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2023.12.04

イギリス発「PETIT PLI」の成長する子ども服、サステナブルなアイディアは日本の折り紙から

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成長の早い子供用の服や靴は買い替え頻度も高く、昨今の環境問題に対する課題からも決してサステナブルとは言い難い。近年では子供の成長に合わせて靴も成長するシューズブランドも出てきているが、今回はイギリス発“成長する子供服”の「PETIT PLI(プチプリ)」のファウンダー、ライアン・マリオ・ヤシンさんにインタビューを行った。
ファッション業界が抱える大量廃棄の問題やCO2削減へのソリューションとして誕生した「PETIT PLI」は新たなイノベーションを次々と起こし、さまざまな賞を獲得するなど、斬新なアイディアが受け入れられている。日本の折り紙から着想を得たという“成長する子供服”のメカニズムに迫る。
PROFILE|プロフィール
ライアン・マリオ・ヤシン(Ryan Mario Yasin)
ライアン・マリオ・ヤシン(Ryan Mario Yasin)

PETIT PLI 創業者

ウエアの寿命を延ばすことが環境破壊を食い止める一手となる

まずは、PETIT PLIを創業したきっかけを教えてください。
2017年に「PETIT PLI」はファッション・繊維産業から生じる廃棄物やCO2を削減するためのソリューションとしてスタートしました。
ファッション業界におけるイノベーションの必要性、持続可能性の必要性、高い倫理基準の必要性、そして若いユーザーであるリトルヒューマンズ(子供たち)に貢献するために作ったブランドです。
その使命は、業界の無駄、無関心、失敗をデザインし直すことでもあります。それは、子供と一緒に成長し、自然な成長から身体を保護してくれるものです。また、私たちはサプライチェーン全体を通して高い倫理観が守られているということを保証するブランドでもあります。
「PETIT PLI」のコンセプトは丈夫で環境に配慮した持続可能な素材を使用することにあります。私たちが生産しているウエアは7サイズ分成長するため、子供たちの親は今まで成長に応じて7種類のウエアを買う必要があったところ、1種類のウエアで対応できます。
リサイクル素材から作られた、「PETIT PLI」の成長する服“Clothes That Grow”は、人生の冒険のためにデザインされ、寿命が来たらまたリサイクルできるよう、長持ちするように生産されています。ウエアの寿命を9ヶ月延ばすことは、炭素と水をそれぞれ20〜30%削減することに繋がるなど、未来を見据えています。
7サイズ分をカバーする特殊技術を備えた“Clothes That Grow”
7サイズ分をカバーする特殊技術を備えた“Clothes That Grow”
“Clothes That Grow”のアイディアはどこからきましたか?
私にはヴィゴーという甥がいるのですが、全ては彼から始まりました。彼が生まれてすぐに新生児服を贈ったのですが、届いたときにはすでにサイズが小さくなっていたんです。
甥っ子の成長の早さを目の当たりにして、いかに大量の廃棄物が発生しているのかということを身をもって実感しました。私は航空エンジニアの研究と訓練を重ね、衛星構造を専門としていました。折り紙の研究を行っていたこともあり、この折り紙の技術をテキスタイルに応用しようと思いました。

“成長する子供服”のカギは上下左右に拡充する特殊素材

“Clothes That Grow”のメカニズムを教えてください。
一般的に、たとえば生地の端と端を持って左右に引っ張った場合、上下は縮みますよね? 「PETIT PLI」のデザインは特許出願中の特殊構造を衣服に埋め込むことによって、上下左右に伸びるという双方向の拡張を実現しています。この構造はオーセティック構造と呼ばれ、「負のポアソン比」を持つ素材となっています。
伸縮する秘密の構造がこちら
伸縮する秘密の構造がこちら
どのようなことにこだわって商品を作っているのでしょうか。
技術的なことで言えば、伝統的な工芸を斬新な方法で応用しようとすることであり、先進的な解決策を達成するために新しい技術を使用することもあります。
工芸は、人文科学の歴史において社会的・技術的要素を保存しているため、ブランドを前進させるために利用できる全ての工芸を使わなくてはいけないと信じています。私は個人的に日本の伝統工芸に対する配慮に魅力を感じていますね。
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