サステナブルな社会を目指すために、ファッション業界はさまざまな努力を続けている。リサイクルやリユースに加え、アップサイクルという言葉も耳にするようになってきた。さらに、いまでは業界を超えた相互的な取り組みも展開されているのはご存知だろうか。
興味深いのは、なぜ食品に注目したのかだ。業界を超えた取り組みの背景には何があったのか。今回、FOOD TEXTILEプロジェクトメンバーの都築里帆さんと営業部長の宮尾英二さんにお話を伺い、本プロジェクトの取り組みを深掘りした。
PROFILE|プロフィール
宮尾 英二(みやお えいじ)
1998年入社、八部一課(製品部門)に配属。
アパレルメーカー向けを中心にした営業に従事。
フードテキスタイルの製品ビジネスを担う。
PROFILE|プロフィール
都築 里帆(つづき りほ)
2017年よりFOOD TEXTILEプロジェクトを担当。
残渣提供元となる食品関連企業や農家とのやりとりや、FOOD TEXTILEを採用いただくブランドとの企画・進行等を担う。
ファッション業界を見渡して
御社のホームページには、「ライフスタイル提案商社」とあります。どのような活動をされていますか。
宮尾弊社は1841年に創業をし、初代の豊島半七が綿を売り買いする綿花商として始まりました。いまでは180年 を超える歴史のなかで、繊維原料から製品にまで取り扱いを拡大して、ファッション産業の川上、川中、川下のすべてを総合的に担う企業へと発展しています。
現在は、従来の綿花や生地、糸の開発・売買やアパレルブランド様のOEM・ODM事業に加えて、最近では自社ブランドによるD2C、アパレル・食品を扱うECモールの運営など、糸へんを中心に皆様のライフスタイルに関わるものなど、幅広く展開しています。
社内では、環境問題に対してどのような意識が共有されていたのですか。
宮尾弊社は30年前から木材由来の繊維「テンセル」の使用や、オーガニックコットンの普及プロジェクトである「ORGABITS(オーガビッツ)」にいち早く取り組んできた歴史があります。 これらのサステナブルな素材やプロジェクトを始めたきっかけは、私たちがファッション業界の川上から川下まですべてに携わってきたことで、環境や人に対する負荷の高さを目の当たりにしてきたことがあります。そのため、環境問題や課題に対して解決を目指す取り組みが現場から提案されることも多いのが、弊社の特徴 になります。
異業種交流会での出会い
FOOD TEXTILEを立ち上げられた背景を教えてください。
都築このプロジェクトは2015年から始まりました。そのころのファッション業界はファストファッションが流行し、大量生産で売れ残った商品は廃棄するのが前提でした。低価格でなければ手に取ってはもらえず、価値あるものすらも低価格で販売しなければならない状況で、物の価値と価格がマッチしない業界に本プロジェクトのリーダーの谷村佳宏が当時閉塞感を抱いていたようです。
商品の価値や新しいファッションの楽しさとは何かを考えていくなか、谷村が異業種交流会に参加したことで大きな転換点を迎えます。
食品メーカーから、やむを得なく廃棄しなければならない食品の処理に悩んでいるという話を聞き、それなら私たちが持っているネットワークを利用して解決できないかと考えた結果、残渣から染料を作るというアイディアが生まれました。
廃棄される食品を提供されるパートナーは、どのように選ばれているのですか。
都築最初に大手食品メーカー様からお話をいただきまして、事業を開始しました。
現在ホームページ上では、パートナー企業様を20社ほど掲載しています。個人の農家さんとも契約を結んでいますが、やはり事業として継続していくためには、一定量の食品残渣が継続して出てしまう規模の農家さんになりますね。
ありがたいことに、自分たちの大根やキャベツが余っているから使ってくれという話を持ち込まれる企業様もいらっしゃいます。パートナー契約を結ぶ基準としては、私たちのコンセプトに共感いただくことが前提で、自分たちが生産したものに対する強い思いがある企業様になります。