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2024.07.04

パイナップルから植物性レザーを、セレブのためではないサステナブル素材

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サステナブルな商品に対して、どんなイメージを持つだろうか。確かに環境に良いという利点は浮かぶが、同時に従来製品より「割高」「耐久性や品質などで劣る」といった印象があるかもしれない。
繊維ファッション業界は環境負荷の高い業界として知られている。レザーという分野において、これら代替製品の欠点をカバーしつつ環境負荷も考慮していこうというのが、動物や石油を由来としない植物性皮革(ヴィーガンレザー)である。
日本をベースに、ヴィーガンレザーのスタートアップとして事業を営むピールラボにお話をうかがった。

パイナップルの葉からからレザーを作る

毎年パリで開かれている、技術革新をリードする企業やスタートアップのテック見本市Viva Technology(通称Viva Tech)。今年2024年も5月に開催され、会場内にはさまざまなアイディアを武器に、世界中からスタートアップ企業が集まった。その中で、日本のランドセルをブースに掲げて商品説明を行っていたのが、ピールラボである。
実際に手に取ってみたところ、植物由来の革で作ったランドセルはレザーそのもの。スウェード風に加工されており、それは本革のスウェードと見間違えるくらいの仕上がりである。
「パイナップルからできているんです」と同社創業者でありCEOのジム・ファンさん。パイナップル農家で廃棄物として捨てられる葉の部分を、「パイナップルハイド」と呼ぶレザー素材として使っているのだ。
パイナップル農園では、栽培の過程で根元に生える葉を毎回刈り取る必要がある。それらの葉は燃やすか、家畜の餌として処理されるが、燃やして廃棄すると二酸化炭素が出てしまう。家畜の餌にしてもその全てを処理できるわけではない。
「弊社でその葉を買い取ります。農園側は廃棄コストを削減できる上、収入も増えます。一方で、弊社は原料を安く仕入れられて、パイナップルハイドとして転用できます」
素材となるパイナップルの葉を安く仕入れることができるため、通常の動物性レザーと比べて20〜40パーセントほど安価に製造できるそうだ。よってサステナブルな代替素材としてパイナップルハイドを使用したとしても、製品にコストが乗らない。
互いに利益になる構造だが、そもそもなぜ数ある植物の中からパイナップルなのか。それは、「ヴィーガンレザーを作る際の鍵となるのが繊維」だからだ。パイナップルの葉は繊維が多い。
「パイナップルを素材として選び、そこから植物性レザーとして使える素材か結論を出すまでに、1年半ほど時間を要しました。ただし、パイナップルにこだわっているわけではなく、ココナッツの殻やバナナの茎など他の素材も検討中です」
さらに、パイナップルハイドは、牛革と比べて製造過程における環境負荷が低いという。
「レザーの製造過程における二酸化炭素排出量を比べたときに、牛革とパイナップルハイドは、後者はそれを40分の1に抑えることができます」
撮影/守隨 亨延
撮影/守隨 亨延

小学校6年間の使用に耐えうる素材

ここで再び、Viva Techのブースで目に留まったランドセルに話題を戻す。
ランドセルは、6年間を通じて毎日のように使われるため、耐久性を特に要する製品である。耐久性に優れる動物性レザーは向いているが、通学時の雨露にぬれて、そのまま放置されることもあるだろう。耐水性という点では植物性レザーに利点があるという。
「パイナップルハイドは、植物性素材で本革と比べて水に強いため、手入れなしでも10年間は色褪せしません。かつ、小学校の6年間に耐えうる品質を保持しています」
撮影/守隨 亨延
撮影/守隨 亨延
パイナップルハイドは、高温多湿の環境で1年ほど耐久性を試すジャングルテストなどを経て品質の向上を図ってきたが、試行錯誤も多かった。
「ランドセルはもちろん車のインテリア素材などとして使われるには、高温・高湿度の過酷な状況でも耐えうる高い基準をクリアする必要があります。その品質まで持っていくことが難しかったです」
現在では、ランドセルの他に、ソファーなど家具の素材としても需要があるという。レストランなどからは、その本来の機能性に加えて、サステナブルな素材を使っているという面白さからも興味を持たれることが多いそうだ。
撮影/守隨 亨延
撮影/守隨 亨延
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