

キャンプの荷物は、気づけば増えていく。あれもいる、これも使うかもしれない。その“もしも”をどこまで持っていくかで、荷物の量は大きく変わる。
キャンプ女子として知られる森風美がフィールドで実際に身に着けながら、その機能と実用性を検証する連載、キャンプ女子・森風美の「キャンプ服の実力」。第3回は、ニュージーランド発のバッグブランド「macpac(マックパック)」が、UL(ウルトラライト)ハイカーの聖地として知られるショップ「ハイカーズデポ」と共同企画したバックパック「Kete(ケテ)」を取り上げる。
PROFILE
森風美(もり・ふうみ)
1994年生まれ。幼少期からアウトドアに親しみ、慶應義塾大学在学中にソロキャンプの世界へ。フィールドでの実体験を軸にギアやウエアを選び、女性の視点からアウトドアの楽しみ方を発信。モデル・執筆・PRなど幅広く活動中。
引き算が生む、使い手の自由

登山用のバックパックには、ポケットやベルト、背面構造など、さまざまな機能が備わっているものが多い。使いやすさを突き詰めた結果として、完成度の高い形が出来上がっている。
だが、UL(ウルトラライト)の発想は少し違う。余計なものを削ぎ落とし、使い手が自分の旅に合わせて調整していく。その考え方をそのまま形にしているのが、今回の「Kete」だ。

「とにかく余計な機構が一切ついていないんです。まさにUL思考が貫かれているバックパックという印象ですね。シンプルだからこそ、使う側の自由度が広がるというか、“自分で使い方を決めていい”という感覚があります」

森さんがクルマを持っていない頃は、スーツケースに道具を詰めて電車でキャンプ場へ向かっていたという。「荷物は少ない派」で通してきた彼女にとって、このバックパックが提案する“引き算”の作法は、どこか懐かしく、そして新鮮に映ったようだ。
軽さと丈夫さを両立する独自キャンバス

Keteの性格を決定づけているのが、macpacが長年磨き上げてきた独自素材「AzTec® 8oz canvas」だ。ポリエステルとオーガニックコットンを高密度に織り上げ、独自のワックス加工を施している。
「生地には帆布のようながっしり感があるんですけど、ワックス加工のおかげで、しっとりとした独特のやわらかみがあるんです。見た目よりずっと軽くて、触るたびに質感がいいなと感じます」

ワックスが染み込むことで、撥水性と表面の耐摩耗性が加わる。使い込むうちに繊維がなじみ、経年変化が楽しめるのもこの生地ならではだ。
「キャンプだと地面に置いたりすることが多いですよね。普通の帆布だと少し気を使うところでも、これは気兼ねなく扱える強さがあります」
“ULの知恵”はキャンプで生きるのか? 4つの視点で検証
バックパックそのものが軽いことは前提として、その軽さと引き算の思想が、キャンプの動作や疲労感にどう影響するのか。森さんが4つの視点から検証した。検証1|パッキング力

アウトドアシーンでのバックパックにおいてもっとも重要なのは、やはり収納力だ。Keteは30Lを基準にしつつ、巾着部分を広げれば最大40Lまで拡張できる。
「30Lと聞いていましたが、実際に物を入れてみるとかなり余裕がありました。テントや寝袋、防寒着、レインウエア、お風呂セット、メイクポーチ、PC、水筒、行動食まで入れても収まります。1泊2日のキャンプやフェスくらいなら、これひとつで十分ですね」

軽いものを下に、PCは背中側に、水筒はサイドポケットに収めるなど、実際の旅の荷物を想定してパッキング。上部にはまだ余裕があり、帰りにお土産や増えた荷物を入れられるスペースもある。
「キャンプの帰りってパッキングが雑になりがちですけど、これなら全部受け止めてくれるサイズ感で安心でした。行きも帰りも同じようにきれいに詰めなくていいというだけで、外に繰り出す際のハードルが下がります」
検証2|背負い心地

多機能なバックパックに慣れた人ほど、Keteのシンプルさには少し面食らうかもしれない。登山用のバックパックにあるような、荷重を細かく調整するベルトはない。それでも森さんは「本当に背負いやすい」と語る。

「複雑な調整ベルトはないんですけど、不思議と背負いやすいんです。荷物がきちんと収まって、背中に自然に乗っている感じがあります。AzTec®素材がやわらかいので、荷物の形に合わせてなじんでくれるのもいいですね」

さらに、背面パッドは取り外し可能。休憩中には座布団代わりにでき、寝るときにはマットの一部としても使える。
「背中のパッドを外して、お尻の下に敷けるのがありがたいです。キャンプ中にそのままクッション代わりに使えるのは、ULのノウハウが詰まっているところだなと感じます」
検証3|使い勝手

Keteは一気室構造で、荷物の出し入れができるのは上部からのみとなる。横や前面が大きく開くタイプではないが、そのぶん構造はシンプル。
「上からだけ開く形なんですけど、開口部が広いので荷物の出し入れはしやすいです。巾着部分の動きもすごくスムーズで、開け閉めの際に引っ掛かりを覚えることも一切ありません」

また、前面にはループが並び、カラビナを使えば小物を自由に外付けできる。
「ランタンを下げたり、脱いだアウターを吊るしたりもできそうです。サイドポケットには水筒だけでなく、ハンマーやシートのような縦長のものも入れられるので、整理しやすいですね」
完成された収納スペースをそのまま使うというよりも、自分の道具に合わせて少しずつ整えていく。そこにKeteらしさが光る。
検証4|キャンプでの実用性

最後にキャンプでの実用性を見ていこう。森さんは、1泊2日のキャンプ道具が収まる時点で「実用性は十分」と評価する。
「1泊2日のキャンプ道具がしっかり収まるので、実用性はかなり高いと思います。ULスタイルのキャンプは少し特殊に感じるかもしれませんが、普通のキャンプの行動用リュックとしても使えますし、1泊2日の旅やフェスに行くのにもすごく使いやすいと思います」

全パーツを外せば約540g。胸ベルトや腰ベルトも取り外せるため、その日の荷物量や移動手段に合わせて調整できる。
「大げさじゃなくて、本当にシンプルなんです。自分の使いたいようにカスタマイズできるので、自分のスタイルに合わせた旅ができる。一緒に旅していける相棒になるんじゃないかなと思いました」
自由をパッキングして、旅に出る

Keteは、最初から使い方が決められているバックパックではない。必要なものを入れ、付けたいものはループに引っ掛けて、不要なパーツは外す。使いながら、自分のスタイルに合わせて変えていける。
「本当にシンプルだからこそ、自分好みに合わせていけるんですよね。身軽に旅を楽しみたい人にはすごく合うと思います」
今回の検証の様子は、動画でも公開している。実際のパッキング手順やAzTec®特有の風合いは、映像もあわせてチェックしてほしい。
Text by Tadayuki Matsui
Photo by Akinori Kawanishi
Original Movie















