都内有数の進学校でありながら藤原ヒロシ氏に制服のデザインを依頼するなど、驚きのプロジェクトを展開する青稜中学・高等学校。2021年には「メンズビオレ」の自動販売機を学校内に設置した。次々と斬新なプロジェクトが生み出す意図を、話題の校長である青田泰明氏に伺った。
挑戦者たる姿勢やマインドを制服に落とし込みたい
東京都品川区にある私立青稜中学校・高等学校。同校の3代目校長としてメディアなどに取り上げられることも多い青田泰明校長。校長代行時代には同行の制服デザインを「ルイ・ヴィトン」や「ブルガリ」などとのコラボを手掛け、90年代の裏原ブームを牽引した藤原ヒロシ氏に依頼し、大きな話題となった。そんな校長が制服のデザイン依頼についてこう語ってくれた。「元々、藤原ヒロシさんとは仲良くさせていただいていて、食事の席でヒロシさんに “学校の制服のデザインされたことありますか?” と伺ったら “ないね” とおっしゃったので、依頼してみたら “いいよ” とふたつ返事で快諾いただきました。ヒロシさんは、僕たちが学生の頃から数々のハイブランドとのコラボ を手掛けるなど、挑戦を続けてきた方です。常に “挑戦者” であるヒロシさんに制服のデザインを手掛けて欲しかったという思いはありました。
それは本校の教育の信念に “挑戦” という言葉が出てくるから。そのキーワードやマインドを、生徒たちがいつも着る制服に落とし込んでもらいたかったのです。制服デザイナーも色々いらっしゃると思いますが、それこそヒロシさんは初めて制服を手掛けるので、挑戦するというコンセプトに合致すると思いました。
ヒロシさんはフレキシブルな発想で、さまざまな提案をしてくれました。最初はワイシャツとブレザーとパンツとスカートを……なんてシンプルに考えていましたが、重ね着するんだったらこんなアイテムもあるといいよね、なんてアイデアを沢山いただいて、ポロシャツやベスト、フーディやジャージ……結局、スクールバッグに至るまですべて監修していただきました」
青田校長が学校に制服デザインを藤原ヒロシ氏に依頼すると提案した時にも、自分たちと同世代の先生は「あの、藤原ヒロシさんに!?」という感じで驚かれながらも、賛成してもらったとのこと。
「生徒たちも制服が変わるということで、特に女子は喜んでいました。男子も重ね着ができるし、特にフーディが好評のようです。やはり我々世代の保護者の方からも『えっ!? 本当に藤原ヒロシさんが』などと好意的な意見をいただき、中には『藤原ヒロシさんに会えるんですか?』なんて保護者もいたほど(笑)。生徒からも保護者からも良い反応が多くて、取り組んでよかったなと思いました。
少し残念だったのは、生徒たちに藤原ヒロシさんの認知度が低かったこと。それをヒロシさんに伝えたら『逆にそれでいい んじゃない。いつか自分の存在に気づいたときに、また楽しんでもらえるし。知らないで、いい制服だなとか思ってくれたら嬉しいよ』と言ってくださったのが印象的でした」
自分たちの時代は決まった制服を着ていたけど、ワイシャツやポロシャツ、ベストなどアイテムを多くしたことで、選択肢を与え、重ね着などして自分たちのユニークを作っていくことが今回の大きなコンセプトでもあったそう。制服を着こなすことで学校生活の日常の中に、クリエイティビティを落とし込みたいという青田校長の願いが込められている。
無意識のジェンダーバイアスを是正する取り組み
制服デザインの他にも青田校長のプロジェクトには注目が集まっている。校内に「メンズビオレ」の自動販売機を設置したのだ。青田校長はその意図もこう語ってくれた。