2021.11.17

バーチャルヒューマン「Drip」がBFGUファッションクリエイション専攻とコラボレーション

heroImage

ZOZO NEXTによるバーチャルヒューマンユニット「Drip」。ファッション分野へのバーチャル技術の導入を目指し、アメリカを拠点とするPinscreen社の協力のもと、低コストで質の高いバーチャルアバターの生成が可能となっていることは、以前の記事でも紹介した。

今回、2021年11月22日からオンライン開催される文化ファッション大学院大学(以下、BFGU)のオンライン文化祭において、BFGUとDripのコラボレーション作品が発表されることとなった。バーチャルヒューマンは3DCGを取り入れた教育活動に、どのように展開できるのだろうか?このコラボレーションの詳細について、BFGUファッションクリエイション専攻の久保幸子・准教授、土岐崇之・助教、またプロジェクトに参加したファッションデザインコースのタク・レイリンさん、リュウ・シヴェイさん、ファッションテクノロジーコースの播磨・マイア・アジェレンさん、チョウ・モンクンさん、そしてZOZO NEXT担当者の池上夕貴氏を取材した。

画像: 左から久保 准教授、リュウさん、播磨さん、チョウさん(PC内)タクさん、土岐 助教
左から久保 准教授、リュウさん、播磨さん、チョウさん(PC内)タクさん、土岐 助教

バーチャル技術のファッションへの普及を目指して

今回のコラボレーションは、バーチャルヒューマンのファッション産業での活用において、アバターだけではなく衣服のクオリティ向上を目的に、ZOZO NEXT側からの提案によってスタートしたという。池上氏によると、単純に素材の再現やディティールへのこだわりだけでなく、BFGUの教育から生まれる独創的なデザインを取り入れることで、よりクオリティの高いコンテンツをつくり出せるのではないかと考えたとのことだ。

実際の制作は、すべてオンラインのコミュニケーションによって進められたという。まず、BFGUでのアパレル3D CADに関する授業のなかで学生による作品制作が行われた。その後、BFGUの教員とZOZO NEXTメンバーによる審査のうえ、選ばれた4作品を「Drip」が纏うこととなった。授業で制作された3Dデータを使用し、ZOZO NEXT側で一層リアルな表現になるよう、生地感の作り込みなどが行われた。また、オンライン開催の文化祭でのプレゼンテーションに向けて背景も制作され、現実世界では表現できないイメージが探究されたそうだ。

画像: 海外の受講生とオンラインでコミュニケーションをとる久保 准教授
海外の受講生とオンラインでコミュニケーションをとる久保 准教授

BFGU側では、2019年からアパレル3DCADの授業を行っているという。現在、デザイナーを目指すファッションデザインコース、モデリストを目指すファッションテクノロジーコースの両コースで開講されている。CLO3Dは、シミュレーション機能によって制作における時間も素材の浪費も抑えることができ、今後のさらなる普及が期待される。BFGUでは授業として導入するより前に自ら契約して3DCADを使用したり、3Dモデリングのアルバイトをする学生が登場し、いち早く需要の高まりを感じていたと久保准教授は語ってくれた。また土岐助教は、CLO3Dはデザインの枠自体を拡げる可能性を有しており、デザイナーが理想を伝達するためのツールとなることが期待され、デザインパターンメーカーといったキャリアも今後、生まれるのではないかと語ってくれた。また、CLO3Dを初めて使用する学生も多い一方で、アニメーション業界などでの3DCGの普及によって、こういった3D制作への興味も高まっているという。

画像: 土岐助教による授業の様子
土岐助教による授業の様子

今回、選抜された4作品は複雑で、細かいディティールも作り込まれた作品となっているのが印象的だ。ファッションデザインコースから選抜されたタク・レイリンさんは、中国のナシ族から着想を得て、オリジナルの柄も制作した。タクさんは初めて3DCADを使用したということだが、型紙の修正からのシミュレーションが何回も可能であり、デザインの自由度が増したと話してくれた。

画像: null

また、同じくファッションデザインコースのリュウ・シヴェイさんは、メキシコをコンセプトにギャザーが印象的な作品を制作した。特に、3DCADによって柄や生地の組み合わせを色々と試すことができ、直感的に修正点を確認することができたことが便利だったという。

画像: null

ファッションテクノロジーコースの播磨・マイア・アジェレンさんは着物のアップサイクリングに以前から取り組んでおり、今回はCLO3D内で着物のモデリングを行い、その分割したパーツからドレスを組み合わせた廃棄ゼロの作品を制作したという。特に着物は一点ものとなるため、裁断前に何度もシミュレーションを行えることは、CLO3Dでの制作の大きなメリットであったという。また生地の物性測定も行い、テクスチャーの忠実な再現も試みている。

画像: null

同じくファッションテクノロジーコースのチョウ・モンクンさんは、自然から着想した日常服をテーマに制作した。特にCLO3Dで生地の色や柄、硬さといった細かい点も調整できるので、トワルで形を決めた後の生地選びに大きく役立ったと話してくれた。

画像: null

また、今回のコラボレーションでは上記の4作品をもとにした「Drip」の着装画像の制作だけではなく、その背景も海外のアーティストを起用して制作されている。ここまで紹介した4作品は自然との共存や地域の伝統などを意識した作品や、サステナビリティへの取り組みとなる作品であったため、「Nature taking back over the concrete and structure that was built a long time ago.(遥か昔に建てられたコンクリートや構造物に自然が宿る)」というコンセプトのもと、SF的な構造物と自然との共存が描かれている。

シミュレーション以上の経験を提供

BFGUのみなさんは、始めに「Drip」を見たときには実在の人間のようなクオリティに非常に驚いたという。特に土岐助教は肌の質感などの高さから洋服とのマッチングも良く、ファッショナブルな表現への普及の可能性を感じたと話してくれた。またバーチャルヒューマンへの着装という体験を学生に提供できたことは、自分の技術の表面化という意味で3DCADの教育におけるモチベーションの提供となったのではないかとのことだ。
また久保准教授は、授業内でのCLO3Dの制作ではシミュレーションの枠を脱することができなかったが、今回のコラボレーションを通じて、その発展の可能性を感じたという。今後は、ファッションショーへの活用なども実現していきたいと期待を語ってくれた。また、BFGUとしては継続して、生産プロセスへの組み込みやサステナビリティへの貢献なども探究していきたいとのことだ。

このように、バーチャルヒューマンの3D教育への活用の可能性を提示した今回のコラボレーションであったが、「Drip」にとっても新たな活用可能性を示す取り組みとなったという。ZOZO NEXT担当者の池上氏は、通常は日常服に近い服を着装していた「Drip」に、今回のようにコンセプチュアルな服を纏わせたことで、新たな一面が引き出せたと感じたとのことだ。今後も継続してファッションシーンでのコラボレーションを行いながら、アート、ゲーム、音楽といった多様な分野でのコラボレーションを模索していきたいと語ってくれた。今後の取り組みにも、さらに期待していきたい。

学校法人文化学園 文化ファッション大学院大学(BFGU)
〒151-8547 東京都渋谷区代々木3-22-1
WEB:https://bfgu-bunka.ac.jp/
Instagram:@bfgu_official

#Virtual Human
LINEでシェアする