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民族柄のバッグから始まる“持続可能な”社会貢献:「CLOUDY(クラウディ)」が目指すアフリカンドリームとは?

2025.06.06
近年、環境負荷の少ない素材の使用やフェアトレードの推進など、“持続可能なファッション”の実現に取り組んでいるブランドは増えつつある。そのなかでも「CLOUDY(クラウディ)」は異色の存在といえるだろう。
クラウディは、アフリカの民族柄や伝統織物を軸に、独自のアフリカンスタイルを提案するアパレルブランドだ。その根底にあるのは、アフリカの貧困問題の解決という強い意思。ものづくりは目的ではなく、そのための資金を生み出す“手段”にすぎないという。
クラウディが目指すものは一体何なのか? なぜアフリカなのか? 設立者である銅冶勇人さんにお話をうかがった。

PROFILE

銅冶 勇人(どうや ゆうと)

株式会社DOYA代表取締役
特定非営利法人 CLOUDY代表理事
1985年東京都出身。慶應義塾大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務しながら、2010年に特定非営利活動法人を立ち上げる。2015年に退職し、同年株式会社DOYAを設立。クラウディとNPO活動の両輪で、アフリカの教育と雇用創出に取り組んでいる。

「アフリカの人たちのためにではなく、共に」という思いが活動の原点

クラウディはアフリカの大地から萌芽した。
「大学の卒業旅行で、ひとりでアフリカへ行きました。その滞在中にキベラというケニアのスラム街に行って、衝撃的な光景を目の当たりにしたんです。
住民たちは、病院もない、トイレでさえ200世帯にひとつくらいしかない環境で暮らしていました。便や尿は袋に詰めて窓から外へ投げ捨てている状況です。
街から抜け出しても、仕事もなければ、学校もありません。自分に何かアフリカにできることはないか、と考えるようになりました」
帰国後、銅冶さんは証券会社で働き始めた。多忙を極めたが、頭の中からアフリカが離れることはなく、たびたびアフリカに足を運んでいたという。
「あるとき、現地の10代の女の子から、悩みを相談されたんです。内容は、『彼氏がどうしてもコンドームを使ってくれない』というものでした。
この悩みは現地のジェンダー格差や教育水準などさまざまな問題が絡み合うもので、当時の僕には答えることができませんでした。
ただ、このことがきっかけで、『どうすれば、女性がアフリカで自立し、サバイブできるか』を考えるようになりました。となると、やっぱり教育が先決。そこでまず学校を作ることにしました」

教育と雇用創出をセットにした新しい支援スタイル

銅冶さんは、2010年に特定非営利活動法人「CLOUDY」を立ち上げた。アフリカでの学校設立に取り組む。
活動を続けているうちに、心に新たな疑問が湧いてきた。
「学校を卒業した若者たちが、結局仕事を見つけられず、スラム街に戻っていく姿を見て、つくづく思ったんです。学校で勉強をしたり、技術を身につけたりしても、仕事につけなければ意味がない。
そこで教育だけでなく、雇用もセットにして、アフリカの若者たちが経済的に自立できるプロセスを作り出していくことにしたんです」
目指したのは継続的に雇用を創出できる仕組みづくりだ。
「学校に通っていなくても、たしかな縫製技術を身につければ、何らかの仕事につくことができます。そこでアパレル事業に注目しました」
デザインのヒントもこの地にあった。
「もともとアフリカに興味を持ったきっかけのひとつが、『世界の民族』という本で知った現地の民族衣装でした。この地のテキスタイルが持つ独創的なデザインやビビッドな色使いは、日本のアパレル業界でも類を見ないもので、これなら勝負できると思いました」
一念発起した銅冶さんは証券会社を退職。2015年に株式会社DOYAを設立し、ガーナ現地での雇用を生み出すべくアパレルブランド・クラウディをスタートさせた。

