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2023.04.20

「ドキドキ」を可視化するイヤリング型のウェアラブルデバイス「e-lamp.ONE」を開発:株式会社e-lamp.

近年、さまざまなウェアラブルデバイスが各社から発表されているなか、株式会社e-lamp.(イーランプ)が4月2日、イヤリング型のウェアラブルデバイス「e-lamp.ONE(イーランプ ワン)」を販売開始した。
e-lamp.ONEは、人の心拍を「ドキドキ」として可視化する点が大きな特徴だ。耳たぶにセンサ部分を取りつけることで、心拍を検出。心拍数に連動してイヤリングが明滅し、心臓からの血液量に合わせて、LEDの色が青、緑、赤と変化して光る仕組みとなっている。
自分自身を脈拍で表現したり、他者と心拍情報を共有して楽しんだりすることで、感情の共有を促進するような、新たなコミュニケーションのきっかけを生み出そうとしている。
e-lamp.ONEを開発したのは、株式会社e-lamp.代表の山本愛優美さん。現役大学院生として研究を行う傍ら、事業に取り組んでいる。
そこで今回、山本さんに創業のきっかけからe-lamp.ONEの開発エピソード、今後の展開や実現したい世界についてまで聞いた。

生体情報を可視化して共有するプロダクト「e-lamp.ONE」

もともと起業家を志して、地元の北海道で「高校生起業家」として活動していた山本さん。人の心拍を可視化するというe-lamp.ONEのコンセプトは、その後の進路に自身が向き合った際に生まれたという。
「私は高校生の頃からビジネスに取り組んでいたのですが、自分の年齢によらず人生の中でずっと探求していきたい価値観は何だろう、と考える機会がありました。そのとき、私は『ときめき』という感情に動かされて、ものづくりやプロジェクトに取り組んでいたことに気づいたんです。そこで、ときめきについて大学で研究したいと思いました。
そして、大学2年生になったときに、ときめきはもちろん、ポジティブな感情をベースにしたコミュニケーションデザインができないかと考えるようになりました。そのなかで、生体情報を人に可視化して共有するプロダクトをつくることで、自分自身の感情を他者に共有できるのではないかと着想しました」
プロジェクトは2020年からスタート。当初、デバイスはイヤリング型ではなく、手のひらに載る動物型や、表情によって色が変わる間接照明など、いくつものプロトタイプを考案したという。さらに、デバイスで「推定する感情」についても改めて検討が行われた。
「ときめきを具体的に推定することには技術的な難しさもあり、ときめきと関連性の高い『ドキドキ』を推定することにしました。また、さまざまな場所で使えるウェアラブルデバイスを模索した結果、現在のイヤリング型になりました」
e-lamp.ONEは、クリップとセンサーを固定する形にして、耳たぶにつけやすく取れにくい構造となっているのが特徴だ。また、一般的なイヤリングとしても見える「30ミリ」という大きさにこだわった設計となっている。
そのうえで、開発にあたって一番配慮したのは「倫理的な課題」だったと話す。
「将来的な話として、私たちは今後e-lamp.ONEをきっかけに、生体情報を他者と共有するコミュニケーションを当たり前の選択肢にしていきたいという思いがあります。それを牽引していきたいと考えている企業だからこそ、慎重な配慮が必要であると考えています。
たとえば、e-lamp.ONEを強制的につけさせられ、感情を見せることを強要されるようなケースは、倫理的に絶対良くありません。そのため、あくまでユーザーの主体性に基づいて体験してもらえる販売の仕方や、ブランディングについて試行錯誤しました」
こうした倫理的な問題を視野に入れながらも、心拍をベースにしたコミュニケーションを生み出すことは「チャレンジングでワクワクすること」だと意気込む。
「心拍を他者に共有するコンセプトは、先行研究やアート作品の中ではすでに提案されています。ただ、ウェアラブルデバイスとして製品化されている事例は世界的にも多くないと思います。
どんなに自分の感情を伝えたいと思っても、言葉や表情だけでは伝えきれない想いがあると思います。自分の過去の経験でも、誰かと一緒にいて、すごく楽しいとか、素敵だなと思っているのに、それが相手には伝わらないことがありました。そうした感覚を少しでもスムーズに伝わるようにしたいと思っています」
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#Wearable Device
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