昨今、若年層へのファッションにおけるプロモーションには、インフルエンサーマーケティングがもはや必須となっている。最近では、単純にインフルエンサ ーの人気を活用するというだけではなく、インフルエンサーと密に連携したビジネスモデルが望まれている。
韓国発のECプラットフォーム「NUGU」がとる手法もまさにそれだ。インフルエンサーとマーケティングチームが一体となって進めるビジネスモデルは多くの若者の人気を集めている。そこで今回は、NUGUのビジネスモデルとインフルエンサーマーケティングのさらなる可能性について、NUGUの事業を総括するパク・ハミンさんにお話を伺った。
過去に韓国で8〜9年ほどファッションeコマースの事業をしており、韓国と日本でPOP UPストアを主催したことがありました。その際にPOP UPストアのスタッフとして参加されていた方が大変スタイリッシュで、ご挨拶をしてInstagramアカウントをフォローしたところ、なんとフォロワー数が8万人もいらっしゃる方でした。そのフォロワー数であればインフルエンサーとして活動されていてもおかしくないのにも関わらず、POP UPストアのスタッフとして働いていることに違和感を覚え、さらにいろんなお話を聞くなかで、日本のインフルエンサーマーケット市場に関する調査と可能性について考えるきっかけとなりました。
すると、韓国はインフルエンサーコマースの市場がすでに盛んであり、販売プラットフォームなどのシステムが整っているのに比べて、日本は韓国の東大門市場のような商品ソーシングのインフラが確立しておらず、販売サイトもまだ小規模だと感じました。これについて再度考えた結果、商品ソーシングと販売サイトさえ整えれば事業化できる可能性が十分にあると判断し、それに向けて動き出しました。
NUGUは、インフルエンサー基盤のファッションとライフスタイルコマースのプラットフォームです。一番大きな特徴は、単純にインフルエンサーにショップをオープンしてもらうだけでなく、商品調達からコンテンツ編集、マーケティング、配送、カスタマーサービス、レビュー管理までワンストップサービスを提供している点です。インフルエンサーに“商品を販売するサイトを提供”するのではなく、事業のためにValue Chainを提供し、一つのチームで動いているという考えで、パートナーという存在となるよう努力をしています。 このような点からNUGUで活動されているインフルエンサーの方々から、他の類似したサイトに比べてNUGUとの協業はしっかり仕事をしている感じがすると高い評価を頂いているのだと思います。
このような努力により、デジタルコンテンツマーケティングでもNUGUは注目すべき目覚ましい成果を見せています。特にROAS(広告における費用対効果)が2,000%に達した点は確実に強みであり、今後もさらに精進していきたいと思います。
それだけでなく、他のeコマースの弱点ともいえるオフラインの部分でも、NUGUはPOP UPストア、フリーマーケット等のイベントを定期的に開催しています。日本のようにオフラインの比重が高い市場でonline to offlineは欠かせない要素であり、インフルエンサー市場でも差別化のために重要な要素であると考えます。
また、これらのすべての成果は結局のところ顧客のニーズが何かを把握し、その部分を満足してもらえるように熾烈的に研究した結果だと考えます。現在の事業モデルは、やはり顧客がインフルエンサーのスタイリングを求め、そしてそのニーズをNUGUが満たすことで可能となっております。今後も顧客のニーズは引き続き変化し、私たちもそれに合わせて事業モデルを変えていく必要はありますが、顧客のニーズを把握し、それを満たすという基本的な考え方に関しては、これからも変わらず絶対に守っていきたい部分です。
一番大きな要因は、インフルエンサーと一つになって仕事をするチームシステムです。各インフルエンサーとともに仕事をしているチームは、全員が日本のビジネスにおいて経験豊富な人員で構成されており、何よりファッションとコスメコンテンツに対する理解度が高いメンバーです。
韓国と日本に2元化されている事業構造もまた、それによって不便が発生するのではなく、各自の強みを生かすことができるよう構成しました。日本のインフルエンサーが韓国を訪問して直接商品を調達したり、逆に韓国のインフルエンサーが東京にあるNUGUスタジオを利用したり等、必要に応じて各本部を最大限に活用し、最適な環境を提供しています。
単にフォロワー数が多いということより、フォロワーとの親密なコミュニケーションが可能なのか(エンゲージメント)ということが重要です。フィードにPRコンテンツがどのくらいあるか、またはライフスタイルに関するコンテンツが多いかどうか、またいいねの数やコメントの様子も参考にしています。コメント欄でファッションとコスメに関して、インフルエンサーとフォロワーが積極的にコミュニケーションをとっている方だとなお良いです。