アフリカンテキスタイルの魅力が際立つトートバッグ

どんなブランドなのかは、ベストセラー商品の「アルファ バッグ」を見れば明らかだ。
「アルファ バッグ」 4,950円(税込)
「紐で口を絞れる巾着タイプのトートバッグです。シンプルなデザインなので、アフリカンテキスタイルの持ち味が際立ちます」
生地はほどよい厚みがあって、肌触りがしなやかなコットン100%のファブリック。
「キテンゲと呼ばれるガーナの伝統的なプリント生地は、気持ちが高まるような鮮やかな色柄が特徴です。民族衣装として儀式などにも使用されていて、それぞれの柄にはテーマや意味があり、ストーリーを持っています」
銅冶さんいわく、現在ファッション業界に流通しているアフリカ風のテキスタイルの多くは中国製だという。
クラウディはガーナにある生地メーカーから仕入れた、本物のアフリカンテキスタイルを使っている。
アルファ バッグひとつとっても、その色柄には数え切れないほどのバリエーションがある
企画したのもガーナの工場で働く女性たちだ。彼女たちが普段の買い物で気軽に持てる巾着バッグをコンセプトにしたという。
「20パターン以上のサンプルを作ってもらって、1年がかりで完成させたのがこのバッグです。商品化が決まった日は、彼女たちは踊って歌って、喜びを分かち合ったそう(笑)。ギリシャ文字の『α(アルファ=始まり)』が入った商品名も、彼女たちが命名したものです」
ガーナの伝統工芸品であるバスケットも、ブランドを象徴するアイテムのひとつ。「ポケット ハンドル チューブ バスケット」19,250円(税込)

支援の中身を具体的に示す商品タグ

それぞれの商品の売り上げの一部も、NPOを通して支援に活用される。
たとえば、「10」と書かれたタグが付いている商品は、売り上げの10パーセントがガーナ現地での雇用創出に充てられる。「5」と書かれたタグは、1つ買うごとに、現地の子どもたちに5食分の給食を提供できることを示している。
「ただ、僕たちとしては、デザイン性が優れているからクラウディの製品を買った。その結果、自然とアフリカを支援していたという形が理想的なんです。それゆえデザインや品質のレベルを上げて、ボランティアやエシカルに興味がない人にも手に取ってもらえるプロダクトを目指しています」

継続的に雇用を生み出す仕組みづくりに力を注ぐ

注目すべきは、製品のひとつひとつに雇用を生み出す工夫が凝らされている点だ。
「アフリカへ物資や資金を投入することも大切な支援です。ただ、一時的には支援になったとしても、長い目で見ると、結局アフリカのためにならないことがあるんです。
支援する側は、与えられることが当たり前になると、現地の人たちは努力をしなくなり、やがて継続性が失われるという可能性も頭に入れておくべきなんです。
だから、僕たちは学校を作って終わりではなく、継続的に雇用を生み出す仕組みを作ることに重点を置いています」
現在はガーナの縫製・バスケット製造の拠点で、女性と障がい者を中心に600人以上の雇用を創出している。
NPOのCLOUDYが創立時から行なっている教育支援に関しても、ケニアに2ヶ所、ガーナに5ヶ所の学校を設立するまでに。
内容も多岐にわたり、行政からの委託を受けて、学校給食制度の整備や教科書の支給、教師の研修・マネジメントなども行っている。
「2022年には、ガーナに写真、映像、グラフィックなどが学べるクリエイティブアカデミーを設立しました。
クラウディのクリエイターたちが講師を務めるこのアカデミーには、40名以上の生徒が在籍し、最近は教育省と提携して現地の大学生をインターンで受け入れています」
アカデミー出身のデザイナーが手がけたテキスタイルやグラフィックを製品に使うことも増えてきたという

最終的な目標はアフリカから撤退すること

「CLOUDY(クラウディ=曇り)」というブランド名には、銅冶さんの想いが凝縮されている。
「設立時、ブランド名については、けっこう周囲から止められたんですよ。まあ、このワードにはネガティブな意味合いもありますから。
晴れの日が一番いいわけですが、人生そうもいかないこともある。特にアフリカのような場所に生まれたら、親がいない、食べるものがない、なんてことも。
ただ、そんなふうに世の中がグレーであっても、天気が曇り(CLOUDY)であっても、自分次第で楽しく生きていくこともできる。そんなメッセージを込めて名付けたんです」
現地の工場で女性たちと世間話をするのが、銅冶さんの至福のひとときだ。
「子どもたちにちゃんとご飯を食べさせて、学校に通わせられていると聞いたとき、活動を続けてきてよかったと思います。
直近の目標は世界最大の電子廃棄物の墓場と言われているガーナ・アグボグブロシー地区に学校を建設すること、そこに雇用も創出していくこと。そして最終的にはアフリカから撤退することです。
だって、十分な数の学校ができて、現地の人たち自身で雇用を生み出せるシステムが完成したら、僕たちはそこからいなくなっても問題ないわけですから。僕らの手を離れることが、支援のゴールだと考えています」
女性たちと子どもたちの笑顔がずっと続くこと。これがクラウディの夢見るアフリカンドリームだ。

Text by Ryota Osujo

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