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【リレーコラム】超訳・日本ファッション現代史とこれからのファッションについて(Yuri Ridwan)

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PROFILE|プロフィール
Yuri Ridwan(ユーリ リドゥワン)
Yuri Ridwan(ユーリ リドゥワン)

1994年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。グラフィックデザイナーとして活動する傍ら、ファッション関連の執筆や制作活動を行っている。
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日本のファッション現代史は70-80年代を前期、90-00年代半ばまでを中期、00年代半ばから10年代半ばまでを後期として区分けできます。前期は御三家[1]、中期は裏原カルチャーと00年代サブカルブランド[2]、後期はポストインターネットのデザイナーズブランド[3]を中心に構成されます。そして個人的な考察に基づいた意見ですが、日本のファッション史は2016年をもってひとつの終わりを迎えたと考えています。

フィルターバブルとストリートの終焉

ストリート発の細分化された独自のトレンドを長きにわたって維持してきた日本ですが、2011年〜2016年にかけて現在のInstagramが完成し、ファッションのトレンド発信はストリートスナップ(紙の雑誌、ウェブメディア)からInstagramに移行しました。編集者の審美眼によってキュレーションされた質の高いストリートスナップから、消費者のリアルな好みと人気力に基づいた民主的なトレンドになったかのように思われますが、Instagramを介したトレンドはすぐにSNSマーケティングという形で消費行動を操作するツールに成り替わりました。
ストリートの個々人による多様で個性的なスタイルは溢れかえる情報に埋もれ、より消費を推し進めようとするSNSマーケティングとウルトラファストファッションによって、トレンドはこれまで以上に高速に変移していきます。過去のトレンドを再トレンド化させることによって、ストリートから新しさを見つける必要がなくなるのです。
SNSでは好きな投稿をLikeするとアルゴリズムが好みを学習しひたすら好きそうな情報が供給されます。たとえば現在のY2Kという大枠のトレンドとそれに紐づく複数のマイクロトレンドがそれぞれの好みに合わせて供給され、人々はおのおのがもっとも受け入れやすい形でY2Kというトレンドを消費します。アルゴリズムによるフィルターバブル[4]に囚われると、Y2Kに当てはまらないスタイルは視界に入り込む余地もなく締め出されます。そのようにしてストリートから草の根的に生まれていたファッションは2016年に終焉しました。

情報開国とガラパゴスの終焉

デザイナー主体で発信されるファッションもまた、2016年以降に登場したブランドたちにはそれまでの世代にあったある種の共通意識、連帯のようなものが見られなくなったように感じます。大衆消費社会へと駆け上った前期、バブル崩壊から災害やテロに見舞われ暗澹たる世紀末を経た中期、そして再び震災の脅威とスマホの普及を経て完全なる情報社会となった後期。どの時代もファッションは個々の連帯によって系統やスタイルが生まれていました。しかしオンラインでリアルタイムに世界中のファッションを知れる現代では、その分ローカルでの連帯やこれまで閉じた環境だからこそ成立していたガラパゴス的発展が希薄になり独自の文化が醸成されにくくなっています。
そして何よりも大きいのが「プレイヤーの減少」です。国内市場が縮小し続けていることは明白なので、日本のファッションという文化を存続させるには輸出産業にならなければいけません。しかし世界に対抗できる日本の独自性は情報開国とストリートの終焉によって瀕死に追いやられ、その担い手たる若者は世界のトレンドをひたすら消費するだけになっています。かつてのように集団として束になってムーブメントやカルチャーを演出することが、共通意識を持ったプレイヤーの不足によって成り立たないというのが、わたしが認識する今日までの現状です。
一方で、日本の音楽やアートシーンを見てみると、コロナ禍という社会の大きな分断を通して「コレクティブ」という言葉をしきりに目にするようになりました。ここに日本のファッションが再び独自性を帯びる可能性が秘められているのではないでしょうか。近年、若手アーティストらが集結し自らギャラリー運営やキュレーションを行う「アート・音楽・ファッション」が絡み合うイベントが多発しており、そこにはファッションを志す若者も少なからず集まっています。その多くがオンラインのみで世界と繋がっていてもダメで、自らの身体で外に出て行かなければいけないことを理解しています。
振り返ってみるといつの時代も、ファッションは音楽やアートと共にひとつのカルチャーを形成してきました。だからこそ今再びその胎動を感じさせるコレクティブの存在に希望を感じると共に、自分もまた、自分にできることをやっていかなければいけないんだと、これを書きながら再認識しました。
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