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【連載インタビュー】3DCG高校生「Saya」から考える、バーチャルヒューマンにおけるファッション:TELYUKA

デジタルファッションの時代」連載の第4回は、3DCGアーティストユニット「TELYUKA(テルユカ)」にインタビューし、バーチャルヒューマンとファッションの関係性について伺いました。
TELYUKAは、TEL(石川晃之さん)とYUKA(石川友香さん)夫婦の二人によるユニットであり、2015年にフォトリアルなバーチャルヒューマンである、3DCG高校生「Saya」を発表して大きな注目を集めました。
その後もTELYUKAはSayaの身体や服のアップデートを続けながら、さまざまなイベント・メディア出演のほか、企業や団体とのコラボレーションを実施し、バーチャルヒューマンの可能性を追求しています。
TELYUKAの二人は、Sayaの服をどのような想いで制作しているのでしょうか。服作りにおけるこだわりから、バーチャルヒューマンの可能性、そして今後の目標まで、お届けします。

服飾経験なしでバーチャルヒューマンの服を作る難しさ

はじめに、バーチャルヒューマン「Saya」の服は、どんなツールで制作されているのでしょうか。
TELSayaの服を制作するメインツールとして「Marvelous Designer」を使用しています。これは自分たちが『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』(2016)の制作に携わらせていただいた際に、仕事として使うことになったのがきっかけなのですが、このツールを使用することで、服を表現する上での幅が大きく広がりました。
Sayaの発表当初は自分が服を制作していましたが、最近ではYUKAが担当しています。
YUKA私が「Marvelous Designer」を使いはじめた頃は、CGによる服の作り方はどちらかというと、シルエットに沿わせる意識で作っていたんですよね。それが作りやすかったこともあり、どうしてもボディコンシャス(身体のラインそのまま、または強調して表現すること)な服が多かったんです。
Sayaの服作りにおいてはシルエットをはじめ、美しさを追求したいという気持ちを強く持っていました。ところが、私たちはあくまで3DCGが専門であり、そもそも服を作ったり、服飾の勉強をしたりといった経験はなかったので「何をもって服としての美しさとするのか?」がわかりませんでした。
Sayaが「ミスiD 2018」に出演した際の衣装
Sayaが「ミスiD 2018」に出演した際の衣装
TELなのでまずYUKAは、パターンが載っている本を購入し、「Marvelous Designer」でそのパターンをトレースするなどして、CGに落とし込んで服を制作していましたね。
でも、こうしたパターンをそのまま用いても、上手くいかないことが多いんです。なかなか本と同じような結果にはならない。
もちろん、「Marvelous Designer」では、さまざまなパラメーターの数値を入れることで調整もできますが、大抵の場合、思いのままの表現をするためには感覚だけではなくて、どうしてそうなっているのか、ロジックを理解することも重要です。
YUKA理屈がわからないままだと、結局パターンを元にして作っても、途中から想像で作っていることと変わらなくなって、出来上がった服も安っぽく見えちゃうんですよね。
それは現実の服も同じだと思います。たとえば、アレキサンダー・マックイーンのジャケットは素人である私から見ても、とても美しいと感じます。それに対して私が作ったものはどうしても「お母さんが手作りしたジャケット」という印象になっていました。
そこで、いちから服飾について学ぶ必要があると考えたんですね。
YUKAそうですね。デザイナーさんやパタンナーさんなど服の専門家がどういう考え方で、どんな基準を設けて服作りを考えているかを知りたいと思い、まずは「パターンとは?」という服作りの基本から勉強しました。
そのなかで生まれた「そもそも服とは何か?」「素材の美しさとは?」「布と身体を包む間にある空気感とは?」といった疑問について、いろんな方に質問するようになり、今でも機会があるたびにお話を伺うようにしています。
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