全般的にいろいろなアイテムを準備し、シーズン毎に販売していますが、その中でもインフルエンサー(ディレクター)が直接企画し、販売するオリジナルアイテムは販売数が良い傾向にあります。インフルエンサー本人のアカウントからのアクセスが多い分、そのインフルエンサーとファンの繋がりが購買意欲に大きく貢献しています。また、NUGUのオリジナルアイテムを用意することで独自性を高め、他のファッションプラットフォームと商品の差別化を図っています。
社内にUI、UXデザイナーがおり、顧客の行動分析をもとにサイトページが構成されています。現在ページ露出商品及びバナーは、ランキング情報と顧客のニーズにより、自動で選別されています。NUGUでは非常に多くの商品が販売されているなかで、ファッションアイテムの特性上、人気のある商品はシーズンの変化とともに変わります。その時々に応じた、各顧客の好みを考慮した商品のおすすめ機能を重要視しており、引き続き精度を高めていく予定です。
顧客が注文した日から商品を実際に出庫する日までの期間を短縮させることを最大課題として尽力しています。海外配送のための物流センターでの入庫率と、梱包後の出庫率を高めるため、メーカーと商品管理を担当している部署で連携をとり、顧客が少しでも商品を早く受け取れるよう、入庫した商品から先に出庫する部分発送システムも早くに確立し、継続しています。
入庫が遅延する際は遅延メールを、発送時には発送メールをその都度送信し、カスタマーサービスでもお問い合わせがあった場合は、リアルタイムの情報をお答えしています。また、カスタマーサービスに問い合わせずとも、発送された商品はその瞬間からご自宅に到着するまで、リンクからリアルタイムで配送状況を確認することができるようになっています。
社内のコンテンツ企画チームが週単位で各SNSコンテンツの成果を分析し、さまざまなABテストを行いながら顧客のより良い反応が期待できるようなコンテンツを厳選しています。また、SNSコンテンツのトレンドに対する察知力を維持するため、新しいチャンネルに常に関心を持ちながら、持続的に発掘しており、各チャンネル特性に合ったコンテンツを企画しています。
韓国ファッションに関心の高い層からのアクセスが一番多いので、年齢層は20代、性別は女性の会員率が高いです。プラットフォームはアプリの累積ダウンロード数が50万件を超え、またMAUも160万人まで増加しました。NUGU公式Instagramのフォロワー数は44万人を超え、業界最高レベルとなっています。
最近は男性インフルエンサーの起用により、男性会員及び非会員購入が増加傾向にあり、新規顧客層の拡大が期待できます。
商品レビューの全体平均点は4.3点とかなり高い水準となっています。単に点数が高いだけでなく、レビュー作成率も約7%で、同種業態の2倍以上となっており、そのうち写真付きレビューの比率は60%近くに迫っています。商品レビューはそのアイテムを発信したインフルエンサーにとってはもちろん、担当チームにとっても大変参考になっており、お客様が「写真を上げてでもほかの人たちに必ずおすすめしたいアイテム」をより多く提供することを目標としています。 ちなみに、良い面でもそうでない面でも、お客様が一番気にされている部分は生地ということは明らかです。
韓国のファッショントレンドも最近ではグローバルファッショントレンドを追いかける傾向が目立ちます。ADERERRORやGENTLE MONSTERのような韓国ブランドがグローバルブランドとして確立するケースも増えており、実際にグローバルファッション市場で韓国ファッションに対する関心が増加していることを感じています。
韓国と日本のファッショントレンドもまた、以前よりも明らかにその差が縮まっていると思います。 これは韓国と日本両国のファッション事業トレンドノウハウを築いているNUGUにとっても、良い環境の変化だと思います。
NUGUはインフルエンサーマーケットを超えて、日本最大のライフスタイルコマースプラットフォームを目標としています。これを達成するためには、MZ世代(ミレ二アル世代とZ世代を合わせた言葉)が好きな商品・コンテンツに対して持続的に敏感に反応し、多様な方式でプラットフォーム内に取り入れる必要があると考えています。そのために、2022年からはインフルエンサーブランド以外にも本格的に韓国/日本のファッションブランドの出店を進めており、韓国コスメブランドとのon/offline協業等も積極的に行っております。2023年には、このような事業領域拡大の可視的な成果が目に見えてくるのではないかと考えています。
この過程において一番重要な点は、直感ではなく、データとそれを分析する技術だと判断し、これはNUGUにおいても新たな挑戦課題です。会社全体の運営とNUGUサービスの判断基準をデータ基盤にするための投資と開発、テストを継続的に行っています。 誰でもNUGUを一度は利用したことがあるというその日まで、NUGUを見守っていただけますと幸いです。