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2023.01.28

ポートランドの主婦が世界規模のブランドに育て上げた「Columbia (コロンビア)」85年の歴史と進化に迫る

1938年にアメリカ、オレゴン州ポートランドで誕生した「Columbia(コロンビア)」。誰もが知るブランドだが、その85年の歴史をひもといていきたい。さらには「Columbia Black Label(コロンビア ブラック レーベル)」という日本独自のラインについても、株式会社コロンビアスポーツウェアジャパンの内藤教之さんと立花祐樹さんにお話を伺った。

Columbiaのマザーと呼ばれたガート・ボイルという人物

「Columbiaは1938年にアメリカ、オレゴン州ポートランドで生まれたブランドで、2023年で創業85周年になります。1938年にドイツにいた創業者がアメリカに移り住み、帽子問屋の権利を買って、コロンビアハットカンパニーという会社を興したのがルーツです。
のちに創業者の娘で、主婦だったガート・ボイルという人物が社長に就任。彼女こそがColumbiaを世界規模のブランドに育て上げ、Columbiaのマザーと呼ばれる存在となります。ガート・ボイルは2019年95歳で亡くなるのですが、その直前まで会長職についていました」
Columbiaの第二創業者とも言われるカート・ボイル。創業者である父を亡くした後、彼女の夫が創業を受け継ぐが数年後に夫も先立ち、彼女が経営者となる
Columbiaの第二創業者とも言われるカート・ボイル。創業者である父を亡くした後、彼女の夫が創業を受け継ぐが数年後に夫も先立ち、彼女が経営者となる

おいしかった料理は忘れてしまうが、まずかった料理はいつまでも覚えている

「ガート・ボイルはアイデアウーマンで、1980年代~1990年代末頃まで社長であるガート・ボイル自らが広告に登場しています。彼女は『おいしかった料理は忘れちゃうけど、まずかった料理はいつまでも覚えているでしょ、だから私は広告に出るのよ。』と言い、モデルではなく主婦だった彼女が、ウィットに富んだ、インパクトを持たせた広告に出続けました」
ガート・ボイルが自ら被写体となった1980年代〜1990年代の広告。インパクトと共に当時のさまざまなColumbiaのヒット商品が並んでいる
ガート・ボイルが自ら被写体となった1980年代〜1990年代の広告。インパクトと共に当時のさまざまなColumbiaのヒット商品が並んでいる

Columbiaの2つの特徴と3つの重要アイテム

Columbiaを語るうえで2つの理念と、85年の歴史の中で3つの重要アイテムがある。ここからはそのお話を内藤教之さんにしてもらった。
「Columbia創業からのブランドの特徴というものが2つありまして、1つは適正価格にこだわるということ、もう1つはオリジナルのアイテムやテクノロジーを作っていくということです。
適正価格というのはガート・ボイルが主婦だったということが大きいと思うのですが、アウトドアで使うアイテムはそれなりに価格が高いですよね。たくさん子どもがいるような家庭で、そういったものを買いそろえるとお金もかかります。お求めやすい価格で商品を作るという考え方が根底にあり、適正価格にこだわり、家族でアウトドアを楽しんでほしいという思いがあります。
もう1つのオリジナルのアイテムやテクノロジーというのは、『マルチポケットフィッシングベスト』や『バガブーパーカ』というColumbiaが初めて作ったアイテムやその後の素材開発などがあげられます。ここからはこのアイテムについてお話させていただきます」
1960年に誕生したブランドを代表する名品「マルチ��ポケットフィッシングベスト」。水にぬれないように短めに設計された着丈。元の複数のフラップポケット、ロッドを固定するループといった特徴的なディテールがすでに採用されている
1960年に誕生したブランドを代表する名品「マルチポケットフィッシングベスト」。水にぬれないように短めに設計された着丈。元の複数のフラップポケット、ロッドを固定するループといった特徴的なディテールがすでに採用されている
「フィッシングベストは、Columbiaがパイオニアでブランド代名詞的なアイテムの1つです。このアイテムは釣り好きの旦那様のために、ガート・ボイルが手作りで作ったというのが始まりです。現在も、もちろん定番アイテムとしてアップデートされているのですが、 形としては大きく変わっておらず、1960年に作ったこのアイテムがフィッシングベストのスタンダードになっています」
Columbiaを飛躍させた「バガブーパーカ」。アウターからインナーをジップで簡単に脱着できるインターチェンジシステムは今でこそよく見られる仕様だがColumbiaによって作られたものだ
Columbiaを飛躍させた「バガブーパーカ」。アウターからインナーをジップで簡単に脱着できるインターチェンジシステムは今でこそよく見られる仕様だがColumbiaによって作られたものだ
「さらに、Columbiaの飛躍を支えたのが1986年に発売された『バガブーパーカ』です。アウトドアの基本的な着こなしであるレイヤリングを1着のウエアで実現するという発想から生まれた、インターチェンジシステムという仕様で、100万枚以上売り上げる大ヒットとなったアイテムです。
ナイロン製アウターとフリースのインナーは、ジップで簡単に脱着できるようになっており、それぞれ単体でも着用可能で、別売りのダウン入りインナーに付け替えることもできます。また、ポップなカラーリングや大胆な配色の切り替えで街着としても使えるため、アウトドアウェアをタウンウェアとして取り入れる先駆けとなった画期的な1着です」
「バハマシャツ」は吸水速乾機能、通気性を高める背面ベンチレーションや袖をロールアップして固定できるループ、特徴的な胸ポケットがクラシカルな雰囲気のデザインで、キャンプやタウンユースでも人気のあるアイテムだ
「バハマシャツ」は吸水速乾機能、通気性を高める背面ベンチレーションや袖をロールアップして固定できるループ、特徴的な胸ポケットがクラシカルな雰囲気のデザインで、キャンプやタウンユースでも人気のあるアイテムだ
「そして3つ目の『バハマシャツ』は、1990年代にフィッシング用としてリリースされたシャツ。当時はまずアメリカで大ヒットしました。プライスもお求めやすく、吸水速乾素材と背面のベンチレーション機能も快適で、日常着として着る方も多いアイテムです。日本でも最近またファッションとしてすごく人気で、フィッシングやアウトドアのカテゴリーを超え、たくさんの方に着てもらえる存在になりました」
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