Fashion Tech News symbol
2023.04.24

天然素材と伝統技術が生んだ“土に還る服”とは? 日本発「WACRA(ワクラ)」が目指すゼロ・ウェイストなファッション

リンクをコピーしました
1996年にオーストラリアの首都・キャンベラではじまった、ゴミをゼロにすることを目標に掲げた運動「ゼロ・ウェイスト」。今の「サステナビリティ」のムーブメントにもつながる、世界が最も関心を持つ取り組みのひとつだ。
この日本国内においても、まさしくゼロ・ウェイストなファッションを目標に掲げるファッションブランドが注目を集めている。石油原料の化学繊維などは一切使用せず、日本伝統の文化でもある和紙を糸に用いることで、不要になっても土に還る服を生地から開発・販売をするブランド「WACRA(ワクラ)」だ。
2022年10月にスタートしたクラウドファンディングでは、日本の法被(はっぴ)を現代風にアレンジした新感覚のアウター『和紙綿羽織』が、そのコンセプトやデザインにより多くの支持を得て、目標を大きく上回る金額の獲得を達成している。
今回は、ファッション業界での確かな実績を持ちながらもワクラを立ち上げ、その話題の中心となっている同社代表の赤松 親さんにインタビュー。和紙を使った土に還る服やブランド立ち上げの経緯について、そして同氏が考えるゼロ・ウェイストを見据えた今後の展望などを聞かせてもらった。

日本の高い技術・技工を知ってもらいたいという思いが生んだブランド

話題のアウター『和紙綿羽織』は、最先端の繊維技術と職人の技が生み出した、和紙と綿のハイブリッド糸によって織られた生地を使用。素材の持つ吸水速乾性や消臭性、抗菌性、UVカットなどのさまざまな機能を生かしつつ、日本伝統の法被から着想を得たデザインにすることで、体型や性別を問わず誰が着ても様になるという新感覚のアイテムだ。
何より注目すべきは、天然素材だけを使うことで最後には土に還る、という点。十分に使用して着ることがなくなった際には、廃棄するのではなく、きちんと回収し自然に還すことができるという循環型のウエアでもあるのだ。
和紙と綿を合わせたハイブリッド糸を使った、法被のようなデザインが特徴の『和紙綿羽織』は、天然繊維100%で土に還る服として注目を集め、クラウドファンディングサイトでも話題に
和紙と綿を合わせたハイブリッド糸を使った、法被のようなデザインが特徴の『和紙綿羽織』は、天然繊維100%で土に還る服として注目を集め、クラウドファンディングサイトでも話題に
まずは赤松さんに、ワクラを立ち上げた理由と『和紙綿羽織』が誕生するまでの経緯をうかがった。
「もともとアパレル業界にいて、その後独立してから出会った愛知県にある糸工場さんが、消臭加工糸の特許技術を持っていたんです。素晴らしい糸を作ることができる高い技術ではあるものの、コスト面の問題などで日本のアパレル企業には採用してもらえないという悩みを抱えていて、『じゃあ僕がその糸を形にして、世の中に知ってもらおう』と思い、2019年8月にワクラを創業しました。
ワクラの社名は、“ワ”は日本の“和”から、“クラ”は技術や技工という意味のある“クラフト”から取っており、また“クラ”は日本の“蔵”という別の意味もあって、日本の素晴らしい技術や技工が詰まった蔵として、それを世界に発信していければという思いも込めています」
日本の技術・技工を世界に届けたいという思いで会社を立ち上げたという赤松さん。その思いは、幼少期からの憧れもあるという。
「幼少期、父親の仕事の関係でブラジルのサンパウロで暮らしていた時期があって、その頃から日本への憧れがありました。日本の文化もそうですが、製品の安心感や安全性、きめ細やかな作りというのは素晴らしいと感じつつ、それをもっと日本人がしっかりと活用すればいいのに……という思いがずっとあって。
ファッションも同様で、海外の安価なファッションが主流となるなか、日本の企業がただその流れに乗ってしまうのはもったいないなと感じていました。海外で暮らした経験があったからこそ、そうやって日本のファッションを俯瞰することができたのかもしれません」
ワクラはそんな強い思いから生まれた。話題となっている『和紙綿羽織』も、和紙という日本伝統の素材に出会ったことで生まれたという。
1 / 2 ページ
この記事をシェアする
リンクをコピーしました