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もう天候でバッグ選びを迷わない! CIEの「APPLY」sympatex®︎を使用した合理的選択

2026.05.07
都市生活では、雨を理由にバッグや持ち物を選び直す場面が思いのほか多い。そんな日常の前提条件に対し、日本発のバッグブランド、CIE(シー)が提示した答えが「APPLY (アプライ)」だ。
あえて完全防水を目指すのではなく、使い勝手やデザインとのバランスを重視しながら、“都市生活で必要十分な防水力”を志向したこのバックパックには、CIEの思想が色濃く反映されている。
ブランドのCEOであり、デザイナーでもある藤岡高志さんに話を聞き、このモデルが生まれた背景を探っていく。

PROFILE

藤岡 高志(ふじおか たかし)

LIAL WORKS INC. 
CEO/CIEデザイナー

サイズは写真のLとひと回り小さいSの2型で、カラーバリエーションはブラック、スモーク、デザートの3色展開。(写真左)「APPLY DAYPACK L(SMOKE)」W34×H47×D12cm 39,600円(税込) 、(写真右)「APPLY DAYPACK S (DESERT)」 W31×H42×D12cm 36,300円(税込)

都市生活の前提条件から導かれた設計思想

Cause In Effect(結果の中の原因)──これが、都市生活の前提条件からギアを設計するCIEのコンセプトである。
「私たちはプロダクトを完成させた時点をゴールとは捉えていません。その結果から次の原因が生まれるという循環そのものを、ものづくりだと考えています。
ひとつのバッグがどう使われ、どんな反応が返ってくるか。その結果を起点に、次は何を見直し、どこを更新すべきかを考えています」
アプライは、そんなブランドコンセプトをより明確に形にするために立ち上げられた。
「都市生活を前提に、使い手の行動や環境条件を整理し、その結果として必要な機能や構造だけを選び取ったハイエンドなシリーズです」
ハイスペックよりも、都市生活に必要な機能を選ぶ。CIEは素材選びでも合理性を重視する

天候でバッグを迷わない。そのための現実的な答え

では、そんなシリーズに新たにラインナップされたアプライはどのようなバックパックなのか?
「都市で暮らしていると、その日、雨が降るかどうかによって、持っていくバッグを選び直す場面が少なくありません。アウトドア系の完全防水のバッグはともするとオーバースペックになりがちで、重厚なデザインも普段の着こなしには合わないことも……。とはいえ突然の豪雨に見舞われることもあり、防水性が劣るバッグでは心もとない。そうした不調和や懸念の積み重ねがこのモデルの出発点になりました」
「目指したのは、天候でバッグ選びを迷うことなく、日常の動線の中で自然に使い続けられること。そのために必要な防水性と軽さ、デザイン性のバランスを見直しました」

ドイツ生まれの防水透湿メンブレンを採用

そんなバックパックを実現するためにCIEが目をつけたのが、sympatex®(シンパテックス)だった。
ドイツで開発されたシンパテックスは、防水性・防風性・透湿性を高次元で叶えるメンブレン素材だ。耐水圧は最大35,000mm、透湿性は20,000g/m2/24hと、本格アウトドアウエアにも使える性能を備えている。
さらに、3層すべてに100%リサイクル可能なポリエステルを使用し、フッ素化合物などの有害な化学物質を用いない環境配慮型素材であることも、この素材を選んだ決め手になったという。
シンパテックスは、メンブレンに微細な孔を持たない無孔膜構造のため、汚れや洗剤成分が目詰まりしにくく、長期間にわたって性能が低下しにくい。加水分解による劣化が起こりにくい点も耐久性の高さにつながっている
「バックパックは背負う構造上、傘を差していてもショルダーバッグやトートバッグよりぬれやすい。その点で、シンパテックスの優れた防水性は魅力的でした」
一方で、ウエア用メンブレンならではの難しさもあったという。
「通常のバッグ素材に比べると、生地が薄く、ハリやコシもやや弱い。そのため、バッグに使うには型崩れしやすくなるという欠点があったんです」
実際、アウトドアウエアの分野ではすでに実績のある素材でありながら、バックパックの外装素材として使われる例は多くない。そこでCIEは構造で補うという選択をとった。
「部分的にクッション材を入れたり、生地を重ねたりすることで、骨組みのような役割を持たせて補強しました。シンパテックスの特性を生かしながら、バッグとしての形を成立させることを意識しました」
シンパテックスはバッグの内部と外気の温度・湿度差が大きくなるほど、湿気の移動を促進する特性を持つ。そのため、天候や行動量が変化しやすい環境下でも蒸れにくい
防水性を高める工夫はディテールにも表れている。
「ファスナーにYKKのWATER-R加工を施しています。表面に撥水剤を塗布する一般的な加工とは違い、撥水剤の浴槽にファスナーを浸して、生地部分に撥水剤を含浸させるため、撥水性が比較的長く持続します」

完全防水を選ばなかった合理的な判断

ただ、前述した通り完全防水仕様ではない。
「CIEのバッグは立体的なカーブが多く、生地が重なる部分も多い。完全防水加工を前提にすると、デザインが大きく制約されてしまいます。加えて国内には、そのレベルの防水加工を安定して行える環境がほとんどありません。
そのため、手の届きやすい価格設定や都市生活での使いやすさを考えたとき、完全防水が必ずしも最適解ではないと判断しました。その代わりに重視したのが、日常的に使い続けられる快適性です」
背負い心地は軽く、ショルダーハーネスには荷物を入れたときの負荷を軽減するクッション材を入れるなど、使いやすさへもとことんこだわった。
「さらに背面メッシュには、吸水速乾性のある素材を使って汗による蒸れに対応しました」
ポケットのサイズや配置にも意図が見て取れる。
「昨今、小型化が進んでいる日常的な持ち物を、できる限り小分けして収納できるようにしました。ただし、デザインとしてデコラティブになりすぎないよう、ポケットの配置は必要最小限に抑えました」
前面ポケットは収納力の高い立体構造に(写真左) 。メインコンパートメント内にクッション材入りのPCスリーブを装備(写真右)
デザインはいたってシンプルで、機能を主張するようなパーツは省略されている。だからこそ、普段の服装にも自然となじみ、天候を理由にバッグを替える必要もなくなる。
アプライには何かにつけ無駄がない。必要十分な防水性を現実的な方法で成立させ、軽さや背負い心地、収納やデザインも過不足なく整えられている。
それは「日常使用を前提にした現実的な判断」を積み重ねた結果であり、ユーザーには、「日常生活の中でバッグ選びに迷わなくていい」という恩恵がもたらされる。使い手の判断やストレスを静かに引き受ける、都市生活者のためのバックパックの姿がここにある。

Text by Ryota Osujo

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