅する服”とはちょっと違うんです。洋服と僕自身が旅をしながら、雲のように形を変えて、どこまでも流れていく。カラダを解放して、ココロを喚起する洋服を届けたい」と話す⼤浦さん。
パリ在住17年目を迎える彼は、異国の地に根を張る現在進行形の経験と、世界中で出会う人々、パリでの日常風景といっ た、自身の人生の旅を「CLOUD LOBBY」に投影する。留学先の大学の中退や、デザインではなくビジネスサイドからの経験、パリ最⾼裁判所でゲリラショーを開催するなど、指針となる軸を貫きながらも、まさに雲のごとく風に身を委ねて現在地に流れ着いた。
時にフランス特有の変動的な法制に翻弄されながら、すべての経験を洋服へと落とし込む、大浦さんの17年の軌跡を辿る。
PROFILE|プロフィール

⼤浦 雲平
「CLOUD LOBBY」創設者兼デザイナー
2003年にベルギー・アントワープ王⽴芸術アカデミーに留学後、2006年パリに渡り、パターン学校A.I.C.Pにてレディースパタンナー資格を取得。「Haider Ackermann」「Veronique Leroy」「Lemaire」など数々のアトリエで研鑽を積み、2013年に自身のブランドを創設。一人で手縫いで制作するところから始まり、コロナ禍以降に受注生産に加えて卸も開始した。現在はポップアップや、レストランで行うワイン×フード×ファッションのプレゼンテーションなどを通して、「CLOUD LOBBY」の物語を紡いでいる。
まず、ファッションとの出会いについて聞かせてください。幼少期からデザイナーを志していたのですか?
高校まで野 球少年だった僕は、昔から洋服が好きでした。ただファッションではなく、デザインという広義な意味でクリエーションとモノ作りを学びたかったため、東京造形大学の室内建築を専攻しました。