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【日本未上陸】パリス・ヒルトンも愛用──カナダ発の「テディベアシューズ」に込められた、大胆で優しいものづくり
部屋で過ごす時間を、もっと特別なものにしたい──。そんな願いを叶えるのが、カナダ・バンクーバー発のラグジュアリールームウエアブランド「KONTERFEIT(コンターフェイト)」である。
まるでテディベアに包まれるようなスリッパと、上質なラグを纏うかのようなローブ。そんなアイテムと過ごす週末は、少し大げさなくらい贅沢で、どこかユーモラスだ。
この「居心地のよいクチュール(Cozy Couture)」というユニークなコンセプトを掲げる「KONTERFEIT」の設立者、ジェームズ・ラムに、ブランドの哲学と創造の裏側について話を聞いた。
PROFILE
ジェームズ・ラム(James Lam)
KONTERFEIT 設立者
創作の原点は、“冒険”と“安らぎ”というコントラスト
「高級感と快適さ、アート性と実用性。そのすべてを“あえて”同時に成立させたかったのです」ジェームズは自身のブランド「KONTERFEIT」をそう定義する。
カナダ・バンクーバーで育った彼は、幼い頃からスノーボードで山を駆け巡る活発な少年である一方、雨の日には部屋でスケッチや手芸に没頭していた。冒険と静寂、力強さと柔らかさ──。そんな相反する要素の中に、彼は美しさを見出してきた。
絵画、縫製、デザインに親しんできた彼を突き動かしたのは、「まだこの世に存在しない何かを創りたい」という純粋な創作意欲。その情熱が、快適さとデザイン性を同時に満たすラグジュアリールームウエアという形で結実したのが「KONTERFEIT」なのである。
そして誕生したのが、ブランドの代名詞ともいえる“テディベアシューズ”だ。その抜群のインパクトから、一見するとSNS映えを狙ったアイテムに見えるかもしれない。しかし、その裏には綿密な設計と丁寧な手仕事が隠されている。


「もともとスリッパが大好きで、家にはたくさんのコレクションがあるんです。ある日、この最高の快適さをもっと面白く、アイコニックなものにできないかと思いつきました」
テディベアとスリッパを融合させるという、前代未聞のアイディアが生まれた瞬間である。
しかし、ぬいぐるみを実用的な履物にする道のりは平坦ではなかった。「最初は、テディベアをローファーにガムテープで貼り付けただけの試作品だった」と、彼は笑って振り返る。
特にこだわったのは、「着用したときの感覚」だ。足を優しく包み込む内部構造から、豊かな表情を生み出すぬいぐるみ部分の造形まで、数ミリ単位の調整が求められた。何十回もの試作を経て、素材、構造、縫製のすべてにおいて高級ラウンジウエアとしての完成度を追求した。今では、アートピースのような存在感を放つルームシューズへと昇華されている。
見た目の“遊び心”と、肌に触れた瞬間の“快感”──「KONTERFEIT」のルームウエアには、その2つが共存している。ブランド設立にあたりデザインとビジネスの両方を学んだ彼だからこそ、アーティスティックな感性と戦略的な視点が交差し、唯一無二のブランド哲学が生まれた。

快適なだけでは物足りない。けれど、アーティスティックなだけでは日常に馴染まない。その絶妙なバランスを体現する「KONTERFEIT」は、単なるラウンジウエアブランドではなく、新しいライフスタイルを提案する存在なのである。
“本物”を超えるフェイクファー。妥協なき素材選びと職人技
「KONTERFEIT」が掲げるもう一つの中核的な価値が、“クルエルティフリー”である。設立当初から「動物を犠牲にしない」という原則を徹底し、すべての製品で高品質なフェイクファーを採用している。
世界がパンデミックに揺れた2020年頃、理想の素材を求める道は困難を極めた。輸送網は混乱し、工場の稼働は停止した。しかし、その逆境こそがブランドの転機となる。
「どんな状況でも、理想の手触りを諦めない」。ジェームズと彼のチームはサプライヤーを何度も見直しながら、倫理的かつ極上の感触を持つ素材を粘り強く探し求めた。
その結果採用された最新のフェイクファーは、従来品よりさらに柔らかく、耐久性にも優れる。それは動物性の毛皮に引けを取らない、むしろそれを超える“ヴィーガンラグジュアリー”を体現しているのだ。
生産工程におけるクラフトマンシップも、決して妥協はしない。テディベアシューズの立体的な造形には、熟練の職人による精密な縫製技術とパターン構成が不可欠である。製品によっては50回以上の試作を繰り返すことも珍しくない。
ブランド名にある「KONTERFEIT」は、「偽物(counterfeit)」をドイツ語風にアレンジした言葉だ。ここには、ラグジュアリーファッションの“コピー文化”に対するユーモラスな批評精神が込められている。
「偽物に見える本物」──この逆説的なコンセプトは、現代ファッションへのウィットに富んだ問いかけであり、同時に、真摯なものづくりへの敬意でもあるのだ。
“怠け心”さえ、スタイルに変える未来
「ストリーミング配信を見ながらだって、ファッションショーはできるはずだ」そんな自由な発想のもと、今後はアップグレード版のテディスリッパ、ぬいぐるみとお揃いで楽しめるルームウエア、ラグジュアリーなバスローブ、さらにはビーチの視線を集めるサマーアクセサリーやタオルコレクションなど、多角的なライン展開が予定されている。
今期に向けては、肌触り・耐久性ともに従来の品質を超える新しいフェイクファー素材も開発中であり、ブランドの進化はまだ始まったばかりだ。
これらの製品開発は、機能性やマーケットリサーチではなく、常に“感覚”から始まる、とジェームズは語る。
「まず、『これを着たらどんな気分になる?』と自問することから始めます。感情に訴えかけるプロダクトでなければ意味がない。その上で、素材、フォルム、縫製のすべてを完璧に追求する。僕たちは“普通”は作りません。“大胆で、ラグジュアリーで、楽しい”。それだけをやるんです」
「KONTERFEIT」が多くのファンを惹きつけている事実は、名だたるセレブリティたちが愛用していることからも明らかだ。パリス・ヒルトンやその母キャシー・ヒルトン、人気ミュージシャン、スタイルアイコンたちが次々と製品を着用。かつて「MOSCHINO(モスキーノ)」で腕を振るったジェレミー・スコットもその独創性に共鳴し、自らコンタクトを取ってきたという。
しかし、ジェームズが目指すのは名声ではない。「誰かの“ぐうたらな時間”を、少しだけ幸せにすること」。それこそが彼の創作の原動力であり、「KONTERFEIT」というブランドの本質なのである。
大胆で、やさしくて、そして、ちょっと可笑しい。彼の“着るよろこび”を届ける挑戦は、これからも続く。
Text by ELIE INOUE














