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2023.05.09

業界の垣根を越えた各社が連携、廃棄される紙資源や間伐材を紙糸にアップサイクル:一般社団法人アップサイクル

サステナビリティに対する注目が高まり、企業各社でも持続可能な社会を目指すために、リサイクルやアップサイクルなどの取り組みが進んでいる。しかし、具体的にどのような活動をすればよいのか、どう継続していくのかという課題に直面しているケースも多い。
そうしたなか、ネスレ日本株式会社、日清紡グループのニッシントーア・岩尾株式会社などをはじめとする14の企業や団体が、廃棄される資源や食品残渣(ざんさ)のリサイクル率向上を推進する企業連携プラットフォーム「一般社団法人アップサイクル」を2月7日に設立し、第1弾プロジェクトとして「TSUMUGI」をスタート(現在は17の企業・団体が参画)。企業などから廃棄される紙資源や間伐材を、紙糸にアップサイクルする取り組みだ。
同団体は、循環型社会づくりのハブとなり、参画した企業や団体が持っている資源や技術、ものづくりの力、サービスなどを結集することで、新たな価値を生み出すことを目指しているという。
そこで今回、同法人の事務局長を務めている瀧井和篤さんに、設立の経緯やプロジェクトの概要、今後の展開まで伺った。

一過性で終わらないプロジェクトをつくる

一般社団法人アップサイクルの設立は、瀧井さんのサステナビリティに関する取り組みから始まったとのことですね。
私は、現在もネスレ日本のコーポレートアフェアーズ統括部で、コーヒー製品などのPRを担当しながら、消費者のみなさんに製品の価値をどう届けるかを考える仕事をしています。そのなかで2021年、おいしさだけではなく、サステナビリティを絡めて魅力を訴求する企画ができないだろうか、と思い立ちました。
弊社では、製品パッケージの改善や、廃棄物の削減を目指して、サーキュラーエコノミーの構築に向けた取り組みを進めています。たとえば、「ネスカフェ」の詰め替え用製品や、「キットカット」の大袋製品はプラスチックの使用量を減らした紙パッケージになっています。一方で、工場で印刷が行われた際などに成形ロスとなる紙も発生しており、何らかの形で有効化できないか検討していたところでした。
そこで、当時はこれらやスーパーマーケットなどの店頭から回収した使用済み紙パッケージを使って、アート作品を作ったり、親子で工作をしたりするプロジェクトを行いました。結果として、参加者の方には好評だったのですが、プロジェクトとしては短期的なプロモーションに終わったという課題が残りました。
そのため「中長期に渡る持続的なプロジェクトができないか」と考えるようになり、私と日清紡グループさんにつながりがあったことから、ディスカッションを重ねて「廃棄された紙を使って繊維を作れないか」という話になりました。
さらに、日本には紙糸というものがあることを知りました。もともとは和紙などを活用して作られている糸ですが「廃棄された紙でも糸にできないだろうか」と考え、プロジェクトがスタートしました。
実際に紙糸にするまでどのような工夫や苦労があったのでしょうか。
2021年3月頃から約1年かけて、再生紙の厚みや、糸にする際の細さや強度などを試行錯誤しました。一番大変だったのは、包装材料を使っているので、パッケージやインクの色が残らないようにすることでした。
また、再生紙を100%活用した紙糸が理想ではありますが、現時点では他の材料(針葉樹など)と掛け合わせています。そのなかで、できるだけ再生紙の比率を上げるための調整にも苦労しました。
最初は糸にならずに切れてしまうこともありましたが、やがて一定の品質を保てるようになり、2022年の2月に日清紡グループさんと弊社でアップサイクル衣服の製作を行い、具体的には、「ネスカフェ」の直営店のユニフォームなどとして活用しました。
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#Sustainability
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