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2019.12.27

布スピーカーでクラファンに挑戦中、ファッションテックデザイナーOlgaの思想と戦略

ファッションテックという言葉が現在ほど注目される前から、ファッションとテクノロジーの融合を実験的に推し進めてきたデザイナーがいる。それが、10年近くファッションテックデザイナーとして活動してきたOlga氏だ。
ファッションテックの領域を牽引する彼女の最新の挑戦が、「音を着る」布状のスピーカーの普及。現在、モック作品となるパーカーを提げ、クラウドファンディングに挑戦中だ。今回は、彼女のファッションテックへの思想とともに、「布スピーカー」プロジェクトについて語ってもらった。
PROFILE|プロフィール
Olga

Olga
ファッションテックデザイナー / 株式会社 ish 代表取締役
デジタルハリウッド大学大学院 助教
メディアサイエンス研究所 杉山知之研究室 研究員
ファッションテックラボ主宰

ロンドンの大学院にてファッションとテクノロジーの関係性を独自に学び、帰国後ファッションブランドEtw.Vonneguet(エトヴァス・ボネゲ)を立ち上げる。デジタルハリウッド大学大学院メディアサイエンスラボ助教に就任、同大学院ファッションテックラボ主宰。 国内だけでなくプリンストン大や文化ファッション大学院大学の留学生に向けても教鞭をとる。様々な企業のウェアラブルデバイスデザインや研究開発などを手がける、ファッションテックとデザインエンジニアリングに特化したデザイン会社ishを設立。​

▶︎主な受賞歴
総務省 異能ベーション ジェネレーションアワード部門 企業賞受賞 
経済産業省NEDO TCP 審査員特別賞を受賞。
デジタルハリウッド大学教員表彰受賞。
DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 「HEATER PARKER」ベストアイデア賞、CCCプラチナスポンサー賞受賞

ファッション×テクノロジーの世界との出会い

ファッションテックデザイナーとしての経歴を教えてください。
私はもともと文化学園大学の出身なのですが、そこで普通の服作りに疑問を感じていました。その当時はAdobe Illustratorが授業にも導入され始めた頃でしたが、まだ手でパターンを引くというのが主流。でも、イラレで直接すぐ引くことができる。それで、テクノロジーがファッションを変えていくと感じ、もっとテクノロジーとファッションの融合を勉強したいと思いました。でも、日本だと教えてくれる学校がなく、大学院でLondon College of FashionのFashion Design and Technologyというコースに進学しました。そこからずっと、ファッションテックに関する研究をしています。
修士号を取得して日本に帰ってきたとき、3Dから2Dにパターンメーキングを生成するというソフトウェアを作っている会社と一緒に、デジタルファッションショーというものをやりました。現在、話題のCLOは2Dから3Dという考え方ですが、当時使用したLSXというソフトは3Dから2Dという展開で、頭の中に3Dのイメージを作り上げるデザイナーらしい考え方で使えるものでした。それで、クロスシミュレーションという生地の特性をCGに反映させるという表現をし、東京コレクションに出ました。
当時はファッションテックという言葉はまだなく、ファッション業界の人に見せてもポカンとさせてしまって(笑)そこでファッション業界でテック系を前面にだすのは、あまり良いアプローチではないと気がつきました。それからは服が前面に出るようにして、裏側はテックで作られているというようしていきました。
渋谷のパルコが一時休業するときに自分のお店も一旦閉め、その頃からウェアラブルデバイスのデザインを担当するようになりました。そこで、柔らかいエレクトロニクスをどうやってファッションに、服のなかに落とし込むかという仕事やり始め、脳波計測ができるヘアバンド、ハプティクスを使ったベストといったプロジェクトに関わりました。その事業を法人化したのが、今のish.incという会社です。
ファッションテックという領域が注目を集め始め、求められる役割に変化を感じますか?
自分がデザイナーとしてやっていることは、ずっと変わらないんです。導電糸や導電性接着剤も、服作りをするときに今までは布や糸、ファスナーだったものが、新しい服を作るための要素が増えたというだけです。それらを取り扱うために、デザイナーとして考えておかなくてはならない、知っておかなくてはならないことを毎回、勉強して取り入れていく。面白い研究をしている人には、自分から会いにいくというスタイルです。

「音を着る」布スピーカーへの挑戦

今回の布スピーカーの開発のきっかけは?
産業技術総合研究所って、めっちゃ面白いんですよ。見せ方は専門用語が多くてとっつきにくいですが、面白い研究が多い。そこの展示会で、開発者の吉田学さんと何度もお会いして、ものすごく感動しました。でも正直なところ、服の領域でこの技術を使うのはもったいないなと思っていました、オーディオ業界で開発が始まるんだろうなと。でも3年くらい進展がなく、だったらと名乗りをあげました。
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#Wearable Device
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